帰ってきました
翌日、俺たちは当初の予定通りルーマル領へと帰還することになった。
この王都アラキファに赴く際に用いたものと同じ馬車を借りた。
今回は土産を積む必要が無くなったので一台だけ借りたみたいで、御者さんも同じ人で少し安心した。
ちなみにモミジの木、事後承諾の形になるがエルベルド王に話したら、構わない、むしろ大歓迎とのことだ。
アラキファも気に入ってくれたみたいだ。
モミジの木を生み出した代償として俺の髪もうすっかり白髪だけどな!
この王都で過ごした数日間、実に慌ただしかったなぁ。
ぶっちゃけ一番楽しめたのは初日にフィーレさんと街を回った時ってのが少し残念だ。
だから、あのモミジの木が転移できるくらいまで大きく成長したらまたここを訪れようじゃないか。
そして今度こそユッテと街を回るのだ!ふはははははは!
王都から出る際、フォルクスと王子が見送りに来てくれた。
王子さまよ、ユッテにいい顔してるんじゃねぇよ、おらこっち向かんかい。明らかに目を背けてるんじゃねぇよ!
本当はエルベルド王も来たかったそうだが、片腕を失っても仕事をこなしているらしい。
少しぐらい休めばいいのにとは思ったが、それがエルベルド王なんだろう。
まぁ無茶したらアラキファがぶん殴って眠らせるらしいので心配いらないだろう、新たな怪我が増えないことを祈るばかりだ。
帰り道だが、馬車に揺れる中、ユッテは目を輝かせて外を眺めていた。
この前はずっと馬車の中で寝ているか本を読んでいるかだったもんな。
……結局ユッテは俺が代わりに持って行った本を全部読破することは無かった。
後で聞くと存在を忘れていたらしい……今度同じような機会があったら絶対減らしてやろう。
あとはそうだな……あぁ、アイヴィーさんにアクセサリー送ったな。
モデルは早朝、フォルクスに案内して見せてもらった城に会ったルビーのネックレスだ。
俺にはデザインを考える脳なんて無いから丸々パクら……模倣させてもらった。いやぁいい仕事しましたよ。アイヴィーさんも喜んでくれたからよしとしよう。
一日跨ぎ馬車の外から見える景色が段々と懐かしいそれへと移り変わっていく。
という事はそろそろ着くか。そんなこと考えていたら見えてきていた。
ルーマル領にある小さな町、ウェイルだ。
いつも通りのどかでのんびりとした良い街だなー……ん?いや、何か騒がしくないか?
よく見ると街の人々の他に明らかに見たことないタイプの人間がいる。
鎧を付けたり剣などの武器を持っていることからこいつら、冒険者か?
おかしいな、確かここにはギルドは無い筈なんだよ。町近辺で、人に害を及ぼす魔物が発生してもメイド隊が基本殲滅するからラディさんはギルドは必要なしと判断し、おいていない。
もし仮に必要なことがあったら近くにある別の街で依頼を発注する必要があるのだとか……
だからウェイルには冒険者は滅多に来ない。
来てもそれは依頼のついでに宿に泊まりに立ち寄ったというのが殆どらしい。
しかし見た限り、100人は優に越えている気がする。
「父さん……あれ、何?」
「分からん。これはレイに聞いてみる必要があるな……」
冒険者であふれかえる道を何とか進み、馬車はようやく、屋敷の前までたどり着いた。
あぁ、長かった……レイさんがアレイシアさんと共に迎えに来てくれている。
「やぁ、レイ今帰ったy「お母様!ただいま帰りました!」
「お帰りなさい、ユッテ。大丈夫だった?」
ラディさん……熱い抱擁しようとしたんだろうけどユッテに先越されちゃったね。ドンマイ。
フィーレさん、アイヴィーさんは俺たちに一礼し、アレイシアさんと一緒に馬車に残った少ない荷物を持って屋敷に入った。
さて、俺は――
「ウルトルも、お帰りなさい。」
「うわっ、か、母さん……ただいま。」
ちょっとレナさんいきなり抱き着いてこないでくださいよ、柔らかいわ、いい匂いするわでもう大変だよ!
ってかラディさん最後かよ、恨めしそうな目でこっちを見ないでください。
というか俺はもう疲れたんだ、さっさと本体の中に入って寝るぞ。
あぁ、本体。我が本体よ、随分久しぶりに感じるぞ……
俺はゆっくりと手を伸ばし、本体の幹に触れる。手はまるで水に手を突っ込むかのようにずぶずぶと幹の中に飲み込まれ、最後には俺の体をすっぽりと飲み込んだ。
やっぱりここは安心する。
俺は自分の中に力が徐々に戻ってくること感じながら重い瞼を閉じ眠りについた。
意識が完全に落ちる寸前、外からラディさんの焦るような声が聞こえた気がするが――起きたときに聞こう。
「何!?――険者――畑――てる――!?」




