道端の戦闘
「じゃあ行ってきます。」
「はい、行ってらっしゃい。体には気を付けるのよ~?」
レナさんに見送られながら出発したが、最後の最後までラディさんがレナさんから離れたがらなかったので、フィーレさんに手伝ってもらい、引きずって馬車に乗った。
愛しているのは分かるが流石に見てるこっちが辛いからちゃんとしてほしい。
ユッテはユッテで馬車に乗ると本当にすぐに寝た。
道は多少整備されているとはいえ、大きく揺れる時もあるがそれに構わずずっと寝ている。
余程持って行く本悩んだんだな。
俺はというとユッテから預かった本を読んだり、護衛メイドの2人と話したり、外の景色を楽しんでいた。
ラディさんも流石に吹っ切れたのか、今はどのように報告するか云々唸りながら考え込んでいた。ちなみに俺もそう言ったものは全く知らないので助言は出来ない。
馬車に揺られながら何時間か過ぎた頃、何やら人の物とは思えない声が遠くから聞こえてきた。
「ん?何だ?」
「魔物が現れたんじゃないのか?」
ラディさんは慣れているのか、さほど興味はなさそうだ。まぁこの世界じゃ魔物なんて普通か。ウェイルじゃ魔物なんて見なかったし森ではウォーウルフ以外の魔物はあれ以来見ていない。
本では見たことあるが俺が実際に見たことのある魔物は1種類だけなのだ。興味はそれなりにある。
窓から顔を出してちょっと目を凝らして声の聞こえた方向を見てみるといるいる。
人型で緑色の肌、大きな巨体の魔物……あぁ、あれがオークか。棍棒ぶん回してぐおーぐおー喚いているな。
ふむ、戦闘中か。1体のオークに対し4人の男女が攻撃を繰り出していた。
男2に女2。お、装備を見るに剣士に斧使い、短剣使いに魔法使いかー攻撃的なパーティだな。しかし攻めあぐねているな。悉く攻撃が棍棒によって弾かれたり短剣使いに至っては肌に攻撃が通っても全然効いてないみたいだ。
そう言えば子の方角って……あ、この馬車、通りかかるなぁどうしよこれ助けるべきなのかな。
でも見ず知らずの相手だし助ける必要あるのかな?
そう考えているうちに馬車はどんどんあの戦闘に近付いていく。
大分近づいたところでようやくラディさんが戦闘音に気付き顔を上げた。
「ほう、オーク相手に4人か。駆け出しなのか?」
「どうするんだ?父さん。」
「んーそうだなぁ。うちの住民だったら間違いなく助けるんだがなぁ。」
ラディさんはそう言いながら考えるが、その顔は先ほどまで報告内容考えていた時よりも軽い表情だ。
「まぁ通りかかってそれを助けずに死なれるとなれば心が痛むな。フィーレ。」
「はいっ!」
名前を呼ばれるとフィーレさんはビシッと立ち上がる。
「ちょっとあのオーク、鎮めてきなさい。」
「お任せくださいっ!ではっ!」
軽く下された命令にフィーレさんは即座に従い行動に移す。
というかフィーレさん武器は!?何も持たずに馬車から飛び降りちゃったよ……
再び窓から顔を出し、戦闘してた方向見ると……倒れていました。
オークが、仰向けで。
俺が呆気に取られて呆然としていると
「あ、ウルトル様ご存じなかったですね。フィーレの武器はその肉体なんですよ。まぁ簡単に言えば武闘家なんですよ。」
アイヴィーさんが説明してくれた。
なるほどなぁ、俺がいちごあげたときに見た手の傷は武闘家ゆえの傷なのか……
「それにフィーレ。いつもからは想像できないかもしれませんけど実力は折り紙付きなんですよ?冒険者だったらそれなりの地位についていたかも……」
何でそんな人がうちでメイドしているんですかねぇ。
もしかしてこのアイヴィーさんも強いんじゃないのだろうか。というか強く無けりゃ護衛なんて任せられないよなぁ
メイド怖いわー
フィーレさんはというとパーティーの面々にしきりに頭を下げられ、かなり焦っていた。まぁ彼らからすると命の恩人みたいなものだからなぁ。




