笑っていてほしい。
何分か過ぎた頃、ユッテは泣き止んだが未だ俺に抱き着いている。そのためちょっと動きづらい。
「ウルトル……」
「よう姉さん気分はどう?」
「最悪です……」
まぁそうだよな、危うく死にかけたんだ。いい気分な奴の方がおかしい。
そのためかユッテの顔はまだ曇っている。
「あの魔物はどうしたんですか?」
「追っ払ったさ、こう木をぶんぶん振り回してな。」
ここは追い払ったという体で話を進めておこう。
肉ミンチにしたなんて知ったら多分俺、怖がられちゃうよ。ユッテにそんな風に思われたくない。
「私を囲ったあの木は何だったんですか?」
「あぁ俺の力だよ。姉さん俺が木だって忘れたか?」
「そう、でしたね。」
うーむ、ユッテの顔が晴れないし俯いてしまった。曇ったまんまじゃあこっちの気分まで曇ってしまう。
それ以上にユッテには笑顔でいてほしい。木の時からユッテの笑顔は俺の栄養の1つなのだ。喋ったり動いたりできなくて憂鬱だった時、あの笑顔には幾度となく癒された。
……よし。
「姉さん。」
「はい……?」
今だっ!!
ユッテは俺の顔を見た途端時が止まったかのように動きを固める。次第にその顔は震えはじめユッテの頬が膨らんでいくと……
「ぶふっ!アハッアハハハハハ!!」
頬に貯まった空気が一気に吐き出され、ユッテは大笑いし始めた。
「クフッアハハ!ウルトルッ!何ですかその顔は……ぷふっ!」
俺の顔を指さしながら大爆笑するユッテには先ほどまでの暗い表情は無かった。
さて、ユッテが何故俺の顔を見て笑っているかというと、鼻と耳に花を咲かせてみました。
正確に言うと鼻の穴からチューリップ、耳の穴からタンポポの花を咲かせています。
ギャグとしては三流もいいところだが、まだ小さいユッテには効果が抜群のようだ。ちなみに俺に悪い影響はないから大丈夫だ。ちょっと重さ感じるけども
俺は未だに笑っているユッテの頭に手をポンと置く。
「ウ、ウルトル?」
「姉さん、その調子で笑っててくれ。俺は姉さんの笑顔が好きなんだから、姉さんには笑っていてほしい。もし笑いたくても笑えない時があっても俺が姉さんを笑わせてみせるよ。」
「ウルトル……ブフーーーーー!!ウッウルトル!格好いいこと言ってもその顔じゃ、その顔じゃ面白いだけですよっははははははは!!」
あぁれ?決まったかと思ったのにこれとてつもなく恥ずかしっ!!柄にもないことするんじゃないな!うん!
「でも、ウルトル。ありがとうございます!私のためにそんな顔……フフッ」
「はい、もう花は納めたから笑わないで。確かに笑ってとは言ったけど流石に俺が辛い!」
「はいはい、分かりました、ウルトル。」
最後にユッテは満面の笑みを俺に向けて礼を言ってくれた。あぁ、やっぱりこの笑顔は最高だな。
「う、ん……」
「あ、クイルも起きたみたいですね。」
「そうだな。じゃさっさと俺に見せたいところとやらに行こうか。」
「はいっそうですね!」
クイルにはさっきの出来事が夢であり、実際は森の木陰からいきなり蝙蝠が飛び出して来てクイルの顔面に直撃。
元々森に恐怖していたクイルが蝙蝠にぶつかったことで恐怖の限界点を突破。安らかに気絶したのだと説明しておいた。
その話を聞いた途端クイルは顔を真っ赤にして蹲った。いつか話す時が来たら本当のことを話してあげようか。
あの時のクイルの咄嗟の割と格好いい武勇伝も添えてな。
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さて、気を取り直して俺たちは森を進んだ。あれ以来魔物とは一切遭遇することは無かった。いくらか気配を感じはしたが、特に害を与えるような気配でも無かったから放置しておいた。
幾分か進むと次第に暗闇から光が差し込んでくるのが見えてきた。
ちらりとユッテを見るとユッテもその視線に気付き、無言で頷くことで返してくる。
どうやらあそこが目的地のようだ。
光の奥、そこにあったものは――!!




