第二話
六月十八日(金)
──アンタが話を聞きたいって奴かい?ハッ、こんなとこまで来るなんて、随分と暇みてぇだな。俺か?俺ァ暇よ。当然だろ、こんなとこにいるんだからさ。ふん、まあいいさ。聞きてぇのは十六夜堂……だったか?つっても俺も行ったのは割と昔で詳しいことは覚えてねぇよ?
それでもいい、ってか。ますます物好きじゃねぇか。
………場所は、○○県の盆地だったかな?仕事で行ったんだよ。あん時はまだ堅気だったがな。
見た目は潰れかけのボロ商店さ。薄暗かったが、なんとなくフラーッと寄っちまったのさ。
店員?いねえいねえ、店主しかいなかったさ。すっげえ別嬪さんだったな。顔は覚えちゃいねぇがそれだけは覚えてる。
買ったのはそいつさ。目の前においてあんだろ?そうだ、本さ。この本は面白ぇぞ?なんたって、読む度に中身がいちいち変わるのさ。信じられねぇだろうがホントなのさ。中身、見るかい?今日はナァ……、おっ、《笑い話》だぜ。朗読してやろうか?ハハ、何度も読めば覚えるさ。さて……。
《笑いが爆ぜた》 《そこには笑いがあった》
《笑え、笑え、笑え!》 《笑わずにいられるものか》
《ああ、恐ろしい》《されど笑わねばならぬ》
《笑うのだ!》《道を笑え、己を笑え、しかる後に笑え》
《燃えるように笑え、冷めるように笑え》 《笑わねばならぬのだ!》
《笑え笑え笑え笑え笑え!!》 《人の目はなし口もなし》 《今笑わずにいつ笑う!》
《笑えや笑え、高らかに》
《喉を裂け、血を吐け、そして高らかに笑え》《人よ、笑わねばならぬのだ》《それがお前の宿命なのだ》《汝は笑え》ヒヒッ。《笑え》ハハハッ。《笑え》フフフッ。《笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え──……》ヒヒッ、ハハハッ、フハハハハハッ、アハハハハハハハハッ、ハーッはっハッハッハッはっは。ハーッはっハッハッハッはっは。フハハはははアハハはははアハハハハハハハハッははは────────────。
………………………(ドサッ)(バタバタ)…………。