花園の守り手
とにかく呼び方を改めてもらおうか。神たる御方とか一々呼ばれていたらたまったもんじゃない。恥ずか死する。
『あー、俺の名前はウルトルだから今後そう呼んでくれ。こっ恥ずかしい。』
『そうですか?……かしこまりました、ウルトル様。』
あ、結構聞き分けの良い精霊で助かった。
さて、話の続きでもするか。
『話を戻すがここはお前が管理しているんだって?』
『その通りでございます。私は各地を放浪する精霊でありましたが偶然この花園に迷い込み、美しさに感動を覚えました。しかし花はいつか枯れてしまうもの、そうなるとこの花園も変わってしまう。それだけは避けたく思い、この地に宿り花々を守ってきたのです。』
さらっと言っているが、結構それ凄いことやってるんじゃないのか?いや、精霊だから簡単なのかもしれないな。多分俺が同じことしても苦にはならないかもしれない。
まぁこれを残しておきたいというのは分からないでもないな。
『この道もお前が?』
『えぇ、数年前から人がこの地にたまに来るようになってからですね。花を踏み荒らされたくなかったものですから少し気合を入れて道が出来るくらいの土地を広げました。』
『追い返すとかじゃ無いんだな。』
『そんなことをしたらこの風景を見た感動を分かち合えないじゃないですか。』
『それもそうだな。』
うん、最初から分かっていたことだが、この精霊はいい奴みたいだ。感動を誰かと共有したいというやつに悪い奴はいないはずだ。
それは人間に限らず精霊だって例外じゃないと思う。もちろん神様も。
『ところでウルトル様、こちらからもよろしいでしょうか?』
『ん?あぁ、いいぞ。答えられる範囲までなら答えるぞ。』
『有難う御座います。……道中おかしな魔物を見ませんでしたか?』
おかしな魔物、それはまさしくあのウォーウルフの事だろうな。
もしかしてこの精霊、何か知っているのか?
『あぁ、変な気配のウォーウルフをな。襲い掛かってきたんで殺しておいた。』
『遭遇されてたのですね。加え、討伐していただき有難う御座います。』
『いやいや、苦にはならなかったから大丈夫だ。それでお前は何か"あれ"について何か知っているのか?』
『申し訳ございません。私もあのような気配をするものは記憶にはございません。』
んー残念、各地を飛び回っていたのなら片鱗か何か知っているかと思ったんだが……まぁ仕方ないか。
「ウルトル?さっきから何をしているんです?何を見ているんです?」
おおっと、精霊との話に集中し過ぎていた。ユッテが心配そうにこちらを見ている。クイルは変なものを見るかのようにこっちを見ている。いやその目は止めろ。
「あーいや、ちょっとな。あ、そうだ。姉さんあっちに何か見えるか?」
俺はそう言い精霊の方を指さした。俺の指に釣られ、ユッテもクイルもその方向に視線を向ける。
「なんだよー?キンセイカしかないじゃん。」
クイルには見えるか聞いてはいないんだがな、しかし見えないか。ユッテはどうだろ。
「ウルトル、私にもキンセイカしか見えないんですが?」
ふむ、ユッテにも精霊は見えない、と。
「あ、でも。ウルトルの指差した先?キンセイカの幹の前、何かほんのり温かい気がします。」
『ほう。』
精霊から感嘆の声が漏れた。まさかかと思ったが、ユッテは精霊の気配を感じることが出来るみたいだ。
これはあれか、レナさんのあの力の遺伝か?
「で、それがどうしたんですか?」
「あーえーっとな、視力検査だよ視力検査。」
「視力検査ですか?」
「そう!どれくらい目が見えるかってことだ。クイルも姉さんも問題ないみたいだな!」
うん、ある意味視力検査で間違っていないはずだ。2人が疑惑の目を向けてきている気もするが気のせいだよな!
しかしこれ以上2人がいる中で精霊と話し込むと変に思われてしまうな。特にクイルあたりから。
まぁここの場所は覚えたしまたここに来て話せばいいかな。
『すまん、今日のところは一旦引き揚げる。またここに来ても構わないか?』
『それはもういつでもお越しください。実はウルトル様が顕現なさってから花たちの艶も際立っているのですよ。』
え、何それ。俺が体手に入れたことでこんなところにも影響来ていたのか?
それは何というか……驚きだ。
『それに伴い私もお力を分けていただいておりますのでこの地はウルトル様のものと言っても過言ではないのです。』
ええっ!?精霊にまで力及ばせていたのか俺!
これも神の力の一端なのか恐ろしいな……




