第22部
遅くなりました<(_ _)>
ここでキーパーソンとなる純菜の過去の話をしよう。
純菜は文科と違って少し神経質で掃除を頻繁にするのだが、自分の髪の毛が落ちていると言い例えようのない程の不快感を感じライターで燃やすのだ。「何で私、女になんて産まれちゃったのかな」と思って髪の毛は今時流行らないボブで眉毛は画いていない。大体口紅も使わないし乾燥肌なのでファンデののりが悪く不健康そうに見えるので数少ない友達からはいつも「ねぇ純菜いっつも顔色悪いよ」と言われていた。そうやって基本的な部分で女磨きしようとしないのは「どうせ自分なんて」と言う諦めでとんとお洒落とは程遠いのであった。それでも蓼食う虫も好き好きで声をかけてくる男も少しはいた。だが純菜にとっては合コンとか下らないと思っていたし、臆病なのだ。男性に対しても、女性に対しても。生理の時は痛みが酷くて鎮痛剤がかかせない。冷や汗をかいてぶっ倒れる事さえあったのだ。あいつメンタル病みだよなと大体の人間が思っていたと思われる。
そんな純菜がたった一人心を許している女性が当時二歳年上の鈴木遥だった。しかしもうすぐ卒業するし、「遥さん大学院に残りませんか?」となかばすがるように言うが、「うーん私研究肌じゃないから。それに大手の広告代理店に内定をもらってるの」と素気無い返事が返ってくるので純菜は酷く寂しくなって男に告白してフラれた時の様に、しかし純菜は今まで好きになった男というのは何だかあやふやで、主に年上の女性に性的嗜好がある。それは母である育美が統合失調症になってからで、自分でも思春期に受けた2WAYショックで頼りがいのある母親のような人、つまり男ではなく母の胸に抱かれているような安心感がなければリストカットしそうなほど追いつめられていて、女性用のつまりレズビアン的な珍しい本を探すのが好きだった。どうしても女性でなくてはならないという訳では昔は無かったのだが、高校生の時、地下鉄で痴漢にあったような幻覚、純菜は自分の勘違いだと思っていて事件にも何にもなっていないけれどもそれは確かに痴漢だったのだ。別に珍しい事ではないのだが、純菜はその時の感触、男のゴツゴツした手で尻を圧迫される、何か分からない嫌悪感で学校を一度だけ休んだ事がある。純菜は現在要するにPTSDと心理カウンセラーには診断されている。だが不思議な事に心の不調を訴えるのは決まって生理の一週間前から数日だけで、後は案外ケロっとしているのであった。