第20部
その会社は思えば最初から変だったように思う。ハローワークでは介護の求人でグループホームの新設に伴い人員募集との事だったのだが、面接担当者の牛乳瓶の底のようなド近眼用のメガネをかけ眉間に酷く深い皺を作っている四十松という男が「あーあ、この会社タクシー会社なんだ。介護の事業は最近始めたのでね。君は……成績を見るとまぁまぁ優秀の様だね。最初の模試ではトップか。ただ社会ってのは勉強が出来るかどうかではないからね。仕事が出来るという事は色々複雑な問題を乗り越えていく危機管理能力が必要なんだ。」四十松と言う男はそう言ったが、そのグループホーム「春」には介護福祉士が一人もいなかった。
どうやらケアマネジャーが今にも殺されそうな勢いでケアプラン作成、施設経営管理、監査対応等をしているようでその人に会わせてもらったが目が死んでいた。その時気づくべきだったんだろうが。今後悔している。
兎にも角にも分からない事だらけだ。「ハローワークの紹介だから大丈夫だろう」という安易な考えだったが経験を積まない事には…… 僕は将来ケアマネージャーや社会福祉士を狙っているのだから。その為に専門学校に安くないお金を支払って将来性に投資したのだし。