神の証拠
ん?あれ、2人とも口ポカーンと開けて固まっちまった。
俺変なこと言っていないよな?神って言っただけだよな?
……オスニエル王子と同じ反応でなんかイラッと来るな。
「オラ、起きろや。」
躊躇なしにアランの頭にチョップをかます。レリィにしたら気絶させちゃいそうだし。
「っでぇ!何すんだ!」
「ポカンとする方が悪い。」
予想通りアランは、気絶せずに済んだみたいだな、良かった。
流石は冒険者だな、王子とは鍛え方が違う。
「でもよ、いきなり神だ何だの言われてもなぁ?」
同意を求めるアランの声にようやくレリィも現実に戻りコクコクと頷く。
ふむ、加護を与えてもいいんだが、この体じゃあ加護は与えられないから別の方法……あー行けるか?
「そうだな、じゃあお前らのどっちか。木で出来た壊れたものないか?」
「はぁ?そんなピンポイントに……ん、そう言えばあったな。」
アランの目線を追うと、レリィが思い出したように手を合わせ、持っていたカバンから2つの木を取り出す。
ん?よく見れば両方とも片方折れたような断面をしているが……あぁ、元々は一本の枝、じゃないな。杖だったんだな。片方の木の先っちょが包まってまさに杖のお手本の形をしている。
「杖か。折れたのか?」
「えぇ、ここに来る前にね。魔物の攻撃を防いだら、ぽっきり。お母さんがくれたものだったのだけれど……」
そりゃ災難だったと思うが言い方を変えれば杖がレリィを守ってくれたんだろうな。彼女に大きな傷が無いのがその証拠だ。
「さっきは花畑が見たいから来たって言っていたけど本当はこの杖の供養をしようかと思ったの。せめて綺麗な花たちに囲まれば……ね。」
そう語るレリィはどこか寂しげな表情で折れた杖の片方を撫でる。
「どこかで直せたりは出来なかったのか?」
「おいおい、お前も木を操るなら分かるだろ。木も人と同じで全く一緒のものなんて絶対に生えてこない。木で出来た杖なんて基本一品ものだ。仮にくっつけたとしても依然と同じような力は発揮されねぇ。」
それもそうだな。
でももしかして俺なら……
「ちょっとその杖貸してくれるか?やってみたいことがある。」
「え?い、いいけど……。」
俺はレリィから杖を受け取り、お互いの断面を合わせ、目を閉じ集中する。
そしてイメージする。杖の断面からすっごく細い糸を何本も生やし絡ませ合う。
やがて糸は一本の太い縄となった。
「よし。」
「「え?」」
またそんなポカンとして……俺が何をしたか分からないとでも言いたげじゃないか。
いいだろう、見せてやろうじゃないか。
杖の片方を持っている手を放すと――俺の狙い通り杖はピッタリ繋がり落ちることは無かった。
「ほら、繋がったぞ。」
「はぁっ!?」
まさに仰天といった声をあげ、俺から杖を引っ手繰るレリィ。いや、気持ちは分かるけど落ち付けよ……
ペタペタと杖を触ったりぶんぶん振って見たり近くの木をこんこんと叩くが、杖は元から折れていなかったようにその形を保っている。
「おい、レリィ。直っているのか?」
「えぇ……直っているうえに今まで以上に力を感じるの。しかも鑑定してみたらこの杖に……神樹の祝福ってのが付与されてるんだけど。」
お、木製品直すのは初めてだからちょっとばかし緊張したが、直ってよかったわ。何かそれ以上の効果があったみたいだけれど。
直しても俺の力が宿るんだな。祝福と加護の違いは少しわからんけど。
「本当に神かよ、お前。」
「だから言ったじゃん。」
俺は最初から嘘はついていないんだからな。
まぁ嘘にしか聞こえない感は否めないけどな。
「あ、ありがとう……ございます?」
「いや、敬語はいいよ。むずかゆいから……」
フィーレさんたちのように最初から敬語ならまだしも普通に話していた人から敬語で話されると抵抗がある。
逆ならまだいいんだけどね。
さて、2人に俺が神だという事を納得してもらったところでようやく花畑に案内できる……長かった。




