第24部
父を泊めた夜、私は怖い思いをした。「お前は母さんと同じだ。汚い女」そう言って殴られた。完全に昔の父ではない。もちろん眠れる筈も無く父の罵詈雑言と暴力が続いて警察に電話した所、傷害事件と言う事になり、父は身柄を拘束されしばらく拘留された。
医師の診断で統合失調感情障害の可能性があるとの事でそれもあり心身耗弱により精神科入院と言う措置が取られた。私的には非常に重苦しい気持ちで誰かに話したかった。それで無ければ壊れてしまいそうだった。父母共に最低だ。私の希望は文科しかいないと思い震える手でスマホの連絡先、今となってはたった1人となっている彼に電話した。
ぷるるるる……ぷるるるる……
「はい」
「ごめんね文科。私」
「姉さん?どうしたの」
無邪気そうな声で問いかけてくる弟。
ダメだ彼にはこの事実は重すぎる。辛い思いは私の中の事だけで良い。
「いやあね、お金無くなっちゃったから借りようかなと思って」
笑い言う。同時に泣きたい気持ちで
「うん。いいけどいくら?授業料か何か?」
やっぱり辛い。だけどこのまま話を続けていては父の話が
当然出てくるだろう。それは避けたい。
「うん。ちょっと体調崩してバイト休みがちだったから」
「そうなんだ。いいよ。ところで小説家デビューは何時なの?」
楽しそうだ。殺してしまいたい。自分も父も文科も。
「まず単位取らなきゃね」純菜は今までは正に完璧な才女であったが、
事件以降殆ど大学には顔を出していない。
「いつもの口座に十万円振り込んでおくね」
「ありがとう。恩に着るわ。じゃあね」
プツン
文科は考え事をしている。何か姉さんは僕に隠し事をしている。
間違いない。文科の勘は当たるのだ。
でも何を隠しているのかは分からない。
とりあえずサラ金からまた借りて何時もの様に姉の口座に振り込んだ。
こんな事何時までも続く訳が無いのは分かっている。仕事だ仕事!
仕事では失敗も無く上手くこなせていた。ホームヘルパーの講師だ。
違法なのだが成績が良かったので内密にという事で引き受けた仕事だった。
その事件を警察からの電話で知るとはまさか思っていなかった。