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ーーー君たちのいる世界は楽しいか?
そんな言葉を、読み手であるに聞きたい。
私はこの物語の住民の一人でであり、たった一人の"魔法使い"だった。
私は今でも鮮明に思い出せる。
ああ、なんて救えることができなかったのだろう・・・と
ああ、言ってなかったな・・・私は元々、この物語の人間ではない。どちらかと言うと、君たちの世界と似たところから来たんだ。言うならば、転生者と言った方が言うべきか・・・まあ、君たちが望んでいる神様転生という、そんな馬鹿な人たちが考える様なありもしない事例ではない。
私自らが転生をした。私の住む物語に絶望して。
私の世界は第三次世界大戦が起きたのだ。理由が"私の存在の発覚"でだ。基督教やユダヤ教はおろか、ましてや、平和主義の国、日本にさえ私を抹殺しようと事を起こしたのだ。
・・・私は平穏を望んだ筈だった。
私は世界を救う救世主だった筈だ。
それなのになんでーーー
ーーーなんで世界は私を許さない?
だから、逃げた。
こんな現実から逃げた。
逃げた逃げた逃げた逃げた逃げた逃げた逃げた逃げた逃げたニゲタニゲタニゲタニゲタニゲタニゲタニゲタニゲタニゲタニゲタニゲタニゲタ。
もう、狂いたい。
いっそのこと、狂ってしまえばいい。
いや、もう既に狂ってしまったのだろう。
まあいい。転生した先の世界に希望を持とう。
それで転生した私も含めた、NOeSISという物語である。
◇ ◇ ◇
時計の音がカチカチと聞こえる。
一人の少女は、闇の中にいた。だが、その少女の視界は暗かった。
(・・・眠い)
時計の針は、もうすぐ12時を差そうとしていた。
「・・・終わるよ。だから目覚ましくん、最後なんだからしっかりやってくれよ?」
そう、もうすぐ終わる。
少女はそんな事を思った。
幸い、その目覚ましくんにリード線が繋がっている。鳴ったら永遠の眠りにつくことが出来るだろう。
「だけど、私は許さないよ?姉さん」
「あはは・・・だよね・・・恭弥・・・」
そんな事を言った少女。否、今世の姉に対して私は言った。
◇ ◇ ◇
「そんで私は言ったんだよ!『私を残して死ぬんだったら、私も死ぬ!』ってよ!」
「ははは....流石ブラコンなこった・・・恭弥」
オレはそんな親友に突っ込みを入れた。
ああ、一応言っておくか。オレは時雨という名前だ。まあ、そんな名前を聞けば大抵は知っている筈だ・・・ん?オレは何を言っている・・・?
「うー・・・絶対話を聞いてないだろ!!!」
「ああ・・・すまねえ・・・」
「それにしても先生たちは酷いよね・・・屋上の貯水槽の点検なんか専門家に任せろって話だよね・・」
てか、むしろなんで恭弥までついてきたのだと言いたいのだか、ツッコミを入れるともっとめんどくさくなるからあえて言わない。
「ま、まあ・・・配水管についてるノートにチェックを入れるだけだから良くないか?」
「まあ、ね・・・」
とりあえず、オレ達二人は真面目に点検しようと思い、襟元を抑えながらはたはたと飛んでいるノートの所に足を進んであと一歩のところで、異変が起こった。
まるで、そんな風がなかったの様に静けさが起こった。
「台無し・・・」
何処からか、そんな声がした。うん、多分幻聴だ。
「台無しと言っているのよ?」
その声は、オレに向けて言っているようだ。
「姉さん・・・」
恭弥から、悲痛な声を聞いた。
オレも、恭弥の向いている方向を見ると、女子生徒が立っていた。上履きの色から、上級生だとわかった。
・・・だけど、ついさっきまでいなかったような気がする。
「私はここから飛び降りるつもりだったの。一人でひっそりと、この世から消えるつもりだった・・・」
先輩は悲しそうに言った。だが、それは一瞬だった。
「でもね、そこに邪魔が入ったの。
あなたに見つかったせいで恭弥に見つかって、台無しよ。どう責任とってくれるの?」
そんな事を言われても分からないと言いたい。
それ以前に、人生最大の難癖をつけられたような気がする。泣きたい。
そんなオレの顔を見てか、彼女は口の端を上にあげて、不敵に分かっていた。
ーーー良かった。怒られていないようだ。
・・・?待てよ・・・なんか聞き捨てならない言葉を聞いたような気がする・・・飛び降り・・・?
「お、ね、え、ちゃ、ん?」
恭弥は、彼女の頬っぺたを抓ってそう言った。・・・ってお姉ちゃん・・?
「はぁぁぁぁっ!?」
オレの驚愕した声が学校中に響き合ったのであった。