おにいさまとよばせていただきます。
さーて、早速花畑まで飛びますかね。
今日はキイ驚くかなぁ……まぁ慣れていると言ってたから驚かないか。新しい驚かせ方考えないとな。
そんなことを考えながら花畑に飛ぶと――
「おはよう、ございます、しんじゅ、さま」
「ウェアッ!?」
背後から急に声を掛けられ、同時に背中を軽く叩かれたことで変な声が出てしまった。
振り返ってみるとあらぁ、エルフ少女じゃない。
起きたんだなー……ん?何でこの子、急な俺の出現に驚かずに、しかも俺の背後に立って声をかけているんだ?しかも神樹だと?
って、エルフ少女の更に背後に――
オイコラ、何笑い堪えてんだキイ。てめぇ後で覚えてろよぉ!
とりあえず、キイはあとでくすぐりの刑として今はエルフ少女だ。
見た感じ、昨日の気配に憑りつかれた際の後遺症のようなものはないようで安心した。
ってかこの子の声、初めて聴いたけど年相応の可愛らしい声しているな。
年相応……?エルフは長寿ってのが鉄板だが、何歳なんだろうか。
まぁそのあたりも聞いていかなきゃな。
「えーっと、お前。名前はあるか?」
俺の質問にエルフ少女はコクンと頭を下げる。
「りのらいあ、といいます。」
「そうか分かった。リノライアだな。じゃあリノライア!これ食べろ。」
「?」
リノライアは自身の両の手に置かれた初めて見るであろう果物に首をかしげる。
俺が渡したのはピンク色の果実、桃だ。
困惑しておろおろするかと思ったが、意外や意外。
彼女はスンスンと桃の臭いを嗅ぐと食べ物と判断したのか、未知の食べ物に臆することなく一口かじりついた。
「!」
その小さな目が大きく開かれ、リノライアは貪る様に一口、また一口と桃をむしゃぶりつく。
さて、リノライアが桃を食べる間にキイを手招きで来い来いと合図をする。
おう、何ちょっと苦笑いしてんだよ、速く来いや。
「ど、どうされました?」
「お前後でくすぐりの刑な。」
「えっ!?」
「それよりもだ。あの子、俺を神樹だと開口一番に言ったがお前教えたのか?」
「はい。しかし教えたというより、あの子が自分から私を助けたのは神様ですか?」
マジか。リノライアは自分で俺が神だという事にたどり着いたのか?
そういうことを察するのは同じ神のアラキファとか近いような存在のキイたち精霊くらいかと思ったのだが。
エルフにそんな芸当が可能なのか?精霊を認識するならまだ分かる。実際キイに神云々聞いたという事はキイを認識しているという事だからな。
「ウルトル様、そこでですね。御耳に入れたいことが。」
「何?」
「あの子がウルトル様を神樹と言ったことと上位の精霊に当たる精霊である私に気付いた理由です。」
あ、お前上位の精霊だったのとか突っ込んだら話進まなそうなので今は黙っておこう。
単純にその理由とやらが気になるからな。
「彼女、ただのエルフじゃありません。」
「ただのエルフじゃない?ハイエルフとか?」
「残念、不正解です。彼女は俗に言う――フォレストエルフです。」
「フォレストエルフ?」
聞きなれない単語に思わずオウム返しになってしまった。
いやしかし、本当に聞いたことないぞ。何だフォレストエルフって。
「ウルトル様はエルフがエルフ、またはハイエルフくらいしか存在していないと考えているようなのでご説明させていただきますと、エルフって結構種類いるんですよ。」
キイ曰く、
"エルフ"と呼ばれる種族は存在するがそれ以外にも
"フォレストエルフ"という、森を住処とし、植物の精霊と深い関係にあるエルフ
"ファイアエルフ"という、火山近くを住処とし、火の精霊と深い関係にあるエルフ
"マリンエルフ"という、海沿いまたは川沿いを住処とし、水の精霊と深い関係にあるエルフ
"グランドエルフ"という、洞窟を住処とし、土の精霊と深い関係にあるエルフ
が存在するらしい。
エルフはどの属性の精霊にも関係を持てるオールラウンドな存在だが、属性ごとに発揮できる力は各エルフの数段劣るらしい。
俺が王都アラキファで遭遇したあのダークエルフは何かと聞くと
闇の力に当てられたエルフはどの種族関係なく、ダークエルフに変貌し、闇の精霊と深い関係になるらしい。
逆の存在、いわゆる光のエルフ……まぁホーリーエルフとでも言うべき存在もいるにはいるらしいが、目撃情報は限りなく少ないらしい。
「で?あのリノライアがフォレストエルフだと?」
「はい。そうでないと、今までの事柄に説明がつきません。それにウルトル様が鎮圧した時、リノライアは木を操っていましたよね?」
そういえばそうだったな。あれは彼女が植物の属性を持っていたからか。
フォレストエルフね、こう言っては何だが、確かに売ろうと思えば高額になりそうな種族だな。
ヒロルドが交渉に使おうとしたのが頷ける。結果として、ラディさんを怒らせることになったけどさ。
「じゃああの子は森に返した方がいいよな?」
「どうなんでしょうか。そこはもうあの子の意志ではないでしょうか……?」
リノライアの意志ね、彼女がどう言おうがそれに答えようかね。
拾った者の責任として!……捨て犬拾ったような言い方だな。
ん?袖を引っ張るような感覚。
見ると、件のリノライアが桃の果汁で口をべったりさせて俺を見上げていた。
「しんじゅさま、おなさけ、ありがとうございました。」
「お情けとかどこで覚えたんだよ!?」
「?ひろるどさま、からです。」
ヒロルドめ……飯与えるたびに「私に感謝しろ!」とか何とか言ってたのか。もうちょっとすりつぶしておくべきだったかな。
まぁ死んだ奴の事はもういいか。
「リノライア。俺は確かに神樹だが、その呼び方は駄目だ。もうちょっとこう親しみやすいように呼んでくれ。」
「では、どのようによべば?」
「ウルトル。それが俺の名前だ。」
「うるとる……さま?」
「そうだ。――まぁ無理に名前で呼ぶ必要はないぞ。と言っても名前以外に呼びようは無いよなー」
ハッハッハと笑う俺に対してリノライアはぽかんと口を開けている。何これ、思考中なの?
ポクポクポクという効果音がどことなく聞こえてくるようだ。そんな集中力をリノライアから感じられる。
いや、これもしかしてフリーズしてるだけとかじゃないよな?
ポクポクポクポクポクポク
チーン!
いや、実際に聞こえたわけじゃないけどいきなりビクッとリノライアが動くものだから考えがまとまったのかと思って。
「では、おにいさま、とよばせていただきます。」
「「え?」」
ど う し て そ う な っ た。
最初は森エルフとかにしようと思いましたけど、ダークエルフって既に出しちゃったから英語統一にしました!
あ、英語とかそういうのはスルーでお願いします。




