自慢の姉
「2人とも落ち着いたかしら?」
「「はい。」」
「よろしい。」
落ち着きましたからその拳を収めて頂けないだろうかアラキファ様よ。
俺もユッテも大きなたんこぶ出来ちゃいましたよ。明らかに俺を殴るとき力結構入れたよね?
なんて反論したらもう一発殴られそうなので止めておこう。あれは凄い痛いのだ。例えるなら親父のゲンコツだな。
「さ、遊びも終わったしこの壁もいいかしらねっと」
アラキファがパンと両手を合わせ鳴らすと轟々と燃え広がっていた焔の壁が綺麗さっぱり無くなった。
鎮火し、煙が立ち上った訳ではなく最初から焔が無かったかのように消えたのだ。
流石神業。いとも簡単に地味に凄いことやってのける。
もちろん壁が消えたことで俺たちと向こう側にいた大人組がお互いに視認し合えた。
皆が固まっている中、真っ先に行動を起こしたのはフィーレさんで
「ウルトル様!ユッテ様!御無事で!!」
叫ぶや否や駆け込んでじゃない、飛び込んでき、俺たちをギュッと抱きしめた。
心配かけてしまったようだな、フィーレさんはわんわん泣いて俺たちの無事を喜んでくれた。
残りのフォルクスとグンギガンギはアラキファを視認すると即座に跪きアラキファに対し、頭を垂れた。
「「「お初にお目にかかります。我らが神、アラキファ様。」」」
「ええ。」
三人一斉の挨拶を「ええ。」で片付けちゃったよこの神様……でもこの3人の様子を見るにこのアラキファは本当にこの王都で祀られている神なんだなぁ。
3人ともピクリとも体勢を動かさないな。これエルベルド王に対してより敬意払っていないか?いや、神様だから当然なんだろうけど。
そう思ってたらフォルクスが口を開いた。
「神よ。お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。」
「あら、何かしら?」
「先程の焔の壁、あれは神の御業という事で合点がいったのですが、何故あの2人を中に閉じ込められたのでしょうか?こう言っては何ですが、あの2人はまだお若い……」
あ、フォルクス俺たちの事心配してくれていたのね。本当に素早く跪いたから俺たちの事は二の次かと思ったよ。
でもそこのアラキファとかいう神様の言う事にゃただの遊びらしいんだよなぁ。ただの遊びで俺死なないけど消えかけたんだぜ?本当にあの時は肝が冷えましたとも。焔と闘っていたのにね!
はい。
「ふふっ。そう、あなたたちにはあの子が"子供"に見えたのね?」
「は?あ、いや申し訳ありません。言っている意味がよく」
「そうね、見る限りじゃ子供にしか見えないわ。でもね、あの子――ウルトルはあれでも神よ?私と一緒のね。だからちょっと手合わせをしてたのよ」
オイ、神様。オイ、アラキファ様。オイ。言うなや、俺の許可取らずに言うなや。
ほらぁ、男達ポカーンしているでしょうが。ついでに俺ら抱きしめているフィーレさんも、ユッテも固まってるでしょ。
「「「「「ええええええええええええええええええ!!!!????」」」」」
祠に5人の絶叫が響き渡った。イカンイカン、ユッテが咳き込んだ。背中をさすらなければ。
「アラキファ……何でばらすのさ。」
「え?秘密にしてたの?――まぁいいじゃない。遅かれ早かれ気づかれるわよ。多分。」
多分じゃねぇよ。少なくとも俺は俺が神だと本当に身内しか知らないでいてほしかったんだよ。
百歩譲ってフィーレさんはいい。帰ったら教えるって決めていたんだから。
でもユッテはなぁ……弟が神だと知ったらどんな反応を示すか。
フォルクス達のように跪いて頭を垂れるのだけは本当に止めてほしい。ユッテにそんなことされたら本当に落ち込みます。んでもったら様付けされたら死ぬ。
件のユッテはというと……
「ウルトル凄いです!」
ほらー様付け……あれ?
「ユ、ユッテ?」
「ウルトルって神様だったんですね!弟が神様なんて姉として誇らしいです!」
ユッテさん、まさかのハイテンションで興奮していらっしゃる。腕をぶんぶん振るって嬉しさを表現しているのだろう。子供らしくてとても可愛いです。
じゃなくて!ユッテは俺が神だと知っても全く物怖じしていない。
「えっと、姉さん?俺、神なんだけど?」
「はい、今聞きました。」
「ですよね。で、俺弟でいいの?」
「え?ウルトル、私の弟は嫌だったんですか?」
「嫌じゃない!すごい嬉しいです!」
「だったらいいじゃないですか!ウルトルは私の弟、私はウルトルの姉です!」
何とも滅茶苦茶な発言だ。俺含め全員、アラキファさえも言葉を失った。そんな中でユッテただ一人がドヤ顔浮かべて満足げな表情だ。
生まれたてとは言え神様を弟呼ばわりするとは。これはうちの姉、将来絶対大物になるなぁと俺は確信した。
「すごいわね、あなたのお姉さん。」
アラキファが苦笑いを浮かべ話しかける。まぁこんなこと言う人間、滅多にいないだろうしそりゃそんな顔になるわ。確かにユッテは凄い姉だ。凄いからこう返答しておきました。
「自慢の姉です。」




