色気づいてんじゃねぇ
あ、言われたことを理解できずに王子固まった。
凄い事言ったな、ユッテは。まさか即お断りとは。
まぁあの王子もいきなり告って何してんだ……まさかOKされるとでも思ったのか?
いや、王子と聞いただけで結婚を申し込んでくる女は結構いるだろうな、しかもまだ子供だが、あれはイケメンとも言ってもいいレベルの顔だ。
それにあのまさに自信家な口ぶり……うん、OKされると思ったんだな!
まぁ結果は玉砕なわけで。
「な、何故だ?」
あ、動いた。わなわなしているけど動き始めたぞ王子。
あんなに自信満々だったからこそ、断られた事実を認められないのだろう。
だがそんなことはお構いなしにユッテは
「私、乱暴そうな人はちょっと……」
ユッテは大人しめの男性がタイプみたいだな。
うんうん、俺としてもユッテをどこぞの馬の骨……あれは王子だけど。軽々しくくれてやるつもりはない。
それにラディさんも満足げに頷いてるしメイドたちも胸をなでおろしている。
「えぇい!口答えをするな!お前は俺が妃にすると決めたのだ!するといったらする!」
何とオスニエル王子、駄々をこね始めた。年相応と言えばそうなのかもしれないが、こちとら王子より年下だぞ。年上の王子がそんなにヤダヤダしてたら、一気に王子が情けなく見える。
「嫌です。私は自分で決めた殿方と一緒になりたいです。王子にはもっといい女性がいるはずです。」
最初の緊張はどこに行ったのやら、ユッテは毅然とした態度で王子に言う。
いや、そうでもないな。よく見ると微妙に手も足も震えているじゃないか。怖いよなぁ、相手は王子。下手したら俺たちの首が飛ぶことだって考えられる。
それでも王子は嫌だったか。
そんなユッテの状態にも気づかない王子はユッテの言葉に顔が薄汚い笑みに代わった。
「ハッ!いい女だと?そんなの見つけるたびに妾にでもすればいい……妃が嫌だというなら妾にしてやろう。ありがたく思うんだな!」
いやその理屈はおかしい。しかもガキのくせして妾とか何言ってるんだコイツ。エルベルド王はこいつにどんな教育してんだ!
王子の手がユッテの腕を掴もうと迫るが、まぁうん。
させないよね、というかさせるわけないよなぁ!?
「お止めください。王子。」
俺はにこやかな笑みを浮かべたまま、ユッテに向けられた腕を掴み進行を妨げる。
おっと、この王子結構力強いな。余裕で耐えられる強さなんだけどな、そんな力でユッテの細腕を掴もうとしていたのかコイツ。ゆるざん。
「何だ貴様。」
「初めまして王子。私はユッテの弟のウルトルでございます。以後ヨロシク。」
「弟だと?ハッ!弟と言うのなら姉には幸せになってもらいたいものではないのか?」
「幸せとは?」
まぁ聞かなくても分かるんだが、もしかしたら、本当にもしかしたら俺の予想とは別の答えが返ってくるかもしれない。
対応を決めるのはそのあとでも遅くない。
「言わずもがな、俺に黙って従えばいい。王子たる俺が妃に……いや、妾になれと言ったんだ。ならば女はそれに応じるのが幸せだろ?」
はっはっはっはっ、いやぁ満点ですねぇコイツ。
なぁんであの人間出来てそうな王様からこんなクソガキが生まれてくるんですかねぇ。
「確かに私……俺は姉の幸せを願ってますよ。」
ユッテの幸せは本当に願っている。
「ならお前からも言ってやれ。俺の下につくことをな。」
これは駄目だわ、言葉に訴えかけるより強硬手段の方がいいなこれは。
「嫌ですか?」
「は?」
いや、そんなに訳の分からないとでも言いたげな顔は止めてくださいよ。察しが悪いなぁ王子様は。
「弟として姉の幸せは絶対。でも姉を幸せにしてやれるのは確実にあんたじゃない。それにな……」
徐々に、本当に細々と力を込め、王子に拮抗している感を醸し出して王子の腕を押し返し始める。
これ結構力加減大変、精神が疲れるぞこれ。
「何だと!?」
王子が押されはじめ、顔を驚愕にゆがませる。しかしそれは王子だけの話ではなかった。
王子を追いかけてきた使用人たちも、両端にいた騎士たちも驚きに声を上げている。
そのエルベルド王ですら例外ではない、王は表情こそ崩さなかったが、目をかっ開いている。
俺は周りの視線に構わず言葉をつづける。
「妃とか妾とか……ガキが色気づいてんじゃねぇぇぇぇぇぇぞおおおおおおおおおおおお!!!!」
渾身の力(に見せかけた超微力)で俺は何とか(別に苦労せず)王子を押し返すことに成功した。
ブックマーク100突破しました。出来るだけ皆さんに楽しんでもらえるような作品を書いていきますのでこれからもよろしくお願いします。




