新しい木生へ
木ってグンダル様……どうにかならないんですかねぇ
「ならんな。神が用意したくじで決まったことだしな。」
ですよね。
「まぁそんなに悲観することはないぞ?木とはいえ神の力を持っているんだ。もちろん自我だって存在するぞ。」
うーん、いくら神の木だとしても冒険とかできないでしょ。足が生えるわけじゃないんだし。
「分からんぞ?根っこを足代わりにわしゃわしゃと移動……」
そこでグンダル様の動きが固まったが、多分自分で行ったことを想像しているのだろう。
俺も想像してみたんだが、あれだな。
「気持ち悪いな。」
ですよね、ウィ○ピ―ウ○ズや人面樹みたいに顔があるならまだ歩いてても違和感ないですけどそれもう魔物の領域ですよね。
「だな。」
これは確実に神の力を木という要素が足を引っ張りすぎている。
しかし嘆いていても仕方ない。
グンダル様の言うように引き直しは出来そうもない。
もう受け入れるしかないよなぁ、木である自分を。
「そうだな、ここは受け入れるのが一番だ。だが安心しろ。今まで色々な者を転生させてきたが神の木は初めてだ。」
そりゃそうですよねぇ!
「まぁ話を聞け。俺も神の力を持つ木がどのようになるのかは正直想像もつかない。そう、可能性は無限大にあるんだ!」
グンダル様、それ俺どうなるか分からないけどまぁ頑張れって言ってないですか?
「言ってない!」
じゃあそう解釈しておきます。
「じゃあそろそろ転生を開始させるか。」
グンダル様が手をかざすと俺の足元が淡く光る。
お、これはアレだな?まばゆい光が俺を包んで目を覚ましたら転生完了ってアレですね?
「いや違うぞ?普通の転生者の場合はそれに近いが木に転生するお前は――」
言葉を言い終わる前に何か俺の足元違和感あるんですけど?
足下を見てみるとー……うぇ!?沈んでる!?ちょまっグンダル様ぁ!?
「まぁ地面から生まれるわけだからなぁ、そりゃ地面にずぶずぶっていくよなぁ。」
いやああああああああああ!俺飲み込まれてるぅ!これ結構怖い!底なし沼布見込まれている感覚!
「あー何か締まらねぇが。まぁ頑張って新しい人生……もとい木生を楽しんで来いよ。えーっとお前の名前……なんだっけ。」
ちょっとグンダル様!俺の名前忘れたのかよ!転生させようってのに酷いよ!
俺の名前はなぁ……あれ?なんだっけ。
そうこうしている間に俺の体は首より下は飲み込まれていた。
あぁ、地面の中温かい……
「まぁ名前なんてお前の新しい木生には必要無い筈だ。ま、そっちの生物に付けてもらえばいいんじゃねぇの?」
あぁっ適当だぁ!じゃあ適当ついでにグンダル様!せめてどこに生まれるかさえ教えてくれませんかぁ!
「え、ランダム。」
マジッスカ。
「マジマジ凄いマジ。じゃ頑張ってこい!天から応援しているからな!っていうか面白そうだから見ているからなぁ!」
ちくしょう!!!!
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神の力を得た木、一体全体どうなるんだろうなぁ。
考えても仕方ない、生まれてから考えてみようかね。
飲み込まれた先がとても安心するような温かさだからか何かだんだんと眠くなってきた。
お休ませて頂こうか、次に起きたときが俺の新しい木生の始まりだ。
「あら?こんなところに双葉が……いつの間に生えてきたのかしら。」
「ちょっと!何をしているの!奥様の出産の準備を手伝って!もう生まれるんだから!」
「は、はーい!!!……この双葉は、そうね。こんな時期に生えてきたのなら何かの巡り会わせよね。あとで周りに柵でも建てましょっと!」