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ケロイド  作者: うちょん
4/5

おまけ①【愛し愛され無我夢中】




 「朷音、もっとこっちに来てよ」

 「燕网様、もう充分近寄っていると思うのですが」

 「なんで敬語なの」

 「それは仕える者だからです」

 「つまんないの」

 とある御家柄の一人娘、燕网。

 産まれたときから自分の身体に不満を持っていた。

 なぜなら、男なはずなのに、違うところばかり成長していくから。

 筋肉もつきにくく、胸は膨らみ、身体は全体的に丸みを帯び、顔つきも。

 「僕は男なのに」

 「ですが、見た目はとても可愛らしいお嬢様です」

 「朷音もおかしいと思う?僕のこと」

 「そんなことはありません」

 燕网は親の言う通りの格好をしていた。

 髪は伸ばし背中あたりまであったし、ピンクや赤などの色の花柄の服を着ていた。

 どんなに言っても、親は信じてくれなかった。

 ―僕は男の子だよ!

 「朷音は男の子?」

 「・・・はい」

 朷音も、これぞ男、という格好をしていた。

 髪が短くさっぱりしていて、胸板もがっちりとしていた。

 目の前にいる主は女の子のはずなのに、男の子の心を持っている。

 はっきりいって、燕网が好きだった。

 ただ、立場的にも好きだのなんだの言えるものではなかったため、隠してはいる。

 「男の子は、どんな身体をしてるの?」

 「え?」

 「僕知らないもん。僕の身体はおかしいから、どんどんお母様のようになってる。胸だって膨らんできたし、背も伸びないし」

 「・・・・・・」

 「ねえ朷音、見せてよ」

 「いえ、それは」

 「ダメなの?僕には見せたくないの?」

 「そういうわけではなく」

 「じゃあ見せて?僕にだけ見せてよ」

 ぐいぐいと寄ってくるその綺麗な顔に、朷音は思わず唾を飲み込む。

 そして、誤った判断を下してしまった。

 その日、朷音は燕网に自分の身体を上から下まで見せたのだ。

 すると、燕网は興味津津に触れてきた。

 それだけならまだ我慢出来たのかもしれないが、ここで終わらなかった。

 「じゃあ、僕のも見せてあげる」

 「な、なにを」

 反論する間もなく、燕网は着ていたものを全て脱ぎ捨ててしまった。

 そこには、自分にはない美しい曲線と肌艶を持った燕网がいた。

 「ねえ朷音」

 「はい」

 「もっと教えて。男の子って、どんなの?」

 身体を重ねてきた燕网に抗う事も出来ず、二人は夜を過ごした。

 そして、二人の間には愛が生まれた。

 燕网を愛していた朷音は、自分が女になればいいのだと思いこみ、自分は女になりたいのだと暗示をかけた。

 体格差だけで言えば、あきらかに朷音は男なのだが、心を無理矢理女にすることによって、燕网を手に入れられると錯覚した。

 それが、朷音の心を変えるきっかけでもあった。



 そんなとき、燕网に縁談の話がきた。

 「僕嫌だよ」

 燕网は、裸のまま朷音に抱きついていた。

 「僕は男の子なのに、どうして男の子と結婚しなくちゃいけないの?」

 「燕网様・・・」

 「ずっと朷音と一緒に、こうしていたいよ」

 がらっ・・・

 急に、二人が密会していた部屋が開いた。

 「何をしている!!!」

 二人の関係を知ってしまった燕网の親は、なんとかして燕网の目を覚まさせようとした。

 その為には、朷音が邪魔だった。

 朷音を拷問にもかけ、家から出て行くか死ぬかを選択肢として与えた。

 「ねえ、朷音はどこ?」

 「燕网様、もうその名は忘れてくださいな。さあさ、綺麗な洋服に着替えましょうね。殿方はあなたを一目見ようと文を送ってくださったんですよ」

 「朷音は?」

 「私のお勧めといたしましては、やはり裕福で見栄えも良いあの殿方でしょうか」

 「・・・・・・」

 朷音の無事も確認出来ぬまま、燕网はまるで着せ替え人形のように次々に洋服を変えた。

 身なりを綺麗にすると、燕网に会いに来ていた男に会う事になった。

 「朷音・・・」

 初めて会った男は、燕网を見てニヤニヤと笑い、こっちに来いと呼んだ。

 大人しく傍によれば、肩を抱かれて耳元で囁かれる。

 「俺と一緒になれば、気持ち良くさせてやれるよ」

 「・・・!!!」

 全身から鳥肌がたち、燕网は男を突き飛ばした。

 男は怒ったが、燕网はそれどころではない。

 部屋に飾ってあった花瓶を思い切り割ると、その破片で右目を切った。

 「きゃああああああああ!!!!」

 誰かの悲鳴が聞こえたが、知ったことではない。

 朷音の映らない世界ならいらないと。

 燕网はもう片方の目にも破片を突きつけた。

 「燕网様!おやめ下さい!」

 「綺麗なお顔に傷が!」

 ―知らない。見たくない。

 ―僕の世界には、朷音しかいないのに。

 ―朷音がいないなら、いらない。

 ―こんな目。

 ぽた、ぽた、と滴る血は、自分の血のものだけではない。

 燕网の手から花瓶の破片を奪った、朷音のものも混ざっている。

 「朷音?」

 「傷を塞ぎましょう。燕网様」

 「敬語は止めてって言ったでしょ?」

 「・・・一緒に逃げてくれる?」

 「うん」

 燕网の手を握ると、朷音は走りだした。

 「大人しくして」

 「だって、朷音がいる」

 「いるよ」

 嬉しそうにニヘラと笑う燕网に、朷音も笑みを零す。

 燕网は腕を伸ばして朷音の髪に触れると、愛おしそうに唇に指を這わす。

 「これからどうしよう」

 「二人で生きて行くための術を身につけよう」

 「術?」

 「そう。例えば、戦うこととか」

 「わかった。僕は朷音がいれば頑張れるよ」

 それから、燕网は怪我をした右目に眼帯をつけ、髪もばっさりと切った。

 朷音は女になるため、髪を伸ばし始めた。

 「朷音、大好きだよ」

 「・・・私も」

 純粋な恋心は、愛し愛され無我夢中の、ちょっと歪んだ愛になった。


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