家族の一員に
「すいませんウルトル……取り乱しました。」
ようやく正気に戻ったユッテは顔を真っ赤にして蹲っていた。
いや、取り乱し過ぎじゃないですかね。
「ふふ、ユッテったら弟が欲しい欲しいって、ウルトルが人間だったらなって何度も言っていたものね。」
「お、お母さま!?やめてください私そんなこと……!」
「あら?言ってなかったかしら?」
「う、うう~」
意地悪気な笑顔を浮かべるレナさんにユッテは頬を膨らませてレナさんを可愛らしくにらみつける。
常に敬語で話しているため大人びて見えるがユッテは6歳なのだ。
だからこのユッテの仕草も年相応という事だ。
まぁ俺も6歳なんだけどな。
「さて……あなた?そろそろウルトルの事を認めてくれないかしら?」
ラディさん不動の土下座の構え、彼は領主のはずだが今その姿からは日本の企業戦士の姿が垣間見える。
「あぁ、そうだな。君の魔力を見る力を信じるさ。それに私があの木に話したことも完全に知っているようだったし……」
「そ の よ う ね?」
「ヒッ」
ラディさんの喉奥から小さな悲鳴が漏れる。その気持ちはよく分かりますよ……だって今のレナさんの笑顔めっちゃ怖い。
下手したら漏らしちゃうレベルで。
「と、とにかくだ。ウルトル、君は今日から……いや違うな。改めて私たちの家族だ。」
「うぇ?い、いいんですか?ラディさん。レナさんも。俺、今は人間の姿してますけど木ですよ?」
「それの何が問題だ?」「それの何が問題なのかしら?」
この2人、ほぼ同じタイミングで言い放ったぞ。
「「それに、お母さん(お父さん)と呼びなさい。」」
「……いいんですか。」
俺の言葉に2人は軽くうなずく。
チラッとユッテの方をうかがってみると、ユッテもこちらを見て微笑んでいた。
その笑顔は先ほどの俺に馬乗りになった際の狂気じみた笑顔ではなく年端もいかない少年が見たらコロッと落ちそうなほど可憐な笑顔だった。
俺?俺は落ちませんよ。
確かに可愛いけど俺は前世で20年生きてきたからな、そうコロッと落ちないぜ?
こう言っては何だが、俺には幼女に惚れる趣味は無いから悪しからず。
んでここまで言わせて名前で呼ぶのも失礼というものだ。ここは呼ばせて頂こうじゃないか。
「ありがとうございます、父さん、母さん。」
2人はうんうんと満足そうにうなずく。メイドたちも俺を歓迎してくれているようで、拍手してくれている。
ただそんな中で満足そうな顔をしていないのが1人。
ユッテだ。一人膨れっ面でこちらを見ている。
いやまぁ原因は分かっているんですけどね、そういう流れじゃなかったから言わなかっただけで……
なんてユッテに言っても理解してくれないだろう。
だから言っておこう
「お姉ちゃんもありがとう。」
「お、お姉ちゃん……ふふ、ふふふ!いいんですよ、ウルトル!お姉ちゃんに任せてください!」
あ、このお姉ちゃんチョロいぞ!!!
だが俺はこの何とも面白く、そして温かいルーマル家にユッテの弟として迎えられた。