ユッテの適正
「私が、焦ってる?」
やっぱり自覚なかったんですね……ふふふ、仕方ないですねぇ。
人生の先輩であるこの私がユッテ様に正しい道を示して差し上げましょう!
「えぇ、そうです。ユッテ様は大変焦られておりまして、正常な判断が出来ていません。」
「で、出来てないんですか!?」
「体がお弱いのを自覚していますよね?しかも病み上がりですよ?そんな状態で体を鍛えるなんて悪化させしまいますよ?」
「う゛っ」
あら図星な反応。
本当に自分の体のこと考えれおられなかったようですね、いくら頭はよくてもやっぱり中身はまだ子供ですね。
「いいですか、ユッテ様。何も体を鍛える=強くなるという訳ではないんですよ?ユッテ様には魔法の才能があるじゃないですか。」
「ええっ!?私に魔法の才能ですか!?」
えっ、それにも気づかれてなかったんですか。
お誕生日の時のユッテ様の魔法に皆様驚いていたことの重要さに気付いていなかったんでしょうね。
くやしいことにユッテ様の魔法の才能は私を超えると思います。
まぁ悔しい以前に私に魔法の才能なんてこれっぽっちもないんですよねー!
おっとっと、今は私の話はいいんですって
「ユッテ様に魔法の才能は十分有ります。6歳で魔法を扱えるというのは稀なケースなんですよ?それも加護もなしにです。」
「加護があると魔法が使えるんですか?」
「うーん、使えるようになるというより、使いやすくなると言った方がいいでしょうね。」
オスニエル王子が代表的ですね。彼からは剣で闘うイメージしか湧いてこない見た目や性格をしていますが、炎神アラキファ様の加護があったため、火の属性の魔法、火の鳥を生み出しました。
ウルトル様は不利ともいえるツタで難なく火の鳥を消滅させましたが、あれはウルトル様が凄すぎるだけであってオスニエル王子の火の鳥も相当な物で、私も2分くらい苦戦することでしょう。
さて、炎神の加護の後押しがあって魔法を行使できたオスニエル王子と6歳で何の加護もなしに氷の魔法を行使したユッテ様、どちらが凄いかと聞かれればもちろん後者でしょう。
ユッテ様が強くなりたいとお望みであられるなら、これを伸ばさない手はありません。
「じゃあフィーレが魔法を教えてくれるんですか?」
「いえいえ!私には無理です。私、魔法を使ったことないんですよね。小さいファイアすら出せません。」
「あ、その、ごめんなさい。」
ちょっとユッテ様。その不味いこと聞いちゃった顔は何ですか!?
確かに、魔法を全く使えない人間も悪い意味で珍しい部類には入りますけど私別に気にしてないですから!
「いえいえ、いいんですよ。……魔法ならそうですねぇ、アレイシアさんに教わっては如何でしょうか?」
「アレイシアですか?」
「はい。アレイシアさんは私のように周りの魔物を討伐に行く機会は少ないですが、魔法の名手で知っている人は知っているレベルの方なんです。」
魔法の素晴らしさに異名が付いたらしいんですけど、この話をするとアレイシアさん怒っちゃうんですよね。
メイドたちの中では触れてはいけない禁忌のようなものになっています。
「なるほど、分かりました。アレイシアに魔法について教えてもらうことにします。」
「えぇえぇ、それがいいと思いますよ。」
うんうん、これでユッテ様に体を鍛えるうえで少しでも傷が及ぶ可能性が無くなりましたね。
私が誰かに体を鍛える指導なんてしようものならもれなく怪我は付き物ですからね。
怪我しないように心がけてはいるのですが、どうにもうまくいかないのです。
「ありがとうございます、フィーレ!では!」
そうと決まればという事でしょうか、ユッテ様は一目散に屋敷の方へと戻って――あれ?扉の前で止まってこっちを振り返った?
「フィーレ、約束です!私が成長したら貴女が鍛えてください!!」
あぁ、駄目です。あの笑顔は駄目です。あの笑顔は卑怯ですよ。あぁもう
「えぇ、お約束します。ユッテ様の御身体が十分なものとなった時、出来る限りお教えしましょう。ただし、怪我の御覚悟を。」
――断れませんね。




