囮
「まぁ、もうお探しになられたんですか!王都アラキファの騎士団は優秀とのお噂は本当だったのですね!」
胸の前で両手を合わせて満面の笑みを浮かべるアラキファに騎士団の男共はもうデレデレだ。
いくら暴徒相手とはいえ拘束された奴から木のアクセサリーを見つけるなんて極端な話子供でもできると思うんだが。
利点があると言えば人数が多いからその分見つかるスピードも速いと言ったところだろうか。
そんなことよりも、呪いの感染源の人たちだな。
騎士たちは言われたことをきっちりこなしてくれたようで連れ出された人たちは皆、木のアクセサリーを装着していた。
そして本当に鼻輪付けているのいたんだな。
「さ、始めましょうか?ウルトル、お願いね。」
「はいはい。了解だよ、お姉ちゃん。」
おい騎士共やめろ、そんな微笑ましい目で見るんじゃない。秘密みたいだから言わないけど実姉じゃないからな!
視線を感じるが無視だ無視。さっさと浄化してしまおう。
まぁ別に気張る必要もないから気楽に力を使う。
無事呪いを解呪することに成功しアクセサリーの持ち主たちは意識を失う。
同時に残りの暴徒たちも余すことなく意識を失いその場に無言で倒れ、騎士たちから歓声が上がった。
「ありがとう、ウルトル。よくやってくれました。」
「ハハ、アリガトウネエサン。」
アラキファさん、あなた今楽しんで頭撫でているでしょ?
それにしても、これで終わりなのか?妙にあっさりしているというか……
いや、俺らが出てこなきゃもっと時間はかかって呪いの感染源の人たちは最悪殺されていたかもしれない。
ってか暴れていたのこの王都の人たちだけなんだよな。
あれ、そういえば木のアクセサリー作った婆さんは?
明らかにあいつがこの暴動を起こした犯人だよな、呪い使って暴徒を作り上げたんだから……
ん、んー?
あ、これもしかして俺等術中にはまったんじゃないのか!?
「おい、騎士のおっさん!」
「お、おっさんとは何だ!これでもまだ30だ!」
「十分おっさんだ!あんたら騎士団って全員鎮圧に出ているのか!?」
「う、うむ?あぁ我らは全員……いや、正気の民たちを連れて何人か城にいると思うが。」
少しは城にいるのか……それなら、いや。駄目だな。相当な手練れじゃ無きゃもしあいつがいた場合気づかない可能性だってある。
ヤバイ、俺の考えが正しければ城にいる人たちが危ない。ユッテ達もそうだが、特にエルベルド王とかが!
「ウルトル?どうかしたの?」
俺の焦りを察したのか、アラキファが真剣な顔つきで聞いてくる。
この様子から見るに彼女もまだ気づいていない。
「アラキファ、少し不味い状況かもしれない。俺たち、というか騎士団は誘い込まれたかもしれない。」
「は?どういうこと?」
「単純な誘導だよ。この暴動を治めるにはこの王都では騎士団を出すしかない。暴動を起こした犯人は騎士団をこの暴動に目を向けさせる。んでもって犯人は――」
「逃げる人に紛れて城に行った?」
「そう。」
俺の言葉を聞き終わると、アラキファは素早く俺の手を握ると……おい、このパターンはもしかして
「急ぐわよ。」
「あ、はい。」
案の定アラキファの得意技ジェットブースターでの移動術だぁ!!
あぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああやっぱりこの移動法キツイ!!!
だがこの移動が一番早いのは確かだ。
このまま城までひとっ飛びしてもらおう。
俺の予想があっていれば今城の中はとっても不味い状況になっているだろうからな。
うわ、城門前にいた魔族と人族の門番が倒れている。死んでないだろうな!?
「アラキファ!」
「分かっているわ。」
俺の言いたいことを察し、アラキファは門番の所に着陸する。
息もあるし……良かった、眠らされているだけのようだな。
でも何で殺さなかったんだろうな。目立ちたくなかったとかか?
とと、無事を確認できたのならこいつらはもういいだろう。一応薬草を生成して傍に置いておこう。薬草さえあれば自分たちで回復してくれるだろう。まぁ効能がどれ程かは分からんが。
城内に入ると、あちこちで人が倒れているじゃないか。
門番同様、共通して眠っているな。眠っている人たちの中に騎士も混じっているじゃないか。オイ、眠ってないで仕事しろよ!
「ちっ相変わらず無駄に広い城ねぇ……何で私の加護授かった奴はどいつもこいつも……!」
忌々し気に場内を見渡すアラキファ。え、加護とこの城何か関係があるのか?
すっごい聞きたいが今はそんなことをしている場合じゃない。
一刻も早く奴を見つけなければ
その時だ。
「ぬぐおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「父上!!!」
聞いたことのある悲鳴のような2つの声、これはエルベルド王とオスニエル王子の声か!?
アラキファと顔を見合わせ声のした方角へ駆ける。
もしかして間に合わないか!?
その後もオスニエル王子と思われる叫ぶような声が廊下に響き渡り、それを頼りに進んでいくと俺たちが訪れたことのある謁見の間だった。
あの時同様魔法であけなければ開かないようで普通に押してもびくともしない。
「ウルトル、どいていなさい。」
その声を受け、俺は黙って扉から離れる。
アラキファは己の右足に焔を灯し轟々と燃えるその足を扉に向けて
「はっ!!!」
掛け声とともに単調な喧嘩キックを繰り出した。
流石の魔法の扉も炎神の蹴りには堪え切れられず大きな音を立て発破され、謁見の間に瓦礫がなだれ込む。
瓦礫に続いて謁見の間に入ると俺の目に飛び込んできたのは黒いローブを纏った何者かと対峙するように向かい合う王子と
その王子に庇われるように背後で片膝をついている王の姿があった。
しかも王のその姿、よく見てみると……片腕が無くなっている!?




