ユッテ様のお悩み
えーっと、もしかしなくても今私、ユッテ様に鍛えてくれって頼まれませんでした?
耳はいい方だと自負しているので聞き間違いをした訳ではないのですが……?
しかし、ユッテ様の目は本気です。本気で私の返事を待っている目です。
これははぐらかすなんて失礼ですね。ちゃんと応えさせていただきましょう!
「駄目です。」
…………あれ?ユッテ様?固まりました?
「ええっ!?何でですか!?」
いや、何ですかユッテ様。その明らかに予想外の答えだったというリアクションは。
もちろんユッテ様が嫌いという訳ではありません、寧ろ大好きですよ?
かといって、好きだからと言って断った訳でもありません。
「いいですか?ユッテ様、私がお断りしたのはちゃんとした理由があるんです。それもとても簡単な。」
「簡単な……理由ですか?」
「はい、それはもう根本的な理由です。」
ふふ、私の問題に頭を悩ませるユッテ様。いつもは逆の立場なんですよねぇ……
ユッテ様が出すなぞなぞに幾度となく頭を悩まさせられました。
悩んでいる年相応の可愛らしい姿を見ているのもいいですが、教えますか。
本当に根本的なことなんですけど、ユッテ様躓いちゃいましたね。
「答えお教えしましょうか?」
「いいえ!もうちょっと考えさせてください!」
えぇー……
ここで負けず嫌いが発揮されるんですかぁー……ウルトル様ならすぐに「あ、分んねぇ!教えて!」っていいそうですね。
うーん、このまま待っているのも何ですし、他のお花の水やりでもしておきましょうか。
まだじょうろに水残っていますからね。
「それじゃあユッテ様、私お花に水あげてきますので分かりましたら教えてくださいね?」
ユッテ様からの返事はありませんでした。無言が返事という事でしょうか?
まぁ、ユッテ様は6歳でありながら、非常に賢い方です。
私が水やりを終えるころには答えを見出していることでしょうね。
さーって、水やり水やりっと
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「あ、あのーユッテ様……水やり終わったのですが答えは出ましたか……?」
「待ってください!あと少し……!あと少しですから!」
まだ悩んでられました。
10分か20分は時間はあったはずですけれど、賢いが故の落とし穴にはまってしまったのでしょう。
幸い、私の次の仕事までまだ時間がありますからユッテ様にまだ付き合えます。
正直のところ、さっさとしてほしいのですが。
「あっ!分かりました!分かりましたよ、フィーレ!」
「おおっ!流石ですユッテ様!」
……でも答えが分かったところでご指導するわけではないんですよ?忘れてません?
いえ、今は答えをお聞きするのが先ですね。
見るからにユッテ様の顔は自信に満ち溢れています。これは期待できそうですね。
「雨が降りそうだからね!そうでしょう!?」
あれ、ユッテ様頭こんなに残念でしたっけ
「違いますよ……それに今日は雲一つないじゃないですか。どうしてそこに行きついたんですか?」
「た、たまに急に雲が湧いて大雨が降ったりするじゃない!」
「たまにって言ってる時点で駄目じゃないですか。」
「うぅ……フィーレの癖にぃ」
そんな涙ぐんだ目で睨まないでくださいよ。
って私の癖にって結構失礼な事言ってくれますね!?
確かに私頭弱い方だと自覚はしていますけど!
まぁいいです。ユッテ様も諦めたようですので今度こそ答えを教えましょう
「いいですか、ユッテ様。ユッテ様はまだ幼いのですよ?」
「え?」
「そんな意外そうな顔しないでください。そもそもユッテ様、まだ6歳なんですよ?」
「それが?」
このきょとんとした顔……っ!本当に分かっていない顔ですね!?
「幼い上に女性が鍛えるなんて早すぎるって言ってるんです!私が教えられるのは精々効率のいい走り込みの仕方くらいです!」
「ええっ!?剣の振るい方とかは!?」
「もってのほかです!」
重い剣を持たせて怪我でもされたらラディ様たちに怒られてしまいます!
ウルトル様からも怒られそうですし、絶対武器の使い方は教えません。
「じゃあ、私はどうやって強くなればいいんですか!」
「いや、ですから、ユッテ様がもう少し大きくなられたら……あーでもユッテ様お身体がお弱いですし……でも、突然どうされたんですか?強くなりたいなんて。」
涙ぐみながら俯くユッテ様、ぽつりぽつりと話してくれました。
ユッテ様がいきなり強くなりたいと言い出した理由は先の王都での出来事が関わっていました。
曰く、王都ではウルトル様に常に助けられてばっかりだったと。
王子に言い寄られたときも拒否したのはいいもののそれ以上体が震えて動かなかったのをウルトル様に助けてもらった。
自分が体調崩したためにウルトル様が1人で(私もいたんですけど。)城下町に行ってしまった。
アラキファ様の祠に行き、アラキファ様が遊ばれたときもユッテ様は何の力にもなれなかった。
クーデターの時も全部ウルトル様に任せて自分は城の中で休んでいただけだった。
自分の力不足が恨めしい、自分もウルトル様の力に少しでもなりたいそうです。姉として、弟のウルトル様に頼られる存在になりたいと。
えーっと、あの、その
「ユッテ様、そんなに焦らなくてもいいんじゃないですか?」




