気配の正体?
「いや普通の死体なら見慣れているんだがミンチという事はぐちゃぐちゃなのだろう?抵抗はあるさ。」
まぁ、そうか。そうだよな。そりゃそんな状態の死体見ても面白くないもんな。
寧ろあんな状態の死体を見て平然としている俺がおかしいのかもしれないな。やはりそこも神補正で死体を見ることに抵抗が無くなったのか。それもそれで嫌だな。
「ただ一つ確認しておきたいのはそのウォーウルフを殺した際、その気配はどうなった?」
気配か、考えてなかったが殺した後は違和感も何もなかったはずだ。
「いや、気配は消えていたよ。」
「そうか。その気配とやらは寄生虫みたいなものなのかもしれないな。宿主が死んだと同時にその気配の元凶も死んだか。」
「寄生虫?」
聞き逃せない単語が出て来たな。寄生虫って確かその名の通り生物に寄生して生きている虫だったな。この世界にもやっぱりいるのか。
「あぁ、ウォーウルフの体を乗っ取って他の魔物を襲っているのかもしれない。」
あのウォーウルフには例の気配しか感じられなかった。それはつまりあのウォーウルフは自分の意思で自身を動かしていたわけではなく、その寄生虫にそれすらも乗っ取られたという事か。
しかしそうなると……
「人にも乗っ取りかねない?」
「最悪のパターンだなそれは……その寄生虫が何から感染しているか分からないからな。」
前の世界では口から侵入とかダニのように体表に纏わりつくのもいるんだっけか。
うーむ、もうちょっとそう言うことに関して勉強しておけばよかったなと思ったけど、こんなことになるとはだれも予想できないわな。
「ウルトル、報告ありがとう。この事は王国に進言しておく必要がありそうだな。」
「ごめんね、仕事増やして。」
「なぁに、構わないさ。」
爽やかに笑って見せるラディさんだが、顔に疲れが見えている。連日仕事なんだろうなぁ。会社に勤めたことは無いから分からないけどこれが社畜というものなのか。
流石に労いの意味も込めてリンゴを一つ置いていった。
さて、と。暇だな。
ユッテは昼食の後は勉強の時間だ。今日は魔法だったかな、ユッテなら頭もいいし誕生日の時も無事魔法を発動できたし、勉強を続けていればいつかは大魔導士にでもなるだろう。
その時が楽しみだ。
このまま木に戻ってもいいがそれではちょっと味気が無い。
せっかく森に行ったのだからまた行ってみようか。アイツとも話がしたいし。
思い立ったが吉日、俺はすぐさまある事を念じ、力を発動する。
するとどうだ。
「うわっ!?ウルトル様っ!?」
目の前にキイがいるのでした。
突然俺が現れたことでキイは驚きのあまりひっくり返ってしりもちをついている。いや、すまん。
そう、俺が今いるのはあの森の花畑だ。
俺が使った力は簡単に言えば瞬間移動。俺の力が干渉したものがあるところに一瞬で行ける能力だ。
前にキイがこの花畑は俺の力の影響を受けているだとか言っていたからもしかしたらと思って使ってみたら移動できた。うむ、便利だなこれ。
「悪いなキイ。力を使う実験だ。」
「いえ、またお越しくださいませとは言いましたけど本当にすぐに来るとは思ってもみませんでしたので……。」
「俺は気紛れなんだ。」
「そのようで。」
キイ、ため息ついたのは俺は聞き逃さないぞ?だからと言って咎めはしないけど。
「にしてもキイ、何だお前その服。」
「え?何か変でしたでしょうか、ウルトル様の力と共に流れてきた情報を頼りに作ってみたのですが。」
「いや、似合ってる似合ってる。」
キイが着ているのは紛れもなく黒を基調としたセーラー服だ。まぁご丁寧にリボンまで再現して。
髪の色は金色だが結構マッチしていた。というか可愛い。見た目年齢ともマッチしているからさらにいい。
「左様ですか、ありがとうございます。」
立ち上がり深々とお辞儀するキイ。6歳の子供にお辞儀する金髪セーラー服……何だこの光景。




