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生まれ変わったら神樹だった  作者:


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炎神の声

「ほーん、これが祠かぁ。」


広い場所に祠があったものだな、しかし草木一本も生えてないのは寂しく感じる。

まぁ森の中に火の神奉ったら燃え移るから、それは駄目だよな。そう考えたら植物は無い方がいいか。

その代り祠そのものは想像以上に大きいなぁ…中に煌々と燃えている焔があるが、あれが炎神として奉っているものみたいだ。


「近づいてもいいんですか?」

「構わぬ、だが触るなよ?」


触りませんとも……触ったら祟られたりするんでしょ?炎神の祟りって暑そうだな。

ユッテの手を引き俺たちだけで祠の近くまで行ってみるが、焔ではあるはずなのに全く熱を感じない。

ユッテを見ても汗をかいている様子は見当たらない。ユッテ自身も熱さを感じないことに疑問を抱いているみたいだ。


「熱くないんですね?」

「うん、全く熱くない、ね。何でだろう。」


立体映像みたいなものかと考えたがそれは流石にないよな、そんな技術あるわけない。幻術……でもないな。上手く説明は出来ないが、この焔がここにあるという事はハッキリとわかる。

触ってみたくなったが多分グンギさん……だったな、の約束だ。触ることは絶対しない。ウルトル、約束守る。


「んー、姉さん次行く?」

「そうですね、確かに凄くて気になりますけど……祠ですもんね。あんまり長いもよくないでしょう。」


面白いもの見れたしこのくらいでいいかな?他にもいきたいところいくらでもあるし……期待外れ感は否めないけど。もうちょっと何かあるかと思ったんだけど。


踵を返し、大人たちの元へと戻ろうとするとき、頭の中に声が響いた。

『つれないこと言わないの。遊んであげる。』

その声が終わると同時に俺たちを中心に広範囲の炎の壁が発生した。


「何っ!?」

「ユッテ様!ウルトル様!!」

「「この焔、まさか!!」」


大人たちも想定外の出来事に驚愕の声が上がる。フィーレさんは俺たちに駆け寄るべく足を踏み出したが、それよりも速く焔が立ち上り、進行を妨げた。

おいおい、どういうこっちゃ。こりゃ嫌な予感するぞ。


「姉さん!こっち!」

「えぇっ!?あの、ウルトル、これは!?」

「いいから速く!」


俺はユッテを引っ張り大人たちのいた方角の炎の壁の元までダッシュする。

壁の向こうからドンドンと叩く音が聞こえるがもしかしてフィーレさんが壁を攻撃しているのだろうか。

しかし、フィーレさんのあの化物ステータスでもこの壁を破壊も炎を揺らめかすことすらできないというのはおかしい。

しかもこの焔もあの祠の焔同様、全く熱くない。


さっき俺の頭に響いてきた声、あの声を聴いた時、一瞬キイと出会った時を思い出した。確かキイも脳内に語り掛けてきたが、今の声はキイの、恐らく精霊のそれとは全く異なる異質な感じがした。

タイミング的にあれだよな、どう考えても俺の頭の中に語り掛けてきたのは……


『お初にお目にかかるよ、炎神様。』

『気づいた?そうね、気づくか。君があれ?あのー……そう!グンダルのおっさんが言ってた新人神?』

『そうですが?』


頭に響く声は男か女か、はたまた爺か婆か、少年か少女か。いろんな声が混じってるからよく分からん。でもキイ同様、頭の中で言葉を紡ぐだけで会話できるみたいだ。

それにしても気持ち悪いなぁ、ボイスチェンジャーの声聞いているみたいで頭が痛くなるよ。

しかし大当たりですか。まぁそうだよなぁだって目の前に炎神の祠があるんだもん。

今はそれよりも、この焔の壁について聞かなきゃいけないな。


『この壁は何ですかね?俺たちを出さない気ですか?』

『駄目。』

『駄目?』

『敬語を止めなさいと言ってるの、私同じ立場の相手や気に入った相手に敬語で話されたくないのよね。だから敬語は駄目。』


フランクな神様だ事。この炎神イメージ的にはもっと熱くなれよぉ!!とか言うものかと思ったがそんなことは無いみたいだ。非常に落ち着いている。

火の神=暑苦しいイメージは通用しないか。


『じゃあこれでいいか?……で、話は戻すがこの焔は何だ。俺たちを出さない気か?』

『それは君たちがさっさと帰るからでしょ?いいじゃん、私と少し遊ぼうよ。君、あのバカ王子と闘ったんでしょ?圧勝で。……消化不良なんじゃないの?』


そんなことは無い――とは言えないな。確かにあの決闘は退屈極まりなかった。フォルクスとの約束が無ければあんな王子を情けない姿を見るくらいしか楽しみが見いだせなかった決闘は受けなかっただろう。


『だからさ、私がそれなりーに遊んであげるっていうの。感謝してもいいんだよ?』

『要らないんで。帰してくれませんかね。』

『駄目駄目。私だって楽しみたいんだから……!!』


祠の焔の揺らめきが大きくなる。やがてその揺らめきから1つの火花が散ったかと思うと、その火花が見る見るうちに肥大化し、ある1つの姿を形成した。

その姿は……あのオスニエル王子が使った魔法で出来た鳳凰そのものだった。

いや、違うな。あの鳥のプレッシャーは王子のよりも格段に違う。まさに鳳凰と呼ぶべき威厳が感じられた。


「ウ、ウルトル……」

人間よりも遥かにでかい鳳凰を目の当たりにしたユッテは恐怖から声を震わせ俺の服を掴む。

「姉さん、大丈夫だよ。この焔の壁厚くないみたいだから壁を背にして下がっていて。」

「は、はい……」


恐怖に駆られようとも俺が心配なのか、泣きそうな目でこちらを見る。あーもう!ユッテ泣かすなや!


『ほうら、あの王子よりも凄いでしょ?』

『確かに凄いな……でも俺は遊ぶとは言ってないよな?』

『じゃあ出さないよ?』

『ですよね。』


分かっていたさ……出れないことくらいさぁ。それじゃこの鳳凰と闘わなきゃいけないのか。

絶対これ、王子の鳥と同じように戦って勝てる相手じゃないのは目に見えて分かる。

色々戦い方考えなきゃいけない。そしてそれよりも重要なことがある。ユッテの事だ。俺と遊びたいだけならユッテはいる必要ないでしょ。出してくれよ。


『じゃあせめてユッテだけでも出してくれませんかね』

『却下。観客がいないと面白くないでしょ?安心しなよ。炎神の名に誓ってその娘に一切の攻撃は当てない。だから心置きなく遊ぶといい。』

『そりゃどうも!!』

『じゃ、頑張ってね。』


気の抜ける炎神の声が楽しい楽しい遊びのスタートのようだ。鳳凰が翼一杯広げて俺にじゃれにかかる。

俺はそれに対抗すべく、木刀を取り出し鳳凰を迎え撃つ。もちろん燃やさせるわけにはいかないので、燃え移るよりも速く木刀を振る。

そう言えばよくよく考えたらさぁ……


俺、この体に残っている力でこの鳳凰倒さなきゃいけないのか!

……やれるのかなぁ?

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