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生まれ変わったら神樹だった  作者:


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38/89

オスニエル王子

「オスニエルよ……今は大事な話をしておるのだが。」

「ハッハッハッ!小さいことを言わないでくれ父上。この俺が来たんだ、何も問題ないだろう!?」


エルベルド王を父上呼ばわりしているという事はこのオスニエルとか言うクソガキ、王子なのかよ。

イカにもトラブルしか生まなさそうな顔してるな。

王子を追いかけてきたのだろう、メイドや執事たちが顔を真っ赤にしてなだれ込むようにやってきた。

この人たち、苦労しているんだなぁ。


「これはこれは、オスニエル王子。お久し振りでございます。」

おぉ、俺たちが呆気に取られている中、ラディさんが王子に向かって一礼した。

流石は領主しているだけある、というか面識会ったんだな。もしかして3年前に会っていたんだろうな、エルベルド王もユッテに会ったことあるみたいだったしその時か。

さて、王子の反応はいかに――!?


「誰だお前。」

覚えられてねぇじゃねぇか!!

この王子見た目俺とユッテより年上みたいだから覚えているかと思ったけど覚えられてないんだな。

ラディさん凄い悲しい顔して傅く体勢に戻った。その姿からは哀しみしか感じられなかった。


悪気なしに人の心を折る輩は本当に性質が悪いな。


「……お前なんだそのハイグレードウルフは。また外に抜け出したのか。」

「暇だったからな。ここの兵士は俺と闘いたがらない、ならば敵意をむき出しにしてくれる魔獣とするに限る!」

「だからと言って軽々しく外に出るでない。」

「フン、そう言われても出るがな!」


この王子、エルベルド王の言葉に歯牙にもかけない……もしかしなくても戦闘狂か?

そのハイグレードウルフとやら、見るからにウォーウルフの上位種みたいなものか。んでもってそんな奴がまっ黒焦げで死んでる……将来有望デスネ

関わりたくない人種だな。


「しかしまぁ父よ。どうしてこう下々の者を相手に……ん?」

「下々と言うな。我ら王族は彼らがいなければただの人であるぞ。見下すことは許さん。」


エルベルド王、いいこと言っている風でも王子聞いてないと思いますよこれ。だって今王子静止画みたいに固まっているんですもん。

何をトチ狂ったか、ユッテに視線を固めながら。

ユッテは何が何だか分からず首をかしげる。しかし王子が自分を見ていると気づくと愛想笑いを浮かべた。

あ、これ何かヤバイ。


「おいお前。」

うおっ!?王子が子供とは思えないほどのスピードでユッテの目の前に立つ。

と言うか何やってんだアイツ、ユッテがビビって怖がってるだろうが!!


「ひ、ひゃい!?」


驚きのあまり、ユッテの舌が回ってないな。まぁ無理もないか、あんなの誰だって戸惑うわ。


「名前は何という?」

「ゆ、ユッテです!」

「そうか、ユッテか。」


2人の間に微妙な空気が流れる。周りの連中、エルベルド王もラディさんもメイドたちも、そして俺も声を出せずにいる。

この王子、まさかあれをするつもりではないだろうか。

……いや、これ絶対するな!!


「ユッテ、喜べ。貴様を我が妃にしてやろう!」

言 い や が っ た。

あいつの、オスニエル王子の目は完全にユッテをロックオンした目だった。前世の俺もあんな顔の奴を見たことある気がする。

ユッテに一目ぼれしやがった。

しかも恋人通り越して妃だぁ!?なぁに背伸びしてやがんだこのクソガキ!

ユッテもいきなり告白なんてされて戸惑って……ん?いや、戸惑ってないな。

ユッテはゆっくり立ち上がりオスニエル王子ににっこり微笑みかける。


それをOKの返事と解したのか、王子の顔が子供っぽく晴れる。

え、まさか本当にOKなのか!?ユッテ?


「オスニエル王子。」

「うむ、何だユッテよ!」


王子は満足げにふんぞり返る。

ユッテは笑顔を残したまま、言葉をつづけた。


「有難い申し出では御座いますが、お断りします。」

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