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生まれ変わったら神樹だった  作者:


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リノライアの我儘

ウルトル視点に戻ります

「おーい、リノライアーいるかー?」

 

 朝、俺は花畑の一角に建っている小屋に訪れていた。

 全て木で作られたこの小屋はもちろん俺の作品で、前世の記憶の中にあったログハウスをモデルに建ててみたが案外うまくいくもんだな。

 少し待つと低い位置に備え付けられたドアノブがゆっくりと回り、扉が開かれる。


「ウルトル様、おはようございます。ほら、リノライアちゃん。」

「ふぁあ……おはよう、ございます。おにいさま。」

「あぁ、おはよう。リノライア。キイもおはよう。」


 キンセイカの木の精霊、キイに背中を押され、眠け眼をこすりながら小さなエルフ、リノライア。

 俺より少し背の小さいリノライアが俺の事をおにいさまと呼ぶのは俺が無理矢理言わせているわけではないからな。

 しかし、こうしてみると俺なんかよりキイとリノライアが姉妹に見えるな。キイの服がセーラー服なのがそれに拍車をかけている。


 っと、そうだそうだ。今日は大事な用事があるから談笑している暇はなかったんだったな。


「ほれ、今日のごはんな。」


 リノライアに差し出したそれはりんごやぶどう、バナナといった果物が入った籠だ。もちろん果物から籠まで俺が作り出したもので産地直送でとても新鮮で瑞々しいものとなっているはずだ。

 それを小さな手で受け取ったリノライアは


「ありがとうございます、おにいさま。」


 顔こそ無表情だが、目はキラキラと輝いており、更に言うと声も少し上擦っているから喜んでくれているみたいだな。

 そんなリノライアが可愛かったので頭を軽く撫でる。


「おにいさま、くすぐったい。」

「そうか、そりゃすまんな。キイ、リノライアを頼むぞ。」

「はい、お任せください。」


 よし、朝の日課終了だな。さって屋敷に帰ろ……ん?服を引っ張られる感覚が後ろを見るとリノライアが俺の服の裾を掴んでるじゃないか。


「おにいさま、もういっちゃうんですか?」


 あの、リノライアさん。罪悪感が沸き上がってしまうからそのウルウルとした目は止めてくれませんかね。

 これがワザとやっているというのであればリノライア恐ろしい子っ!……とまぁ冗談は置くとして、今日は本当に駄目なんだよ。


「すまんな、リノライア。今日は俺の姉さんと大事な約束があるんだ。」

「おねえさまですか?でもおにいさま、しんじゅさまですよね?ごきょうだいがいるんですか?」


  まぁその疑問はもっともだよな。俺の正体を知っていて尚且つユッテとの関係性を知らないと不思議に思うだろう。さて、どう説明したものかな。


「俺の姉の名前はユッテと言ってな。俺がルーマル家の庭に双葉として生まれた少し先に生まれたんだ。」

「だからあねなのですか?」

「あぁ。俺は神樹である前に、ルーマル家の一員なんだよ。だから俺の正式名称はウルトル・ルーマルという事になるな。」


 ……ウルトル・ルーマルか。声に出すと本当にルーマル家のみんなが、家族という事が実感できて嬉しいな。ただ――「ル」が多いのがちょっと気になるよなぁ!?

 ちなみにユッテとの約束というのはアレイシアさんに学んだ魔法のお披露目会をするから、俺にもぜひ見てほしいとのこと。それでお披露目会には、ラディさんもレナさんも参加するらしい。

 ピアノの発表会みたいでどこか微笑ましいよなーこれは絶対参加したい。


「だいじですか?ちのつながっていないおねえさまが。」

「すんごい大事だな。」

「すんごいですか……」


 血が繋がっていようがいまいが、ユッテは俺の大事な姉だ。

 もしリノライアが「私と姉、どっちが大事なのよ!」的なことを言ったら俺は迷わずユッテって答えるんだろうなぁ……リノライアには申し訳ないけど。


「わかりました。ごめんなさい、おにいさま。わがままいっちゃいました。」

「別にいいさ。むしろわがままは言ってくれた方が俺は助かるな。」

「そうなんですか?」

「遠慮しすぎ程可愛くないものはないからな。子供は我儘を言うべきだ。」


 キイ、そんな「あなたも十分子供じゃないですか」とでも言いたげな目は止めなさい。ちょっとしたジョークじゃないか、いやだなぁもう!


「そうですか……わがままいっていいんですね。」

「?あ、あぁ。今日ここにいてくれって我儘は駄目だけどな。」

「わかってます。だから――」


 んぇ!?リノライアが突然抱き着いてきた!?ちょっと顔近い!顔近いから!あ、可愛い。じゃなくて!

 いきなり抱き着いてきてどうしたんだ?よく見ると頬が赤い気もするが……


「わたし、ぜったいおにいさまにふさわしいおんなになります。ゆっておねえさまにまけないくらい。」


 そう言うとリノライアは爪先立ちをし、自分の頬を俺の頬に押し付けるように合わせた。

 頬に伝わるぷにゅっとした感触はまるでマシュマロ……久しぶりに食べたい。

 ってかユッテに負けないくらいの俺にふさわしい女になるって……ユッテに嫉妬しているみたいだな。……何で?


「そっか、まぁ頑張れよ。」

「はい、がんばります。」


 リノライアの頭をポンポンと叩くと満足そうに俺を解放してくれた。

 俺は改めてリノライアの事をキイに頼み、屋敷へと戻った。

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