第2話:初めての笑顔
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「あの、私………………帽子を落としちゃって………」
女の子は困ったような表情でオレの事を見ている。
………………………………………はい?じゃあ自殺しようとかしてたんじゃなくて、落としちゃった帽子をどうしようか迷っていたと…………
優一
「まぁ勘違いにこした事は無いか……」
オレはため息をつくとずっと抱えていた女の子を降ろした
……コレが坂井 優一と榊 祐貴の出会いだった………
優一
「それで帽子を下の川に落としちゃって、それでどうしようか迷っていたと………」
祐貴
「はい、凄く大切な帽子なんです、でもあんな所に合ったら………」
彼女は泣きたいのを我慢しているんだろうが目の端には大粒の涙が今にも零れそうになっている、帽子なんてどれも変わらないんだしまた買えばいいじゃんっていう訳にもいかないみたいだな、なんか凄い大事な物っぽいし…………
でもちょうど真ん中の木に引っ掛かってるしなぁ……いくら桜が咲いてる春とはいえまだ水の中は冷たいだろうし………………
一応橋を降りて来たけど、やっぱり結構距離あるし、どうしたもんかな…………………
祐貴
「……………私がいけなかったんです、ちゃんと注意してなかったから………お母さんから貰った一番大事な帽子だったのに………」
彼女は涙をポタポタ流しながら悲しそうに呟いていた。
優一
「…………」
着ていた学ランを脱ぎ携帯と財布をズボンのポケットから出すと鞄と一緒地面に置いてからオレは川の中に入って歩いて行った
祐貴
「帽子なら諦めますから!まだ川の水は冷たいから風邪引いちゃいますよ!」
彼女は川をどんどん進んでいくオレに向かって叫んでいる。
まぁ確かにめっちゃ寒いね、でもオレさ女の子が泣いてるのに見捨てるような下らない男でいたく無いんだ………………………………………………何てナレーションいれてる場合じゃない、マジで寒いって!
最初は歩いていこうと思ったけど途中からは全力ダッシュですよ!だって寒いんだもん……
何とか帽子を取り元の場所まで戻ると彼女は凄い心配そうにこちらを見ている。
優一
「………大事な帽子なら次から気をつけろよ、それと本当に大事なら簡単に諦めちゃダメだろ」
苦笑しながら濡れていない帽子を彼女の頭にかぶせて上げた。
祐貴
「…………………その…ありがとうございます」
彼女は嬉しそうに帽子を押さえながら微笑んでお礼を言ってきた。
彼女の笑顔を初めて見たのもこれが初めてだった