暴徒
「そうそう、ウルトル。あなたに1つ聞きたいことがあるのよ。」
「ん?何さ。」
何百年とも生きていそうなアラキファが俺に聞きたいことなんてあるんだろうか。
まぁ答えられる質問なら答えるべきなんだろうけど。
「いやね、最近この王都で変な気配を感じるのよね。上手く説明できないけど酷く不快に感じる気配よ。」
「不快な気配?それってもしかして……」
心当たりはある。ありありだ。もしかしてアラキファが言っているのは俺たちが遭遇したウォーウルフの変な気配の事だろう。
違う可能性ももちろんあるのだが、不快に感じさせる気配なんて俺が知る限りじゃああれしか思いつかない。
その事をアラキファに伝えようとしたその時、入口の方から1人の軽装備の男が駆け込んできた。
服についている紋章から察するにあの騎士達の一員だろう。
「フォルクス殿!至急お伝えしたいことが!」
表情からして緊急なことなのだろう。
フォルクスは男に駆け寄り、耳打ちで話を聞く。
最初は平静を保っていたフォルクスだったが、話を聞いているうちにその額には冷や汗が浮かんでいく。
「それで、王は……?」
「只今騎士団全員に鎮圧の命を出しています。」
「そうですか。報告ご苦労様です。あなたも鎮圧に向かってください。」
「ハッ!」
男は敬礼すると道を戻り去っていった。結構険しい道だったはずなんだけど……大変なんだな。
フォルクスが思案気な顔をして戻ってくる。
「皆さま、大変です。――国民の一部が暴徒と化して現在城下町で暴れている状況です。」
「「暴徒化だと!?」」
暴徒化とはそりゃ穏やかじゃないな。
でもおかしいな、昨日街を見て回ったがここの住民がこの国に不満を持っているようには感じられなかった。
それがいきなり暴徒になるか?もちろんすべてを見て回ったわけではないからそういう団体がいたのかもしれないが、異常だとは思うな。
「彼の話では暴徒となっているのは年齢問わず共通点のない者たちで、親は何ともなくても子が暴徒となる……逆のパターンもあるみたいです。しかもその者たちの力は強化されているみたいです。まるで獣のような」
それは何とも不自然な話だなぁそれに身体強化か……
ってそれ絶対ただの暴徒じゃないよね?明らかに何者かの手がかかっているよね?
……待て、城下町?おいそれって
「フォルクスさん、ラディ様達はどうなっているんですか!?」
俺の代わりにフィーレさんが聞きたいことを聞いてくれた。
宿屋に残して仕事をしているラディさん達が気になる。
「ご安心を、ラディ様はご無事で今、城内にいるとのことです。何度か襲われかけたようですがアイヴィーさんが対処したとのことです。」
あぁ良かった。城内にいるんだったら安心だな。アイヴィーさんもいるし杞憂だったな。
ユッテもフィーレさんも安心気な表情だ。
さて、この状況どうしようかね。この場合だと俺らも城内に戻った方がいいのかもしれない。
あーでも出来れば何とかしたいな。結構この王都好きだし……というかユッテに見せたいものとか食べさせたい食べ物とか色々あるじゃん。
ここは俺が一肌脱いで
「じゃあ私とウルトルでちょっと街の様子見てみるわ。あなた達は城内にかえってなさい。」
え、ちょっとアラキファさん?何1人で話すすめているの?
「ですが炎神様。我らの街の事に御身自らのお手を煩わせるなど……それにウルトル様も。」
「じゃああなた達即解決できるのかしら?」
アラキファの言葉にフォルクスも押し黙る。まぁ暴徒となった原因も分からずじまいだしな。騎士たちも住民も無駄に傷つく恐れがある。
なら俺たち神が出張ってさっさと解決してしまえばいいと。
「それに暴徒となった原因も私気になるのよ。例の気配絶対関係していそうだし。」
「あぁ、それは俺も同意。」
乗っかっておいたがこれは本当に俺も気になっていた。あの時は魔物だったがもしかして人間にあの気配とやらが乗り移っているかもしれない。
あの時はユッテたちがいたから急いで殲滅したけど今回はじ生きたものをっくり観察したい。
「しかしウルトル様……」
フォルクスがこちらに視線を送るが、まぁ遠慮しているのだろう。
「別に構わないよ。アラキファが言わなくても俺は行くつもりだったし。」
話を勝手に進められたことは気に食わなかったけどな!でも文句は言わないよ、というか言えないよ!ゲンコツは痛いもんな!
「あら、じゃあ……っとまず着替えないといけないわね。」
焔がアラキファを包んだかと思うと一瞬にして纏っている服がドレス調のものから聖職者のような服装へと変わる。着替える必要あったのか。
「いいじゃない、こんな時は雰囲気が大事なのよ。」
その言い分は納得できるわ。反論する余地は無かったな。というかよく考えたら俺の服も神主が着ているようなものだったわ。
「じゃあ行きましょうか?」
「はい?」
アラキファは俺の手を掴むとニッコリと微笑む。あ、手温かい。
ユッテとフィーレさんが「あっ」なんて声を漏らした気もするが気のせいだろう。
それにしても手を握る必要なんてあるのか?ん?行く?これから?馬車じゃなくて?
「それじゃあ私たちは行ってくるから。あなた達は城で待ってなさい。」
アラキファがそう言い終わると俺の手を掴んだまま地を蹴り駆けだした。
ちょまっ
あぁ、ユッテに引かれてウェイルに連れ出されたことを思い出した。
引っ張られる力は格段に違うんだけどな!
流石は炎神、足から焔を噴出してさながらジェット機ですよ。
「うわあああああああああああああああああああ!!!」
俺の絶叫は誰に聞かれるともなく風の音にかき消されるのであった。




