ユッテは意外と
さて、ウェイルの街はというと一言でいうとヨーロッパ風の街並みであった。前世は国外に出たことないからテレビで見た程度しかヨーロッパは知らないんだけどな。
「さぁウルトル!私がどんどんウェイルを紹介しますよ!」
体力を回復させたユッテにまたもやぐいぐいと引っ張られ、街探索が始まった。
体力無い癖に行動力のある子に育って弟として……滅茶苦茶心配だなぁ。
さて、ユッテに引っ張られるままに気付いたことなのだが、
「あらユッテ様、おはようございます。」
「おはようございます、ヴィニエラさん!」
「おぉユッテ様じゃねぇか!今日はレミューリナ様と一緒じゃねぇんですか?」
「ユストーンさん、今日はお母様はお留守番なんです!」
「あーユッテ様だー!その引っ張ってるのだれー?」
「ラーリーナ、この子は私の弟です!」
「ねーユッテ様その子ぐでーってしてるけどだいじょうぶー?」
「え、フィローラ、それ本当なんです……ってウルトル!?」
などとすれ違う人がしきりにユッテに挨拶をしてくる。
途中レミューリナなる名前が聞こえたが、もしかしなくてもレナさんのことだろうな。本名はレミューリナって言うのか、で、レナは愛称か。
あ、俺は別にユッテに身を任せていたから力を抜いてただけだよ、別に平気だよ本当だよ。
まぁそんなことは置いて、ユッテの事だ。
街の住民が声をかけ挨拶してくるのはユッテが領主であるラディさんの娘だから挨拶するというのは分かるんだが、結構仲もよさそうだし、何よりユッテが住民の名前を全員言い当てている。
「ユッ……姉さん、もしかして住民の名前全員覚えてるのか?」
俺は隣で再び体力が切れて芝生の上でぐてーっとしているユッテに声をかける。
「はぁ、はぁ……あ、当たり前です。領主の娘として、はぁ、住民の名前を頭に入れておくなんて、当たり前のことですぅ……」
「そりゃ凄い。」
俺は端的に、そして正直な感想を述べた。この街に住んでいる人は決して少なく無いように見える。しかしユッテはその名前を全て暗記しているのだ。そうそう出来ることではない。
ユッテは体力こそ全然ないが、知力は相当にあるようだ。
よくよく考えればユッテはまだ6歳だ。俺は度外視するとして、すらすらと話すこともできるし、知力もある。魔法は……まぁこの世界の基準をよく分かってないからどうとも言えないけど使える。
あれ、ユッテってもしかして天才に分類されるじゃないのか?いや、そう思うのはまだ早計か?
少なくとも今俺の横で倒れている少女にお嬢様としての姿も天才としての姿も全く感じられない。
天は二物を与えずという事か……?
そんな中だ。
「おーユッテじゃん!何ぐったりしてんのさー!」
1人の子供がこちらに向けてかけてきた。いや、誰ですかお前。




