俺○○だよ。
拝啓 ユッテ
元気にしていますか貴方の弟、ウルトルです。まぁ会ってないの一日も経っていないから元気も何もないですよね。
でも長旅の疲れもありますから寝てるかもしれませんね。
さて、本題に入ります。私は今――土下座してます。
「ホントすまんかった。」
あぁ土しか見えない。俺、これからどうなるんだろ。頭踏まれるのかな。
まぁ踏まれても文句言えないよなぁ、思いっきりアラン君吹っ飛ばしちゃったし。
「あぁいや、いいよ。頭あげてくれ。というか何だその謝り方は……?見たことねぇぞ。」
「え、許してくれるのか?」
「俺が最初に攻撃したってのもあるしな……どっちも悪かったってことで手打ちにしようぜ。」
……アラン君がそんなにまともなことを言うとは正直予想外だったが俺、許されたということで頭を上げさせてもらう。
目に飛び込んできたのは蜜柑をほおばるアラン君とレリィ。いや、上げたの俺だけど何かイラッと来るな。
改めて話を聞くとまず結論としてアラン、レリィの2人は例の商人の依頼は受けていないらしい。
何でもアランの方針として商人が依頼しているものは一切受ける気が無いとのこと。理由は商人は信用できないかららしい。
そんな彼らがこの森に来た理由は単にレリィが花畑に興味を持ちアランがそれに付き合ったまでだと。
俺の事は森に入る前に逃げ出してきた連中から聞いてアランの闘争本能に火が付いた……って訳らしい。
「レリィは何で花畑に行きたいと思ったんだ?」
「だって……見てみたいじゃない。依頼が出るほど珍しい花があるんでしょう?」
「珍しいと自覚したことは無いが……まぁいい景色だとは思うぞ。」
……まぁこの世界、テレビとかゲームとか、娯楽は少なそうだからな。
風景を楽しむという娯楽を求めるというのもアリか。
「なぁウルトルだっけか?この果物もう一個くれ。うめぇ。」
「ほれ。」
蜜柑を気に入ってくれたのなら何より。
流石にアランは体力回復したみたいだから今あげた蜜柑は何の変哲もないただの蜜柑なんだけどね。
ふむ、依頼を受けていない、か。
闘ってみて何かが分かったという訳ではない。強いて言うなら嘘をついていないというくらいか。
アランもレリィも嘘をつくような人間ではなさそうだし特にアランは嘘その物が苦手そうだから信用してもよさそうだ。
ぶっ飛ばしたこちらの責もあるからなぁ
俺は近くにある木をノックして口には出さず、頭の中で語り掛ける。
『キイ、聞こえるか?』
『えぇ、聞こえていますし見えてもいますよ。彼ら、実力はあるようですが、ウルトル様に及ぶほどではありませんでしたね。流石ウルトル様。』
別にそんなことを話したいわけじゃないんだけど……キイはたまによいしょしてくる。
それだけ俺の事を慕ってくれていると言えばいいのか。うん、ポジティブに考えよう。
『で、私に用が?』
『あぁ、実はな――』
「何してるんだ?」
そんな怪訝そうな目で見ないでくれよ、ちょっと木を通じてお話ししていただけじゃないか。
……いや、十分変な奴だな。
まぁいいや、多分2人にとっていい話が出来そうだからな。
「なぁお2人、仮に花畑に行けたとしてだ。それを後から誰かに教えるつもりはあるか?」
「どういう意図での質問だそりゃ?」
「いいから。」
「……いねぇな。知り合いに花好きなんていないし……なぁ?」
「えぇ、いないから誰にも話しようはないわ。話したとしても花畑に行ったことくらいね。もちろん商人に話すなんてことは決してしないわ。」
友達いないのかな?
……そんな訳ないよな。アランはともかくレリィはいるよな。
「おう、何だその目は何か文句あるのか?」
「いいや、寧ろそれでいい。」
「あ?」
言っている意味が分からないと言いたげな目ですね。いいでしょう、教えて進ぜよう。
「今、花畑の精霊と話しを付けたんだよ。2人とも花畑に来てもいいってさ。俺が案内するよ。」
「嘘っ!?本当なの!?」
「あ、あぁ、精霊嘘ツカナイ。」
思った以上にレリィが食いついてきたな。そんなに見たかったのか。
対するアランは……ん?何だよ、その目は。さっきよりも表情ちょっと険しくない?
「どうしたよ、アラン君。俺の顔に何かついてる?」
「お前、今精霊って言ったか?」
「ん?言ったな。別に珍しくもないだろ?」
「あぁ、俺も何回か精霊と遭遇したことはある。だが、奴ら基本、見える奴相手でも人の前には認めた奴以外顔を出さないもんだ。それをお前、話を付けただと?」
「え、うん。そうだけど……?」
そういや、キイと初めて会った時、俺以外にもユッテとクイルがいたが2人はキイを視認することは出来なかった。
いや、ユッテは見えてはいなかったがキイがいると感じてたんだっけ?
それはさておいて、アランは俺がそれをできるというのが不思議なようだ。
「レリィが鑑定できないってのも気になる。ウルトル、さっきも聞いたが、お前一体何者だ?」
うーん、これはちゃんと話さないと信用されなさそうだな。
まぁいいか。この2人は信用できるんだし、問題はないだろう。
「俺神だよ。」




