決闘の始まり
「で?いつやるの?これから?」
「えぇ、出来ましたらすぐにでも……もちろんご案内させていただきますので。」
まぁ早い方がいいな、それならユッテとの観光も目一杯楽しめるってもんだ。
でも俺一人行くんじゃ怪しまれるよなぁ、うん。
という訳で
「フィーレさん、アイヴィーさんもいるんでしょ?」
振り向かずにそう言うと物陰から申し訳なさそうな顔で2人が出てくる。
「申し訳ございません、ウルトル様。」
「アハハ、やっぱり気付かれていたんですかー。」
実はこの2人、気配を断ってずっと俺たちの話を聞いていたのだ。
いつから俺が気づいていたかと聞かれたらそりゃあ、最初から?
「聞いてたと思うけど俺行ってくるからさ、フィーレさんついてきて。アイヴィーさんはラディさん達に適当に誤魔化しといて。」
「え、適当って具体的には!?」
「よろしく!」
すまないアイヴィーさん、今適当な嘘考えるのは面倒くさいんだよ、王子どう料理するか考えなきゃいけないし。
大丈夫大丈夫、俺ぁアイヴィーさんがどんな無理難題でも適切な回答を導き出せると信じているからね。
だからそんな捨てられた犬みたいな顔をしないでいただきたい。心が痛むじゃないか……
でもま、考えないんですけどね?
「じゃあ行こうか。アイヴィーさん、あとはよろしく!」
「ウルトル様あああああああああああ!?」
アイヴィーさんには特別すごいアクセサリー作ってやらねば、俺は心の片隅でそう決意しておいた。
まだデザインのデ文字も考えてないんだけど。
さて、宿を出てみれば闘技場までの移動手段があるとフォルクスは言っていたけど、またも馬車だった。あ、でも馬は黒色で格好良いなぁ。
揺れも俺たちが乗ってきたものよりも少なく、快適だな。流石王の執事が乗って来た馬車なだけある。
ん?この方向ってもしかして……
「あれ?闘技場とやらは城にあるの?」
「えぇ、城の一角にございます。」
まぁあんなに広い敷地があるんだ。闘技場ぐらいあっても別段不思議じゃ……いや、不思議だなぁ。城に闘技場がある意味が分からん。そういうのって大抵城下町に無いか?
いや、そういや訓練用とか言っていたな。騎士団の訓練用の闘技場か、あぁ1人で納得したわ。
ガッタンゴットン、馬車は進むよ。お城までーっと
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本当にあったよ、なんて立派な闘技場なんでしょう!
初めて見る闘技場に俺も感動を隠し切れない。こういうのってあれだろ、教科書で見たことがある。そう、コロッセオだ!まさにそれだ!
闘技場に感動しているとフォルクスさんから軽く笑われた。何でじゃ。
いやぁいいなぁ石造りの闘技場、何というか、趣があると言えばいいだろうか。
やっぱり闘技場、コロッセオは石造りに限る!
さて、闘技場内へ向かう廊下を歩く俺たち一行。
「王子はもういるの?」
「えぇ、先立って連絡をしておりますから今頃闘技場内におられるかと……ウルトル様、武器はどうします?」
あー武器ねー。どうせあの王子は登場の時に持っていたあの剣を使うんだろうよ。
フォルクスからあらゆる武器があることを教えてもらったが、俺には必要ないとだけ伝えておいた。
「え?ウルトル様も己の肉体が武器なんですか!?」
はいそこ、嬉しそうな顔をしない。別にフィーレさんみたく体術で闘えないこともないが俺の今回の必要ないという意味は別にここにある武器じゃなくて自前のがあるという意味なのだが。
「そうですか。しかし、ウルトル様は見た目武器を装備して……あぁなるほど、把握しました。」
フォルクスも何かを察したみたいだな、まぁ見た目武器持ってないのに武器はあると言えばアイテムボックス持っていることを疑うよな。
実際正解だ。収納規模は分からないけどな。
さぁ決闘場へと続くの前に着いたぞ。
「それでは私たちはここで失礼します……あぁ、あと言い忘れておりましたが、エルベルド王も試合をご覧になりますので。」
「はぁ!?ちょ、初耳なんだけど!?」
「ウルトル様、ファイトです!」
「では御健闘を。」
早っ!流石化物メイドと王直属執事……逃げ足も速いんだな。
というかフィーレさんは俺サイドなんだから、もうちょっとちゃんとした応援をしてほしいものだ。
まぁいい。さっさと終わらせてさっさとユッテと楽しい楽しい観光の時間だ。
俺は門に手を置きあまり力を籠めずに慎重に門を開けた。
外の光が漏れ目に入るが別段眩しいと感じない。
あぁでも日光素晴らしい、良い酸素生み出せそう。
さって、俺たちが雌雄を決する円形で構成された決闘場にはすでに奴がいた。
「遅かったな!愚かな愚民よ!」
愚かな愚民ってそれおかしいよ王子……愚かさを強調したいならもうちょっと言葉を選ぼうぜ。頭が弱く見える。
っとと、言葉に気を取られて奴の装備を見るのを忘れていた。
なるほど、そう言う作戦かよ!抜け目ねぇな王子!いやそれは無いか!!
んーにしても王子、がっちがちに装備固めているなぁ。
ありゃ騎士団の奴らが来ている鎧よりも硬くて軽いんだろうな、流石王子だけあって装備品も一級品か、国宝クラスかまでは分からないけど。
円形決闘場に入ると緑色のドームが決闘場すべてを囲んだ。
なるほどなぁ、こいつが傷を修復させるとか何とかって奴か。
あ、あんなところに本当にエルベルド王いるじゃん、隣にはフォルクス。さらに隣にはフィーレさん……あぁ腕ぶんぶん振ってるわ、これは返しておこうか。
「ハッ!余裕だな愚民。そんな装備で俺に勝てるとでも思っているのか?」
ほう、挑発のつもりか王子様。ありきたりな挑発だなぁ、一周回って微笑ましく見えてしまうわ。
「おい!何を笑っている。」
おっと顔に出てしまっていたか、これはこれは、気を付けなくちゃね。
でも王子もちょっと笑っただけでカッカし過ぎじゃないか?煽り耐性低くないですか。
「王子、そんなお話しなくてもいいじゃないですか。これは決闘なんです。お互いの力を存分に発揮しそれで語り合おうじゃありませんか。」
「ふん!口は一丁前に回るみたいだな、愚民が。まぁいい、確かに貴様の言う通りだ。俺はこれより、貴様を打ちのめすことで!昨日貴様に受けた屈辱を!!晴らしてやる!!!」
王子はそう叫ぶと勢いよく昨日も持っていた剣を引き抜き、驚いたことにその剣に焔を纏わせ、俺に斬りかかって来た。
「死ねぇ!」
いや、死ねぇとか言うなよ!これ死なない設定じゃん!
しかもその目結構本気の目だな、予想以上にコイツの怒りを買っていたみたいだな俺。
まぁ大人しく斬られててもいいんだけど、フォルクスからの依頼だ。
まっ頑張りますかね。
俺は袖から昨日王の怒号のおかげで出し損ねた武器を取り出し、王子の剣を難なく受け止める。
「なっ……!き、貴様ぁ!」
まさか受け止められるとは思わなかったのか、王子の顔が驚愕にゆがむ。
更にその俺の取り出した武器を確認するや否や、信じられないといった目で武器を凝視する。
まぁそうだな、普通あり得ないことなんだろうけど。
そりゃ焔の剣を木刀で受け止められたらビックリするよね?




