特製プチトマト
ラディさんの忠告をとりあえず頭に入れて外で待っているであろうユッテを迎えに行くかな。
あ、どこで待つか聞いてなかった。……外にいるかな?
そこに通りかかったメイドさん……名前は確かアレイシアさんだったっけ。
あの人に聞いてみよう
「アレイシアさん、アレイシアさん。ちょいとお尋ねしたいんだけど。」
「あら、ウルトル様。何でしょうか?」
「ユッテ知りません?」
「あぁ、ユッテお嬢様でしたら扉を出てすぐのところでお待ちになっていますよ?」
知っていてくれて良かった。軽くアレイシアさんにお礼を言って教えられた通り外に出てみると本当にユッテはいた。
というかずっと俺が出てくるのを待っていたのか、扉を開けた瞬間からこっちを見ていたぞ。
もしかして俺が来るまでずっと扉を凝視していたのか……
「ウルトル!ようやくお父様のお話が終わったんですね、さぁ行きましょう!」
「ごめんね、姉さん待たせてって。」
「そんなことはいいんです!さぁさぁ!」
ユッテはそんなに俺を街に連れていきたいのか、近づいてくるなり俺の服の裾を掴みぐいぐいと引っ張って歩きはじめる。
「ちょっ引っ張らないで行くから、行くから。」
この服は別に伸びたりはしないんだがこのままだと歩きにくいから離してほしいんだけどユッテにはまるで聞こえてない。ぐいぐいと引っ張りぐんぐんと歩いていく
というかユッテ体弱かったはずだよね!?どこにそんなパワーが……
抵抗するのは簡単だが、下手こいてユッテに怪我はさせたくないし、させたらさせたらであの両親に怒られそう。
だからここは乗りに乗ってるユッテに任せて俺はただ歩くのみに徹しよう。
「はぁ、はぁ……つ、着きましたよウルトル!」
それなりに距離もあったし俺を引っ張りながら歩いたらそりゃ疲れるよね。
街の整備された路上の端でユッテは顔を真っ赤にし肩で息をしている。
「姉さん、大丈夫?」
「だ、大丈夫です!ちょっと疲れただけですから!昔のようにすぐ体調崩したりなんてしませんから!」
確かに昔はすぐ風邪をひいたりと大変だったが今では病気にかかることも少なくなって来た。それでも普通の人よりかは体が弱い筈なのだから自重はしてほしい。
多分ユッテが無理をするようにしているのは弟という俺の存在のせいなんだろうな。少しでも頼れるところを見せたいのだろう。本当に無茶はしてほしくなんだけどな。
「姉さん、ちょっとこれ食べて。」
俺はプチトマトを生成し、ユッテに差し出す。
「何ですか?この赤いの……食べても大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ、ほらほら美味しいからさ。」
ユッテは恐る恐るだが、俺の手からプチトマトをつまみ、小さく一噛み。
目を瞑って咀嚼していたがゆっくりと目を開き残りのプチトマトを一気に口の中に入れた。
その後は笑顔でもぐもぐとプチトマトを味わいごくんと小気味のいい音を立てて飲み込んだ。
「何ですかこの果物!すごいです、疲れが一気に吹き飛びました!」
「それは良かった。」
もちろんユッテにあげたのはただのプチトマトではない。疲労を解消する成分ふんだんに詰め込んだ特製プチトマトだ。
実はフィーレさんに食べさせたいちごも同じようにしている。まぁプチトマトの方が成分的には少ないのだが、子供のユッテにはこのくらいがちょうどいいみたいだ。
さて、ユッテの疲労も回復したことだしあらためてウェイルの探索といきますかね。




