君は誰だと言われれば
皆さんどうも、ウルトルです。
信じられないかと思いますけど、私現在発光中です。
というか眩しっ!自分の光なのに目が眩しっ!
光の中で悲鳴というか驚愕の声が入り混じっている。
……ん?今体に何か違和感があったぞ。
「あなた!どこにいるの!?」
「レナ、私ならここだ!この光は何だ!?何者かの魔法か!?」
ルーマル夫婦の慌てふためく声が聞こえたが、酔いは醒めたようだすいません。これ俺なんですよ……
まぁ俺のせいだって分かるわけないよな。
「いいえ、この光……魔法じゃないわ。これはウルトルの力……!?」
あれ?レナさん俺の中の力だという事に気付いた?
そう言えば俺が生まれてすぐの時に俺の神の力に気付いていたんだったな。
段々と身体の違和感が大きくなっていくんだが。説明すると、体が2つに分かれるような感覚……?
あれ、何か空中に投げ出された感覚。え、空中?そんなことを考えた瞬間、何かに引っ張られ、俺の体は硬いものにビターンとぶつかる
「うぼぁ!」
痛みこそなかったが、思わず情けない悲鳴のような声が出てしまった。
え?声?俺もしかして喋った?
というか妙にふかふかとした感触があるんだけど?あ、目も見える。
この赤いのもしかしてパーティーで皆が座っていた敷物だよな。
あ、もしかしなくても俺、体手に入れちゃった!?
いつの間にか光が収まったな、もしかして俺の体が出来る
「あ、あなた誰ですか?」
聞きなれた声が聞こえ、思わずそちらの方向に目をやると何とそこには不思議そうな目を向ける美少女が。
金髪に緑色の瞳……あぁ、この子を見間違えるわけないよなぁ。
「やぁ、ユッテ。」
とりあえず挨拶はしておこう。
「え?」
まぁそんな反応するだろうなぁ、見ず知らずの相手が自分の名前知っていて尚且つ挨拶してくるんだぜ?
今の自分がどんな姿かは分からないが、グンダル様の様な見た目だったら完全事案だ。
「待て、君は誰だ。」
と、俺とユッテの間にルディさんが割り込み俺の前に立ちふさがる。
その目は俺を警戒したもので、その姿は娘を守る父そのものだ。
慌てて体を起こすが、勢い余って後ろに倒れるかと思うと何かによって支えられ、倒れることは免れた。
俺を支えてくれたその正体は少し子どもより大きいくらいのサイズの木だった。
いや、直感で分かる。こりゃ紛れもなく木の俺だ。
というか俺、こんな木だったのか。何か見たことある木肌だな?
手触りもどこかで触ったことがあるような……
「その手を放しなさい。その木は私たちの家族だ。」
「……俺なんですけど?」
あ、思わず口にしてしまった。
「何を言っているんだ。君は人間じゃないか。」
ほう、俺はいま人間の姿をしているのか。それにラディさんの口調もどこか子供を諭すような言い方だ。
もしかして俺、今子供の姿をしているのか。まぁ目線も低いし体も小さいからそれっぽいな。
周りを見渡すとメイドたちは急の事態であるにもかかわらず冷静にこちらを見ている。
レナさんも同様にこちらを見ている。いや、あれは俺を観察しているといった方が正しいかもしれない。
しょうがないからさっさと明かしましょうかね。変な目で見られるのは御免だし。
「だから俺はウルトルなんですよ、ラディさん。」
俺の言葉にラディさんの目が驚愕に開かれる。
「……私の名前を知っているのは私がここの領主という事もあり知れ渡っているだろうから理解できる。だが何故君が今日名付けたばかりのその木……いや、私の息子の名前を知っている!」
「いや、だから俺がウルトルなんですってば!」
「ウルトルなら君の背後に生えているだろう!いつからこの屋敷に忍び込んでいたんだ!?」
あぁ、こりゃ信用してもらえてないなぁ!?
まっそりゃそうだよね!そう簡単に信じられないですよね!木が人間になるなんてあり得ないし……そもそも、俺は本当に今も生えているから余計そうなるよね!
仕方ない、この手は使いたくなかったんだが。
「ラディさん、今年のレナさんとの結婚記念日の日。前日まで忘れてて仕事入れそうになっていましたよね?」
「なっ!」
「あなた……?」
俺が木の時に聞いたラディさんのたまに聞く愚痴の内容を漏らしてみたのだが、その効果はあったようだ。
ラディさんの顔は驚愕に染まり、レナさんは疑惑の目をラディさんに向けている。
「き、君っ!何を言っている!」
「そもそも私は大事な記念日を忘れるような男じゃ……」
明らかに目に見えて動揺しているラディさん。声震えていますよ?あとレナさんが黒い笑顔で貴女の背後に立っていることに気付いてないんですか?
「あなたぁ?」
怒気の籠った声にラディさんは恐る恐る振り返る。まぁ、顔は見えないけど粗方どんな顔しているか分かる。
さて、少しは俺がウルトルだという事を分かってもらえたかもしれないけどいまはそれどころじゃないよなぁ。ごめんね、ラディさん。
必死に謝り倒すラディさんに合掌しているとクイクイと引っ張られるような感覚。
あら、誰かと思えばユッテじゃないの。
「あなた……本当にウルトル何ですか?」
だぁからそう言ってるじゃないですか!
話進まなくて申し訳ないです、スローな展開ですがどうかお付き合いください