この話はフィクションです
子供は寝転んでいるユッテに近付き笑顔で話しかける。
「あらクイル。彼、ウルトルに街を案内していたんです……今はその休憩です。」
「ウルトル?……お前か。」
おうおう、何睨んでるんだよ短パン少年。
だがまぁ、先ほどのようにすれ違った人という訳でもないからきちんと挨拶しておくべきか。
「どーも、ウルトルです。」
「クイルだ……お前、ユッテの何だ!」
え、ユッテの何だと言われましても……もしかして彼氏にでも見えたか?いやいやいや、俺ら6歳だぜ?そんな彼氏彼女なんて恋愛云々は早すぎなんじゃないのか……?
「弟だけど?」
「そうです!私の弟なんです!」
俺の返答にユッテが凄い嬉しそうにしている。俺を紹介するのがそんなにうれしいのか、それとも俺が弟と言ったことがうれしいのか。
対してクイルはというと
「弟……?いやユッテ、君はひとりっ子じゃなかったかい?」
その疑問は当然だよな。だって俺が生まれた……というより人になったのはつい先日だからな。
クイルが以前からのユッテのことを知っているなら一人っ子って分かるよな。というか何で他の住民は疑問に持たなかったんだ?
適当に設定作ってごまかしておくかな、えーっと……そうだな。
「知らないのも無理はありませんよ、クイル。だってウルトルはこの前木からうm」
「うわああああああああああああ!!!」
なぁに話そうとしているんだこの天然姉はァ!!俺は咄嗟にユッテに覆いかぶさって両手で口をふさぐ。……あぶねぇ
「む、ムムモム?」
「お、おい!お前ユッテに何してるんだ!」
いや、こうでもしないとユッテが本当のことを話してしまいそうだったからね。
俺がルーマル家の庭から生えた木で、それがユッテの誕生日に人になった。
こんな話聞いて信じる奴がいるか!ユッテの頭がお花畑に思われてしまうだろ!
「俺が姉さんの弟になった理由は姉さんの口からじゃなくて俺の口から説明したかったんだ……」
「……そうか。」
クインは何かを察したかのような顔をする。信じてもらえたようで何より。
あ、ユッテのこと忘れてた。ごめん、息苦しいよね。
俺はユッテの耳元でこっそりと
「姉さん、俺の話は俺がするから少し黙っててな。」
ユッテはコクコクと頷き了承してくれたのでユッテから離れた。
「さて、俺がユッテの弟になったわけだが……俺は実は孤児みたいなんだ。」
「こじ?」
クインが何を言っているのかと言いたい顔だが、6歳にはあまり縁のない言葉か。
「お父さんお母さん……家族がいない子供の事だ。」
「そんな!ウルトルにはお父様とお母様がいるじゃないですか!」
「分かってるよ姉さん。そうだな、ラディお父さんとレナお母さん、そしてユッテが今の俺の家族だ。……で、俺を拾ってくれたのはラディさんなんだ。どうやら俺は道中で気絶して倒れていたらしくてな、出かけていたラディさんに偶然見つけられたんだ。」
よしよし、クインはちゃんと聞いているな。ユッテはユッテで疑問符を浮かべているのがよく分かる。まぁ事実と全く異なっているからな。
「ラディさんが俺を屋敷まで連れてってくれて、メイドさんたちに指示して治療してくれたんだ。だが目を覚ました時、俺には記憶が無かったんだ。」
「記憶が!?」
「あぁ、両親の名前、顔はもちろん自分の名前すら覚えていなかったんだ。もちろん引き取り手もいなかった。当時は怖かったな、色々な人が話しかけてくれたけど、いつ放り出されるか不安だった。でも先日……そう、ユッテの誕生日、お世話になったしパーティーのお手伝いをさせてもらっていたんだ。」
チラッとユッテを見てみると本の読み聞かせを聞いている子供のワクワクしたような顔をしている。もしかして俺が木のこと言いたくないのを察してくれたか?で、俺の話を感動物語の如く聞いていると。




