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生まれ変わったら神樹だった  作者:


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撃退法

……無いな。ないない、この話し方は大仰すぎるな。もう少し普通に、ちょっと声は高めなくらいに

ほら、あいつ等警戒して武器抜いているじゃん。

あ、でも俺の姿確認したら下げてくれた。


「子供?驚かさないでくれ、魔物だと思ったじゃないか。」

「こんな可愛らしい子供を魔物と思うなんて失礼なお兄さんだな。」


可愛らしいなんて自分でいうのは抵抗はあるのだが、おどけたくらいの方が話易いよな。

まぁ鬼の仮面被っている以上可愛らしさは微塵も感じられないと思う。

剣士は俺の顔をじっと見ている。大方、俺が何者か探っているんだろうな、明らかに普通じゃないもんな。

その視線に応えるように俺も剣士を見返す。……良くも無ければ悪くもない、特徴が無いことが特徴ともいえる顔だなー難しいこと考えてなさそう。

心の中で毒づいているとそんなことを露知らず、短剣使いと魔法使いの2人の女性が俺に近付いて目線に合わせるように屈んできた。


「あら、僕?こんなところに子供一人じゃ危ないわよ?ほら、お姉さんたちと一緒に街に戻らない?」

「そーね、このままいても花畑見つからなさそうだし。それでいいんじゃない?」


ほう、このまま帰ってくれるというのであれば俺としては願ったりかなったりなんだが。


「ベラ、ロッテ!なにを言ってるんだ!」


ちっクソ剣士が邪魔しやがって、いいから帰れよ。


「何ってこんなに小さな子供置いて先に行くなんて……」


顔が見えなくても身長的にも子供だもんな。良心があれば放っておくなんてできないだろう。

後ろの斧使いも喋らずとも頷いている。

あとは奴だけなんだよなぁ


「いやいや、森にいるという事は少なくとも帰り道は知ってるはずだ!わざわざ子供1人のために帰ることなんてない!ましてやそんな変な仮面付けている子供なんて!」


変とは失礼な。暗い森の中での般若の仮面は威圧感があるかもしれないけどさ。

どうクソ剣士を引き下がらせるか……うーん。

あーもういいや、こいつにはあれを言うしか方法はなさそうだ。


「お兄さんお兄さん。」

「な、何だよ。」

「ちょいと耳貸して?いいこと教えてあげる。」

「何!?」


クソ剣士チョロくない?さっきまで疑ってた相手何だからもうちょっと身構えてもいいじゃないか。

いいことと聞いて飛びついてきた。

こいつ詐欺に遭いやすそうで逆に心配になるな。

んじゃ嬉々として耳を寄せてきたこいつに良いことを教えて上げましょうねぇ?


「お兄さん良い装備してるね、それオークのでしょ?」

「分かるのか?」

「ふふっ、分かるよ?だって見てたんだもん。」


お、剣士がピキッと固まるような反応を示す。


「み、見てた?」

「うん、見てたよ。4人でオークと闘って苦戦しててやられそうになったところにメイドさんに助けてもらったところ。」

「ど、どこで!?」

「さぁ?」


間近で見ていたんですけどね、はぐらかしておこう。この方がダメージが大きそうだ。

と、早速剣士の額に冷や汗が流れ始めた。明らかに動揺しているな。

だが俺はここで口撃を緩めるほど甘くないんだよ。


「話変わるけどお兄さんたちウィグルに滞在してるんだって?」

「あ、あぁ。」

「僕そこから来たんだよ。ここに生えてるきのことりにきたんだ。」

「へ、へぇ。」


さっきから返事が曖昧なのは動揺が続いているからか。

可愛そうにもっと追い込んであげるよ。


「ウィグルの領主ってルディ・ルーマル侯爵って言ってね。昨日王都から帰って来たんだ!」

「え?王都?」


王都という言葉に反応したな?心当たりがあるんだろうな。


「そうなんだよー。でね、ルディ様の息子が僕の友達でね。話したんだけどさーオークに4人で苦戦していた冒険者がいたんだって!」

「っ!!」

大きく息をのむ音が聞こえた。冷や汗ももはや滝レベルで流れているな。

あ、ちなみに友達というのは俺のことな。当たり前だけど。


「ラディ様は面倒だからってオークの討伐を冒険者の人たちがしたってことにしてもいいって言ったみたいだけどー。」

「も、ももも、もしかして、この森ってそのルーマル侯爵の領域だったりするのかな?」

「いや?そういう訳じゃないよ?」


俺の言葉に安堵したのか、剣士は深くため息をついた。

いやいや、何安心しているんですか。


「でも、この森の花畑を荒らされるのは見過ごせないって言ってたなぁ。僕一応領民だし、お兄さん達の事報告しなきゃいけないよね。あぁでも心配しないで!お兄さんたちは依頼を受けてきたんだから悪くないよね!虚偽の報告したわけでも無いんだからね!」

「よし皆!この子を連れて街に戻ろうじゃないか!んでもってこの依頼は止めておこう!」


はやっ!

簡単に折れるとは思っていたけどここまで簡単だとは俺も思いもよらなかった。そんなに俺からラディさんにバレるのが嫌だったのか。

冒険者の決まりとかよく分からないが依頼にて虚偽の報告をすることは罪なんだろうな。

他のメンバーは最初、いきなり考えを改めた剣士を訝し気な目で見ていたが、彼の必死の言い訳にまぁいいかと追及するのを止め、俺をウィグルに連れて帰ることになった。



ま、街に着いた瞬間別れるふりをしてまた森に戻りましたけどね。

彼らと別れる前に剣士の耳元で「ラディ様をがっかりさせないでね。」とくぎを刺しておくのも忘れずに。




さて、1組目の追い出しが成功したが、いつの間にか2組目、いやどんどんと冒険者が森に入り込んできた。

先程の連中はまぁ弱みを握っていたこともあり穏やかに帰すことに成功したが、他の奴らはそうはいかない。

俺が話しかけても聞きやしなかったり、行くと聞かない者。

もっと俺に交渉能力があれば話は別だったかもしれないが、致し方ないので、驚かせました。


具体的に言うとエトリを呼び出してね。

こう、「これより先に進むならばこいつの口がお前らの体を咥え、中の消化液で惨たらしく殺すであろう」とか雰囲気を変えて宣告し、エトリに大きく口を開けさせ、威嚇させる。

すると大抵の奴らは逃げ出し、勇敢なものは武器を向けてくるが、エトリは難なく返り討ちにして追い返した。


「た、助けてえええええええええええええええええええええええ!!!」


エトリにビビり、去っていく冒険者が何組目かもう数えるのも面倒になって来た。

この調子だとこの森には凶暴な植物が生えているとか噂になって入りこむ様な輩は少なくなるだろう。

一応エトリの事はラディさんに言っておこう。


エトリを種に戻しながらそんなことを考えると木を伝って、キイの声が聞こえた。


「ウルトル様、緊急事態です。」


緊急事態という言葉に嘘はなさそうだ。基本落ち着いているキイの声に焦りが混じっているように見える。


「ん?何?」

「冒険者です。それも相当な実力を持っているようです。」

「ほう?」


それはそれは、面白そうな。

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