誤解は解けて嘘で固める
「で、そのパーティーの最後にな、発表があったんだ。『ウルトルを我がルーマル家に息子として迎い入れる』ってな。ウルトルって名前もその時に授かったんだ。」
最後はだいぶかっ飛ばしたし、しかもどこか矛盾があるかもしれないけど……まぁ子供に説明するならこれくらいで充分だろ!
さて、クイルの反応はいかに……?
「うぅ……」
え?もしかしてこいつ泣いてる?あれ、子供には泣ける話だったか?もし俺がこれを聞いたら泣くなんてことは無いだろうなぁ。
「クイル、泣いてる?」
「な、泣いて、泣いてない!泣いてないぞ!僕は泣いてない!」
「あぁハイ、分かった分かった。」
目を真っ赤にさせてうるうるさせてそんなこと言っても説得力はないぞ?おまけに声も少し上ずってるし。
「それで?これで俺がユッテの弟だと認めてくれる?」
「わ、分かった。認める……」
「そりゃどうも。」
まぁ別にクイルに認めてもらえなくてもユッテの弟であることは変わらない。というよりユッテが認めないことを認めないだろうしな。
ただやっぱり不審に思う人はいるだろうから俺の事情(嘘)を認識してる人は少なからずいた方がいい。
とりあえず俺の設定はあとでラディさん達にも話しておこう。
「ウルトルの事は理解していただけたようですね!それでは、クイルも加えて案内の続きをしましょう!」
体力が全快したのかユッテは元気よく立ち上がる。
理解してもらえたといえばそうなんだが、結局は嘘だからな。
それよりもこの体力無姉はまだ頑張るつもりなのか。止めるべきなんだろうけど……
「ウルトル、言いたいことは分かるけどユッテは聞かないと思う……」
ようやく泣き終えたクイルが俺にそっと耳打ちしてきた。ちょっとびっくりしたぞ。
しかしクイルの言う通りだな、ユッテの行動を止めるのは骨が折れる。ならば納得するまで付きやってやるべきだろう。
弟として姉を立てなきゃいけないしな。
「でも姉さんさ、街中はある程度案内してくれただろ?これ以上何を案内してくれるんだ?」
「ふふん、実はですね。目玉としてウルトルにどうしても見せたいものがあるんです!そしてそれは近くの森の中にあります!」
森か、確かにウェイルの近くには森があるのはフィーレさんだったかな?に聞いたことはあるが……見せたいものか。
「それは何だ?……と言ってもふつう教えないか。」
「そうです!絶対に教えません!神のみぞではなく私のみぞ知っているんです!」
悪戯っ子のように笑うユッテは結構レアだな、穏やかな笑顔はよく見るんだがこういったものは見たことないし……悪くないな。
あと神のみぞって言った時はちょっとドキッとしたぞ。ユッテには話してなかったよな……
「あ、あのユッテ?それ多分僕も知っているんだけど。」
「さぁ行きましょう!」
何とユッテ、見事にクイルをスルー!俺とクイルの手を強引に引っ張り今度は町の外へと駆けだした。
何も起きなきゃいいんだけどな。




