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負け組の視点  作者: 敬愛
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第13部

 父が遂に仕事を始めると言い出した。基本一人で出来る警備員がやりたいようだ。

「まだ俺にも蓄えはあるよ。」とは言ったのだが、「父親らしい事がやりたい。もう死のうなんて甘えた考えは捨てて生まれ変る」そう言った。とりあえず実家で父と同居する事に決めた。


姉さんは大学院に進みたいようだ。


 僕は株取引を勉強したいと思い出した。大学には行けなかったが決して馬鹿ではない。元手がある内にかつてのパチンコの様に必勝法を見つけられると思っていた。


 仕事は女性トラブルが嫌だったのでアダルトビデオショップに勤める事にした。今までそんな物見た事が無かったし理子ちゃんとも一度きり。最初はデモ映像を見てずっと勃起していた。


 出会い系という言葉はまだ聞いた事が無かった。テレクラのカードが案外売れた。同僚の先輩の友達がセーラー服それも7万円もする物を買っていったりして、「あいつエロいな」と言っていた。最初社長に目をかけられていた。僕が無垢に見えたのか「昔は雑貨屋をやっていたんだ。倒産したけどな。」と倉庫を見せてもらった。息子さんのシーマを貸してやると言われ「まだ初心者マークです。」と言うと「ぶっ壊しても良い。1度くらい事故を起こしておいた方が重大事故防げるし、壊れたらまた買うから。」そんな感じだった。その時は社長が好きだった。奥さんがとても美人だった。


 半年程して社長が何故か僕に冷たくなった。職員と言っても2、3人だが、僕が社長の奥さんの体を触ったという噂が立っていたようだった。ボクはそんな大きい職場でもないし忙しかったのでお尻にでもぶつかったのかと思った。社長に弁解をした。社長は急に怒り出した。「やっぱりか、佐藤!お前俺の女房に!」怖かった。ヤクザかと思った。社会のルールをまだまだ知らない僕は一身上の都合でという理由で退職届を出しその日から出勤しなかった。


 それからだろうか。僕の性根が腐りだしたのは。ネットカジノやゲーム喫茶でギャンブルに明け暮れた。全く勝てる見込みの無い、つまりほとんどがテラ銭の一発勝負のゲームだった。貯金はみるみる減って行った。


 24歳になっていた。人生の3分の1かー等と保障の無い人生に危機感を覚える事も無くただ「ボク何時死ぬのかな。怖い。」みたいな冒頭から始まる詩を書いたりしていた。気付くと100篇くらい貯まったので、ある出版社に送りつけた。住所と連絡先、年齢、職歴等書いて返事を待っていた。1万部売れたら印税いくらかな?と電卓で計算する。もうその時点で社会不適合者だったのだと今になって思うが。電話も返信の手紙も来なかった。僕は非常に腹立たしい気持ちでその出版社に電話をかけた。一通り説教されて、最後に封筒の住所の後には「御中」と書くのよと言われた。ボクは「うるさい!」そう言って電話を切った。


 僕は将来について考えた。中学の時商業の情報処理科に進んでいれば今頃は……。悔しかった。自分に失望した。だが1つ希望があった。僕は母が統合失調症なので医学書や精神保健に関係する書物をまぁ流し読みしていた。これを何とか生かせないか?将来精神科医になりたいと母親が病気になった時思った事がある。しかし僕は高卒で何の資格も無い。何か資格を取りたい、それも専門的なやつを。新聞をパラパラめくっていた時に僕の目にある専門学校の生徒募集の広告が目に入った。これだ!と思った。PSWである。

 しかし獲るには3年間の通学と国家試験の必要性があった。リア友とも疎遠というか上手く付き合えない僕が3年間持つだろうか?ギリギリだろう。もう一つ介護福祉士の募集もしていた。こちらは2年間で卒業と同時に資格が貰える。これからの高齢化社会これは必ず戦力となり引く手あまただろうと僕は思った。国語、数学、英語の入学テストがあった。昔の僕ならプッと噴き出していたことだろう。しかし高校に入学してからというもの勉強なぞまるでしていない。予備校だって数学の数式を見ていたら吐きそうになって授業中トイレに行ったほどだ。全く出来なかった。一応答えは書いたが正解しているとはとても思えない。さっぱりなのだ。自分がよく知っている。ダメだ……。2週間後書簡が送られてきた。入学試験に合格したので入学を許可します、と書いてあった。マジかよ……。入学金と1年目の授業料合わせて80万円くらいだったと思う。父に借りる訳にも行かないし、姉さんに迷惑をかけるのも嫌だった。その頃丁度貯金は非合法ギャンブルで増えたり減ったりしていて丁度80万あった。


「よしこれからは仕事で稼ぐぞ!」意気込むボク。入学式の日撮った写真は後で見ると首が捻れて見事に斜に構えた性格が窺えた。

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