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ちんちんとんとん

作者: みんた

 ちんちんとんとん、ちんちんとんとん。

 明るい夏の日、四辻に突然現れた、大きなおじさん。みーちゃんは、ゴザから立ち上がって、何が始まるのだろうと、赤い小さなサリーちゃんの運動靴をはいた。大きなおじさんは,

肩から十字の木組みと木の三角帽子の台を四辻におろした。十字の木組を台に乗せるとくるくるっとシーソーを回した。

 みーちゃんの目が、大きく大きくくりくりっと光った。なんだか面白いものが目の前でくるくる回っているのだ。ピカピカの赤い背もたれのついた小さな椅子が、くっるくっると。大きなおじさんは、にっこり笑って、「乗るかい?」とみーちゃんに手を差し伸べた。小さな手を伸ばしておじさんの人差し指につかまると、体がふわりと浮いて、シーソーに近づいた。いつの間にか細い路地から集まった子供たちで、四辻は賑やかにあふれた。ふわりとみーちゃんの体が宙に舞い、赤い椅子にちょこりと乗り、あと3人が、次々と椅子に座ると、バランスの取れたシーソーは、おじさんの手でくるっくるっとまわった。ちんちんとんとんちんとんとんとおじさんが歌った。風が耳元でひゅんひゅんと小さく鳴って、上下に揺れながら、くるっくるっと回った。周りの子供たちから、「わー、いいなー」と声が上がり、みーちゃんは飛んでるスズメになった気がした。

 何回か回ると、おじさんは、みーちゃんと3人をひょいひょいとおろして、次々と子供たちを乗せてシーソーを回した。みーちゃんはちょっとふらふらしながら、でも、また乗りたくて、最後の子の後ろに並んだ。割り込みなんてズルはしません。何度のせてもらっても、また乗りたくて、たくさん並んだ。

 しばらくすると、大きなおじさんは、三角帽子と十字の木組を持ち上げて、にっこり笑うと、集まったみんなに「またね」と言い、「ちんちんとんとん」と大声で言いながら、歩きだした。子供たちは、「残念だなー、面白かったね、」と言いながら、また、バラバラと路地へ消え、遊びの続きを始めた。

 リカちゃんハウスの前で一人取り残されたみーちゃんは、おじさんの姿をつまんないなー、と思ってみていたが、ふらふらとおじさんの後をついて歩き始めた。酔ったような足取りで。「また、あのちんちんとんとんに乗るんだ。」と心の中で思った。

 大きなおじさんは、次の街角に来ると三角帽子の台を置き、「ちんちんとんとん、ちんちんとんとん」と大声で呼びかける。路地裏から子供たちがわらわらとわいてきて集まると、また、くるっくるっとまわった。みーちゃんもなた並んでは、次々に乗せてもらった。ちんちんとんとんは、あっという間に終わって、すとんと地面におろされてしまう。もっともっと乗りたいのに、とみーちゃんは、足を地面にトントンと踏んで怒った。みんなはおじさんが行ってしまうと、サーっといなくなって、また、みーちゃんだけになる。その繰り返しだった。追いかけて追いかけて、みーちゃんは遠くの町まで入り込んでしまった。足が疲れて、もう動けない、と思ったその時。ふっと前のおじさんが姿を消してしまった。ぼーっと前を見ていたみーちゃんは、今来た道を振り返った。真っ赤な夕焼けが周りの家を一層黒く浮かび上がらせていた。

 みーちゃんは迷子になったのかもわからなかった。自分が何をしていたのかも忘れてしまったみたいに、疲れていた。

「ここどこ?おうちは?ちんちんとんとんは?」

 夢の中から放り出されたみたいに急に寂しくなったみーちゃん。「帰るー。」とぽそりを言い、夕焼けに向かって、歩き出した。足は重くずっしりしていて、なかなか前に進めなかった。いつの間にか、ぷっくりしたほっぺに涙がつるつると線を引いて、とがった口に溜まっていった。声を出さずに、涙をつるつる流しながら、とぼとぼと歩き続けた。いつの間にか月が出て、みーちゃんの影が道の前に伸びた。影はぼんやり光って、こっちこっちと、みーちゃんを呼んだ。影が手招きする方へ、みーちゃんは一生懸命歩いた。

 ふっと気が付くと、門の前のリカちゃんハウスが、遊んでいた時のまま開いていて、リカちゃんがお茶を飲んでいた。

「お帰り、遅かったのね。いないから心配して、探しに行こうかと思っていたのよ。」とお母さんが門から出てきた。みーちゃんは、「わーん」とお母さんの膝にかじりついて、初めて声を出して泣いた。

「ちんちんとんとんに一杯乗りたかったの。でも、帰れない位遠くまでくっついていっちゃって。」

 お母さんは、わんわん泣いているみーちゃんを抱き上げると、

「ちんちんとんとん?楽しかったのにね。遠くは怖かったね。大丈夫よ、もうおうちだからね。」と言いながら、みーちゃんの小さなおしりを手のひらでポンポンたたいた。おしりをたたかれると、なんだかとても安心して、みーちゃんは眠くなって、だっこされたまま、寝てしまった。心配してのぞいていたお姉ちゃんもみーちゃんが寝たので、リカちゃんハウスにお茶セットを片付けて、パチンとカバンをしめた。


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