恐ろしきフィーレ
「ラディ様ぁ~」
オークを倒したフィーレさんが何故か弱弱し気な声を上げて戻って来た。
どしたし、外を見るとフィーレさんの後ろにさっきの冒険者がくっついてきてるんだけど。
「なんだなんだ、どうしたんだフィーレ。」
予想外の出来事にラディさんはアイヴィーさんを伴い馬車から降りる。
面白そうなので俺も馬車から降りてみた。
まーしかし、近くで見るとこの冒険者たち本当にボロボロだな、フィーレさんが助けに入らなかったら本当に死んでいたかもな。
とか考えていると冒険者たちの先頭に立っていた剣士の男が声を出した。
「は、初めまして!この度は危ないところをお助けいただき、ありがとうございます!」
言葉が終わると同時に男は頭をすごい勢いで下げた。それに続いて後ろの仲間たちも頭を下げる。
ラディさんはというと勢いに押されたのか、目をかっぴらいている。
「何故私に礼を言う?君たちを助けたのはそこにいるメイドだぞ?」
「このメイドさんが言うには貴方様が主人と聞き及びましたので是非御礼を言いたいと思いましたので!」
何というか、真面目な冒険者だなこの剣士さん。冒険者ってのはもうちょっとぶっきらぼうとか勝手なイメージがあったが偏見だったみたいだな。
……いや、真面目な上腰が低いなーこの人。ペコペコ頭を下げてる。いや、これは俺たちが乗っている馬車からして相応の立場の人かと思っての態度か?それなら頷けるな。
「まぁうん。死者を見なくて済んでよかった。これに懲りたら実力以上の魔物に戦いを挑まないことだな。」
実際その通りだろう。オークと戦ったことないから分からないけど、4人でオーク1体相手にするにしては押され過ぎかもしれない。
「はい……まさにその通りでした。僕たちではまだまだ力不足でした。」
「でもそろそろ戦果上げないと白い目で見られるからね……」
剣士に続いて魔法使いの女性が呟いた。白い目で見られるってアンタら何をしていたんだよ。
「事情は聴かない。が、まぁ精進をするんだな。ウルトル、馬車に乗りなさい。行くぞ。」
「はーい。」
これ以上この人たちに付き合う義理もないしな、俺としてはさっさと王都に行きたい。で、街並みみたい。食べ物食べたい。
「待ってください!あのオークはどうするんですか!?」
剣士が指差す先には完全に息絶えたオーク。しかし本当にでっかいなぁ、俺の2倍以上の大きさはあるんじゃないか。
「オークか……いらん。君達が持って帰るといいんじゃないか?」
「いいんですか?解体して売ればそれなりの値段になるのに……」
「私たちが金に困っているように見えるか?いいから持って帰りなさい。あれで依頼完了とかにしても私は何も言うつもりはないから安心しなさい。」
反論は認めないとばかりにラディさんは馬車に乗り込み、俺も続いて乗り込む。ちらっと冒険者たちを見たが、口をポカーンと開けて硬直していた。少しうれしそうではあったけど。
人の手助け(100%)狩ったもので依頼完了して喜んでいるんじゃ彼らの成長はまだまだ先かもしれないな。
最後にフィーレさんが一礼し馬車に乗って漸く馬車が発進する。
少し進んだあたりで後方から「ぃいよっしゃあ!ラッキー!!」と聞こえた。ラディさんは大きくため息をつき
「助けず痛い目見せりゃよかったかな……」
と呟いていた。うん、俺もそう思うわ。
もう彼らの事は忘れよう、もう会うことは無いんだしな!うん!
はい、もう終わり!冒険者なんて見なかったしフィーレさんはうるさいオークをワンパンで沈めて終わり!ハイこの話終了!
「でもフィーレさん、本当にすごかったね。どこまで闘えるの?」
「ありがとうございます、ウルトル様!えーっと、そうですね……私何と闘ったことありましたっけ?」
フィーレさんあんまり闘ったことって覚えない性質なのか?それとも覚える価値のない戦いばかり繰り広げていたと考えるべきなのか。
「私が覚えてる限りじゃガーゴイルぶん殴っていなかったかしら?」
「あぁーそんなことあったねぇ!懐かしいなぁ。」
ガーゴイルとか前世でもゲームの中に出てきていたな。翼のある石の怪物だった気がする。
そんな相手を覚えてないほど簡単に倒したのか……
「父さん、フィーレさん雇って正解だったんじゃない?」
「彼女には本当に活躍してもらっているよ。」
「あはは、お褒め頂き光栄です。あ、でも」
そこで言葉を切るとフィーレさんが俺の耳に顔を近づけボソッと呟いた。
「最近体の調子が本当にいいんですよ、ウルトル様のくれた果物を食べてから。」
……あれ、もしかして俺、元々強かったフィーレさんをさらに強化しちゃってたの……?あのいちごのせいで?




