森の中の気配
森の中を進んでいるわけだがこれがまた足場が悪い。
地面がぬかるんでいたり木の根っこが盛り上がったりで子供の足では辛いものがある。俺もたまにこけてしまいそうになる。
もちろんユッテやクイルも相当苦戦しているだろう……ん?
「ユッテ、大丈夫かい?」
「えぇ、少し疲れて来たけどまだ平気です。」
そうだよね、場所知ってるっていうことはここの効率の良い歩き方も感覚で分かっているという事だよね。
しかし未だに暗いな本当に……ん?何だこの気配
「っ!!クイル、止まってください!」
突然、ユッテが大声を上げた。それは焦りと恐れを持った大声だった。ユッテの少し先を歩いていたクイルもその声に驚き足を止めた。
「ゆ、ユッテ?」
「そのまま、ゆっくりと後ろに下がってきてください。」
「う、うん。」
ユッテのただならぬ雰囲気におされクイルは言われた通り後ずさる。
多分だが今のユッテには俺同様に何かを感じているのだろう。
しかしあの焦り様、俺と違ってユッテが感じている何かは恐ろしく感じているのだろう。
暗闇の奥から音が聞こえる。
それは風の音でも草の鳴る音でもない。
獣の声だ。
「ヒィッ!」
クイルもようやく目の前の存在を認識できたようだ。
さて、嫌な予感が的中したな。あんまり的中してほしくないんだけどな
低くどこか嫌悪感を抱かせる唸り声を上げるそれは日本ではもはや見ることは叶わないであろう狼が10体ほどいる。確かこの世界ではウォーウルフと呼ばれる種の魔物が俺たちの目の前に現れたんだが何かがおかしい。
というか俺がさっきまで感じていた変な気配、どうやらその発生源はコイツ等のようだ。
纏わりつくようで寒気を誘うような気配。俺は平気なのだが、クイルはもちろんユッテもこの気配に当てられてるみたいだ。さっきはまだ体力が残っていたはずなのに、今は立っているのが辛そうだ。
一歩、また一歩とウォーウルフは近づいていく。俺たちを喰らうためだろうが、あんまり近づいてほしくない。何せユッテたちが怖がっているからな。
クイルはよっぽど怖いのか、ユッテに抱き着いてべそをかいている。
おいこら何ユッテに触れてんだ、と思ったけど状況が状況だし多めに見ておこう。
「ヴォウッ!」
一匹が短く吠えユッテとクイルに襲い掛かった。
「う、うわぁあ!!」
「クイル!?」
おぉ、先ほどまで怯えていたはずのクイルは咄嗟にユッテの盾になるため、ユッテに抱き着いたまま背をウォーウルフの方へ向けた。
まぁ殺させはしないんだけどね。
「ほれ。」
俺が飛びかかってきた狼にピンと指を向けると地中から木の根っこが躍り出てウォーウルフが鳴く暇を与えないうちにその体を撃ち抜かせた。撃ち抜くって言ってもウォーウルフ弾け飛んじゃったけどね。
初めて生き物に対して攻撃したけどこれは酷いな、流石は神の力無慈悲だな。
ほら、ユッテもポカーンとしてるじゃん。クイルはクイルでユッテ抱きしめながらガタガタ震えてるし。
それよりも気になるのは奴らの方だ。
仲間がミンチになったというのに一切動揺してない。というかそれよりも俺たちを襲う方が優先しているかのようだ。
うーむ、まぁ襲い掛かって来るなら迎え撃つしかないけどこれユッテに見せるべきではないな。
「姉さん、耳塞いでな。」
「ウルトル?」
ユッテを四方から木の板で囲んでおこう。もちろん簡単には壊せない頑丈な奴をだ。
ただまぁどうしても空気確保のためスペースを開けておかなきゃいけない。そこからグロイ音が聞こえても嫌だろうからな。
さて、これでユッテたちは大丈夫だけど、一応確認しておこう
「姉さん、耳ちゃんと塞いだ?」
「塞ぎましたよ、ウルトルあなた何をしようとしてるんですか、この壁はあなたが!?」
「聞こえてるじゃん!いいからさっさと耳を塞げっての!すぐ終わるから!」
「……後でちゃんと説明してください!」
説明するの面倒くさいなぁ。
まぁ蹂躙した後から考えようか。
とりあえずウォーウルフのミンチがたっくさん出来るな。……食えるのかな。




