アクセサリーを売る老婆
「おばちゃん、その魚の塩焼きちょうだい!」
「はいよ!ハネトビウオの塩焼きね!」
「おっちゃん、その串焼きちょうだい!」
「おう!火噴き牛の串焼き一丁!」
絶賛屋台満喫中。
祭を開催している様子は無い筈なのにこの大通りは活気に満ち溢れているな。
俺以外にも屋台で食を楽しんでいる人は多い。
塩焼きも串焼きも美味しゅうございました。ペロリといただきましたよ。
ハネトビウオなる魚は本当に羽が付いたトビウオみたいな魚で羽も手羽先の如く食べることが出来た。
火吹き牛もその名の通り火を噴く牛らしく、その肉も燃え盛っていたがそれ自体に熱は無く、口に入れても平気だった。肉汁が染み出てまっこと美味しい。
手当たり次第に美味しそうな屋台を見つけては買って食べているのでフィーレさんは結構忙しいだろうな。
と思ったらフィーレさんもフィーレさんでいろんな食べ物を抱えて屋台を楽しんでいた。
「ウルトル様、このホシサザエのつぼ焼き凄いおいしいです!」
「マジで、それどこ!?」
「あっちです!行きましょう!」
あれも美味い、これも美味い。不味いものや俺の口に合わないものが全くなかった。
前世では結構好き嫌い激しかったと思うが、今では食べ物なら何でもおいしそうに見える。
……まぁ美味しいとはいえずっと水だったモンな。
明らかに今の俺の食べた量は子供とは桁違いに多いが、別に苦しくとも何ともない。
むしろ俺が心配すべきなのは……
「フィーレさん、ちなみに俺のお小遣いあとどれくらい?」
「そうですね……あっ後1つ買えるくらいしかないですね。」
俺の腹が無限大でも金は無限大ではない。
ラディさんからもらったお小遣い、よくここまでもってくれた。
まぁ美味しいもの一杯食べて満足したし屋台はもういいかな。
「じゃ今回はここで打ち止めかな。もうちょっと歩いて回ろうか。」
「そうしましょうか。そういえばウルトル様、食事をすごく楽しんでおられましたけど……もしかして水、駄目でした?」
両手の人差し指をツンツンと合わせ申し訳なさそうな目でこちらを見るフィーレさん。なにそのあざとい仕草?それ絶対計算してないでしょ。卑怯な。
その点に関しては全く気にしてない。あの水は本当に美味しかったからね。
それにフィーレさん俺が普通に食事できること知らなかったし、俺も言ってなかったしね?
あれ、これ言ってなかった俺が悪いじゃん。
「いやいや、そんなことは無いよ。あの水美味しかったし、帰ってからもお願いしてもいい?」
俺のその一言にフィーレさんの顔が晴れ晴れとしたものに戻る
「はい!もちろんです!」
うんうん、これでいい。でもたまには食べ物もちょうだいね。
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さて、どうしよ。
そろそろ日も沈みかけて来たし今日は一旦宿屋に帰ろうかね。
街の人々も帰路についているで、段々と騒がしかった大通りも静かになっていく。
しかし、お小遣いがまだ残っているから是非とも使い切りたい。
「ちょいとそこのお兄さん。」
「ん?」
お兄さんと言われて振り向いてみたが、そこには老婆がいた。
インドの女性が被っているあの布に似たものを付けた老婆。まぁ人のよさそうな笑顔を浮かべている。
見ると、老婆の足元に木で出来た指輪やネックレスといったアクセサリーが置いてあった。
前世の祭りでもいたなぁ、こういうアクセサリーの屋台。
「何、お婆ちゃん?」
「ちょいと商品を見ていってくれんかねぇ?婆の店だからと皆目もくれないから悲しくてねぇ。買わなくてもいいからせめて見てくれんかね?」
ふむ、まぁいいか。そんなに時間もかからないだろうし、それにこのアクセサリーにも興味がある。
フィーレさんが何も言わないし、時間的にもまだ大丈夫だろう。
「いいよ。早速見せてもらうね。」
「ありがとうねぇ坊や。」
屈んでアクセサリーを見てみるが……いやぁ、良い商売してますねぇ
作りが精巧で本当にこの婆さんが作ったものなんだろうか。
宝石の類を一切使っていないがどれもかしこも素晴らしい。
それにこのアクセサリー、基本的に全部懇切丁寧に
黒い靄みたいなんあるじゃん。
でもあのウォーウルフに似たような気配ではないな。呪いか?
こういった類は装着して呪いが発動するのが定番だよな、まさしく呪いの装備。
でもアクセサリー自体は本当に良いものなんだよね。これ単体で欲しいけど呪いがクソ邪魔。
……浄化できるかな。
物は試しだな。
「お婆ちゃん、これ1つ頂戴!この指輪!」
「おやおや、指輪かい?もしかして誰かにプレゼントかい?」
「うん、お姉ちゃんが今病気で寝てるんだ。そのお見舞いにね!」
「そうかいそうかい。その指輪には無病息災の呪いをかけてるんだよ。指にはめればたちどころに良くなるさね。」
「へー!それ凄いね!」
呪いの癖にな。嘘つきめ。
「じゃあせっかく坊やが買ってくれたんだ。サービスしてあげないとね?ほれ、このブレスレットをあげようかね。後ろメイドさんにはこの指輪。」
これは儲けものだな。1つのアクセサリー買ったら2つもついてきた!ご丁寧に呪いつきだよ!
「わーありがとー!じゃあ早速……フィーレさん!指出して!」
「えっ!?は、ハイ!」
フィーレさん、顔赤いけどどうしたのさ。もしかして指輪を送られているという事を意識したの?いや、俺子供なんだけど……
まぁいいや。フィーレさんの差し出された左手の薬指……ではなくて中指につけ、
る前に浄化しないとね!と言ってもやり方分からないからとりあえず頭の中で念じてみた。
("消えろ")
頭の中で出来るだけドスの利いた声で念じてみるとどうやら正しかったようで呪いは煙のように消え去った。
うんうん、ちゃんと消えてくれたようで何より。
おまけにフィーレさんの無病息災を祈っておこうかね。……あれ?今一瞬光った?
まぁいいか。無事フィーレさんの中指に指輪は嵌った。しかしよくピッタリにあったな。そういう魔法でもかかっていたのかな?
老婆はと言うと笑顔のまま固まっていた。
「わぁ、ピッタリあった!お婆ちゃん、ありがとうね!ほらこれお金!」
俺の声に現実に引き戻されたように老婆の体はビクッと震える。
「あ、あぁ……ありがとうね、坊や。」
「じゃ宿に行こうか、フィーレさん。」
「はい、ウルトル様!」
フィーレさんに告げ、俺たちは踵を返し、宿屋に向かって歩き出す。
あ、そうだそうだ。婆さんに言っておかなきゃな。
「そうだお婆ちゃん!」
「え?」
「あんなに良いアクセサリーに悪いことしちゃだめだよ?木が悲しんじゃう。じゃあね、お姉さん。」
婆さんからの返事は無かった。
ちなみに婆さんの姿が俺には若い女性に見えていたという訳ではない。
ただ婆さんにしては厚化粧みたいな感じするなぁと思って集中して婆さん見てみると……若い女が見えた。
鑑定スキルは使えないみたいだが、そういう偽装を見抜くことは出来るんだな。
ウルトル、学んだ。




