一瞬
さて、始めようかね。俺の姉に手を出そうとした罪は重いぞ狼くんたち。
というかお前ら俺を無視して囲いを攻撃するなよ。
ウォーウルフ程度の攻撃力じゃいくら攻撃しても傷すら入らないようにはしてある。
が、それでもユッテたちを攻撃しようとするのはむかっ腹が立つ。
「死ね。」
俺の声とともに木の根っこが意志を持つかのように蠢きだす。
ウォーウルフが異変に気付き、ようやくこっちをこっちを向いたがもう遅い。
槍のように先端を変形させた根はウォーウルフの体を難なく貫いた。
もちろん1匹だけじゃない、全てを撃ち貫き、更に貫いたままのぴくぴくと痙攣するウォーウルフを思いっきり地面に叩きつけた。
はい、ウォーウルフのミンチの完成だ……一応取り込んでおこう。
何に取り込むかと聞かれれば、この世界にも持っている者がいるらしいアイテムボックスなるものだ。
まさか俺にもあるとは思わなかったが、神の特権なのか。
俺は手のひらを食虫植物のハエトリソウの如く変化させウォーウルフミンチを次々と喰らい、アイテムボックスに保存しておいた。
しかし呆気なかったな。
違和感のある敵だからもしかしたら傷の1つでもつけられるのかと思ったが、そうでもなかった。
というか肩透かしもいいところだったなぁ。
でもさっきのウォーウルフは絶対に異常だ。いや初めて魔物と対面した俺が言うのも何だが、あいつらはおかしかった。
このことはラディさんに報告しておくかな、何か知っているかもしれないし。
さて、2人を解放しなきゃなーっと。
俺が念じると木の囲いが地面へと埋まっていき、その中からユッテたちの姿も確認できた。
ユッテは言われた通りに耳を塞いでいたようだ。
ただクイルの方はというと……何かアイツユッテに抱き着いたままだらんとしてないか?あ、気絶してるなアレ。
ユッテは俺の姿を確認するや否や、目に涙をためて飛びついてきた。
「ウ゛ル゛ト゛ル゛ゥーーーーーーーーーーー!!!」
流石に避けるのもあんまりなので胸で受け止めた。
子供同士だったら勢いで抱きとめたままそのまま倒れるかもしれないが、そこは神様クオリティ、がっちり受け止めましたよ。
「ウルトル!大丈夫なんですか!怪我はないですか!?あの魔物はどうしたんでずがぁ!?」
あらら、涙で顔がぐちゃぐちゃだわ勿体ない、ユッテ泣かせちゃ駄目だなこりゃ
うーむ、まぁ泣き止むまで胸を貸してあげるとしようかね、いつか泣き止むだろう。
泣き止んでもらわないと気絶したまま放置されたクイルが不憫で仕方ない。
魔物の事を報告するのはいいんだけど……遭遇した経緯は……どうしようか。
ちょっとぼかしておこうか、流石にユッテ責任感じてるだろうしな、追い打ちはかけたくない。
あーどうラディさんに言おうかなぁ。




