父の忠告
2人とも驚いているなぁ、魚みたいに口をパクパクさせている。
「2人とも大丈夫?」
「あ、あぁ……いや突然神なんて言われたらな。流石に驚かずにはいられないだろう?」
そんなものなのか、いやそんなものなのだろう。……でも事実なんだから仕方ないんだよな。嘘一個もついてないし。
しかしだ。
「父さんはまだしも母さんは俺の力?を見たんだからそんなに驚かなくてもいいんじゃないか?正解したんだし。」
「冗談のつもりだったのよ……」
フッと儚げに笑うレナさん。冗談にしては的を得過ぎじゃないですかね。
そういや俺って傍から見ると聖なる力を宿した木から出てきた少年なんだよな。あれ、これ改めて文字にすると俺相当異質な存在じゃないか?
「いやいや!確かにウルトルの生まれは異常過ぎるがそれだけで神と呼ぶにはまだ早い!証拠だ、証拠を見せなさい!」
証拠と言われてもな。というかラディさん混乱してるんじゃですかね、気持ちは分かりますけど。
まぁ神の力の証明という事で俺はとりあえず完熟バナナを出してみた。ちなみにバナナを出してみた理由はない。思いついただけだ。
「はい、父さん。」
「む?何だこの果物……いやこれ果物なのか?食えるのか?」
「食えるよ?ほらこう皮をむいてだね。ほらっ!」
「むぐぉ!?」
バナナの黄色い皮を上手に剥き、一々渡すのが面倒だったのでラディさんの口に突っ込ませてもらった。
もごもごと口を動かし、何とかバナナを完食したラディさん。
ちょっとやり過ぎたか?もしかして怒られるのか俺?
だが、ラディさんの反応は俺の予想と全く異なっていた。
「な、何だこれは!食べたことのない味だ!美味い!」
あ、口に突っ込まれる事よりバナナの美味しさへの感動が勝ってしまったか。
まぁその方が有難くはあるんだけど。
「え、そんなに?ウルトル!私にも、私にもその黄色い実ちょうだい!」
とまぁレナさんもバナナを要求してきたので渡してあげた。
俺の食べ方を見た後だからか、レナさんは器用にバナナの皮をむき、少しずつ食し始めた。
ニコニコしながら食べているのでレナさんの口にもあったようだ。
うん、バナナが好評なのはいいんだけどさ。
「父さん、いい加減いいかな?ユッテがそろそろ待ちくたびれると思うし。」
ユッテの機嫌は出来るだけ損ねたくはない。間違いなく面倒なことになるだろうからな。
「あぁ、行っても構わないが……1つだけ約束がある。」
先程とは打って変わって真面目な声のラディさん、これは聞いておくべきだろうな。
「何、父さん。」
「お前が神というのはまだ受け入れにくいが、それでもお前が普通とは全く異なる力を持っているというのは理解した。」
見たこともない果物を魔法を使わず出したんだもんな。まぁ普通じゃないとは思うよな。
「だがその力はあまり外では使うんじゃないぞ?変な奴の目に留まったらお前の力欲しさに恐ろしいことを仕掛けてくるかもしれない。」
「分かった、肝に銘じておくよ。ありがとう父さん。」
それが心配ならばそもそも外出許可を出さなくてもいいとは思うのだが、そんなことをしたら確実にユッテは不機嫌になるだろう。
パパは娘には勝てないな。




