モミジ
何故土下座したかというと直ぐにアラキファが炎神だという事に気付かなかったことらしいが、アラキファ自身気にしていないようだ。
寧ろすぐ気づかれる方が問題だそうで。
さて、すっかり夜。
俺たちは部屋に運ばれてきた料理に舌鼓を打った。やはり城で出される料理だけあって一工夫も二工夫もされており、大変おいしゅうございました。
しかしアラキファ、何であなたも一緒に食事とっているんですかね?ラディさん凄いビクビクしてるじゃないですか。
ラディさんもそんなビクビクしなくてもいいと思うのだが。
そして、皆が寝静まったころ。
起きているのは俺とアラキファのみ。
疲れているのは全員の様で城も街も、喝采も喧噪も全く聞こえない。
聞こえるのはフクロウに似た鳴き声だけだ。
俺とアラキファはこの城の庭に深夜の散歩に出かけている。
というのも神様の先輩であるアラキファにいろいろ聞きたいことがあるからだ。
「で、聞きたいことってのは何?」
「そうだな……まず神様ってのは鑑定とか使えないのか?人間の中では使える奴がいるみたいだが俺はやろうと思ってもできなかったんだが。」
「えぇ、出来ないわよ。」
おっと、その言い方だと今は使えなくてもこれから習得できるとかではなくて、一生使えることは出来ないという事か?
「少なくとも私は出来ないわ。あなたも出来ないようだし。これにはちゃんと理由があるのよ。」
「理由?」
「えぇ、私も聞いたことあるだけなんだけど。何でも私達の上の上の更に上、まさに創造神とも呼べる方が『鑑定に頼って生き物を判断するような神は存在すべきではない』とか何とか言ってこうして私達みたいな各地にいる神々は鑑定が使えないの。」
「ふーん、だとすればグンダル様は使えるのか?」
「あのおっさんなら使えるわね。輪廻の神だから鑑定は必要なんですって。まぁ別に私は鑑定使えなくても不便に思わないから別に構わないわ。」
俺としては少し不便に思っちゃうのだが……まぁ使えないんなら仕方ないか。
もしかしたら何かの間違いで使えちゃうかもしれないし。
それから俺はいくつかこの世界で疑問に思ったことをアラキファにぶつけてみた。
「神ってこの世界にどれくらいいるんだ?」
「分からないけど……言えることは私たち以外にもたくさんいるでしょうね。」
「俺のステータスって鑑定で分からないのか?」
「もしかして、鑑定紙を使ったのかしら?おあいにく様、鑑定紙じゃ力は足りないの。鑑定できはするけど相当強力な魔力か才能がないと神を鑑定するなんてとても無理よ。」
「アラキファってなんさ」
「それ以上聞くと燃やすわよ。」
「すんません。」
「王子があんな性格なのとアラキファの加護って何の関係があるんだ?」
「どうにも私の加護を色濃く授かった人間ってどうしても尊大な奴になるのよ。良い一例がこの城建てたローレイグって奴。あいつのおかげで国は栄えたはいいけどどうにも馬鹿でこんなでかい城建てちゃったのよね。」
どんだけだよそのローレイグって奴は……でも相当のやり手だったという事か。加護の力もあるだろうがそれ以上に頭もよかったんだろうな。それでもこんな城を建てたのは馬鹿としか思えないが
「アラキファのその体って俺と違って祠にあった本体なのか?」
「そうよ?でもあなたが本体を人間態に出来るようになるのはもう少し先かしらね。」
何と……帰ったらやってみようかと思ったのだが、出鼻をくじかれてしまったな。うぅむ、仕方ないか。その間までこの体を使うしかないな。
「魔王っているのか?」
「そりゃあいるわよ。魔族の王様が魔王って呼ばれているわ。」
「いや、そうだけどそうじゃなくて……俺が聞きたいのはこう……悪い王様?」
「あぁ、そう言う事ね。うーん、確かにそう言う輩はいるわよ?でもそう言った王は長くは持たないけどね。」
これは前世でもよく聞いたな。何だっけ、あぁそうだ。
悪が栄えたためし無しって奴だな。
「悪い王ってのはね、大抵勇者、または英雄と呼ばれる存在によって滅ぼされるわ。これは世の常ね。世界を脅かすような悪王が生れたとき、どこかで勇者も現れるわ。」
やっぱり勇者いるんだな。こういう世界にはつきものだったりするんだろうか。
もしかしてどこかの国が召喚とかしたりしてなぁ……召喚ってのも定番の1つだよな。
さて、粗方聞きたいことは聞いたかな。
……っと、もう一つあったな。と言っても質問というより許可を求めると言った方が正しいな。
「アラキファ、この庭に一本。木を生やしてもいいと思うか?」
「木?そりゃまぁいいと思うけど……なんのためによ。」
「俺が来た記念――じゃなくて、どうにも俺は自分の力で生やした木をポイントに転移できるみたいなんだよ。その目印にな。」
「何それ、便利な能力持ってるわね……」
アラキファは転移能力持っていないんだな。神様の中でも貴重な能力とかあるんだな。
ちょっと優越感。
さって許可ももらったことだし庭の端っこにでも木を生やさせてもらいますかねーっとほいっ
……あれ?思っていたより小さい。
あーなるほど、限界なのか。今持てる力だとこれぐらいしか木を成長できないと……
試してみたが転移できそうにない。もうちょっと育つ必要があるみたいだな。
「ねぇウルトル。この木何?少なくとも私は見たことないんだけど……」
つんつんと俺が生やした木の葉っぱをつつくアラキファ。
そうか、この木はこの世界にはそれに近い木すら、ないんだな。
「これか?この木はな――」
今は黄緑色な葉っぱだがいつしかアラキファのように炎のような真っ赤へと移り変わる葉を付けたその木の名前は
「モミジってんだ。」




