02 - 傷心(前編
何でみんなは私を避けるのかな。
あの時の私はいつもそんな事を思っていた。
来る日も来る日も、無言、陰口と罵倒を浴びせられてた。
男の子からときどき暴力を振るわれたこともあった。
いつまで地獄のような日々が続くのか?
もしかして私はここにいてはいけないの?
生まれなきゃよかった。
何度も何度も涙を流したよ。
あなたが私の前に現われるまでは――。
ねぇ、覚えてるかな?
あなたと私に光を照らしてくれた、あの日のことを。
私は覚えているよ。
「――うっ」
体育館の扉に突き飛ばされた。
一瞬息が止まりそうになるのと同時に痛みが全身に広がっていく。
咳き込みながら、私を押した張本人を睨んだ。
「あら。あまりにも小さすぎて、気づかなかったわ」
腕を組み、見下す視線を私に向けながら言った。
私より三つ学年が上の四年生の先輩。
「……」
「なんですか。その反抗的な目は。わたくしの前をトロトロ歩くから、今、床と抱き合う羽目になってるのですよ」
よく言う。私を体育館に呼びつけて、入った直後にわざと体当たりしてきたのに。
痛みと涙をこらえて、ゆっくりと立ち上がった私は先輩に言った、
「……遅くなるとお母さんが心配するから、帰りますね」
「待ちなさい。忘れ物ですわ」
振り向くと頭から大量の水をかけられた。
水をかけたのは別の先輩たちだった。
私の敵は常に複数いた――。