父へ報告
帰り道だが大してトラブルもなく順調に森を抜けることが出来た。
ただ一つあるとするならば……クイルが枝木が揺れ音が鳴るたびに「ヒイッ!」と鳥みたいな声を出すのがとてもうるさかった。
記憶に無くてもあのウォーウルフの恐怖が身に染みているのだろう。
ユッテに「うるさいですよ」と軽く頭を叩かれたときは泣きそうになっていたな。今日はクイル、ユッテを庇ったのに報われないなぁ。
街でクイルと別れ、俺たちは寄り道をせず真っ直ぐ屋敷に戻った。もちろん休憩をはさみながらな。
着いた時は昼を少し過ぎたくらいか、メイドの1人が門をくぐった俺たちを発見すると「良かったぁ」と地面にへたり込んでしまった。
なんでももう少し遅かったらメイド全員で外を捜索していたんだとか。
……戻らせておいて正解だったな。
「ごめんなさい、アイヴィー。ちょっと森へ冒険していたんです。昼食は出来ていますか?」
申し訳なさそうなユッテの声にへたり込んだメイドさん……アイヴィーさんは正気を取り戻しすぐさま立ち上がった。
「いえ、無様な格好を見せてしまい申し訳ありません、お嬢様。お食事の方は出来ておりますので食堂の方へ。」
おぉ、一瞬で切り替えた。
さっきのへたり込んでいた姿が嘘みたいにキリッとしている。やっぱりプロなんだな。この世界にプロとかアマチュアとかの概念があるのかは謎だが。
「それじゃあいただきますね、ウルトルはどうするんですか?」
「俺は父さんにちょっと話がある。」
俺の言葉にユッテが微妙に目を細める。ユッテの事だから話の内容を察してくれたかな。
「そうですか。」
とだけ言うとユッテはそれ以上何も聞かなかった。
俺は1人で、ユッテはアイヴィーさんを伴い、屋敷の中で別れた。
さて、どう報告したものか。
まぁだからと言って扉の前で突っ立っているのも何なのでノックをしてさっさと入室した。
そこには朝のようにレナさんは居らず、ラディさんだけが書類と格闘を繰り広げていた。
「ウルトルか。何でも森に行っていたとか?」
「あぁ。でもあれは俺が……」
「嘘をつかなくてもいい。どうせユッテが連れていくとか言ってついていったんだろう?」
流石父親、おみとおしかよ。どういって誤魔化そうかと思ったのに無駄な努力かよ。ちくしょうめ。
「で?花畑はどうだった。」
「美しかったよ。正直ここの庭じゃ比べ物にならないほどに。」
「ハハッ!そうだな、あれは素晴らしい。私も最初に見たときは言葉を失ったよ。」
やはりあれをみると感動するのは誰もが同じみたいだ。そうか、ラディさんもあの花畑に行ったんだな。だからユッテが俺にあの光景を見せたがると思って俺の嘘を看破したのか。
でも俺がここに来たのは別の用事だ。花畑について話すのはまた別の機会にしておこう。
「父さん、森の中で変な魔物と遭遇したんだ。」
「魔物だと?……メイドたちはいつも通り仕事をこなしたはずなんだが。その魔物とは?」
「ウォーウルフなんだけどさ、何か変な気配を感じたんだよ。何というかこう……ドロっとした」
ラディさんは俺の話を聞くと眉間にしわを寄せ何かを考えるように指で机を一定のリズムで叩きはじめる。
「そのウォーウルフはどうした?お前たちに襲い掛かったのか?」
「襲ってきたね。まぁ流石にユッテに触れさせる前に殲滅したから安心していい。」
「そうか、ありがとう。」
別に礼を言われることじゃないんだがな、姉を守るのは弟の務めだからな!あとは力を持つものとしてね?あ、そうだ。
「そうだ父さん。ウォーウルフの死体あるんだけど見る?」
「何!?あるのか……見せてくれ。」
「あ、でもミンチだけどそれでもいい?」
「やっぱりいい。」
何そこでヒヨってんだよ大人ぁ!!あんたそういう死体見る機会絶対あるだろうが!現代社会ならいざ知らずこんなファンタジー世界でよぉ!!




