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恋愛図書館  作者: よつば猫
5月
29/46


「誕生日おめでとう」


 付き合って最初の、結歌の誕生日。

プレゼントの箱をテーブルの上に差し出すと。


「うわ、おっき!

え、なんだろぉ〜!

ね、開けちゃうよっ?」

ハイテンションではしゃぎながら、開封を手掛けるキミ。


「ええっ!クレープメーカ〜!?

うっそホントにっ?

え、嬉しいっ……

うそ嬉し〜っ!

しかもこれ本格的じゃん!

も〜ぉ道哉っ、ありがとうっ」


 賑やかな笑顔で感激する様子に、俺の胸が撫で下ろされる。


 最近クレープ作りに凝ってるキミは、フライパン調理での焼き具合や匂い移りに納得いかないようで。

力量に相応しいプロ仕様のものを贈る事にしたんだけど、実際はそこまで求めてなかったかもと不安だった。


「喜んでくれて良かったよ。

じゃあさっそく焼いてくれる?

中身は俺がイタリアンクレープに仕上げるから」


「焼くっ!

うわ、なんか楽しみっ!

じゃあスイーツクレープは私が作るねっ?」


 ほんとはそれも俺が作るつもりだったけど、この際任せる事にして……



 千川店長の下でクレープカフェごっこなんかしながら、それぞれ出来上がったものを披露する。


「えーと、右からカプレーゼクレープ。

ツナときのこのカルボナーラクレープ。

そしてパンチェッタと春キャベツのアンチョビクレープです」


「うわ〜、生唾ごっくんモノですっ!

早く食べたいっ。

けどその前に私の力作発表です!」


 それは、キャラメルナッツとスイートポテトのチョコかけクレープと。

マンゴーとメープル&生クリームの紅茶葉生地クレープ。

さっそく実食タイムに移ると。


「んんー!すっごいモチふわっ!

やっぱ本格的な機材で作ると全っ然違うねっ」

まずは焼き上がりの食感にご満足頂けたようで。


「クレープってこんな手軽なのに、こんっな美味しいイタリアンまで楽しめるなんてすごくない!?」とか。


「この紅茶葉クレープ、絶品だね。

俺ハマるかもっ」とかって、お互いの出来具合に感嘆した。


 すると結歌が……

「この際ホントに、2人でクレープカフェでもやっちゃいますかっ!」

なんてゆうから。


 思わず。

「いいね。

まぁクレープに限らず、カフェは一緒にしよっか」

年初めに抱いてた新しい夢を口走ってしまった。


 途端キミは目を丸くして。

ハッとした俺は、内心焦ると。


「……え、いいの?

それホントにいーのっ!?」

その表情が輝き始める。


「うん……

むしろこっちこそ、勝手に夢重ねちゃってよかった?」


「大歓迎だよっ!

それどころかど〜しよう!

ああヤバいっ、笑いが止まんないっ。

こんな嬉しいプレゼントもらって、こんっな最高の夢までもらっちゃって!

私っ、誕生日運使い果たしてないっ?」


「いつも頑張ってるから、不意のサプライズが訪れたんだよ」

前に言われたキミの言葉を借りて、その興奮をなだめると。


 ふふっと、屈託のない笑顔が零れて……

ホッとする。


 今まで新しい夢を口に出来なかったのは、未来を約束する勇気がなかったからだ。

また失うかもと、心のどこかじゃまだ人生を諦めてたし。

キミがどんな反応するのかも怖かった。


 だけど、散った桜の負けないエネルギーが背中を押してくれたのかな?

おかげで、この瞬間から俺たちの夢はひとつになった。



 そして、腹が満たされた後。


「あとさ、もう1つプレゼント」

今度はケーキボックスを差し出した。


「うそっ!ケーキ買ってくれてたの!?

ごめんっ、私がスイーツクレープなんか作ったりしたからっ……」


「そうじゃなくて、開けてみて?」


 キミは不思議そうな顔をして、側面から中身を引き出す。


「えっ……

え、すっごい!お花のケーキだぁ!」


 スイーツのプロにそこら辺のケーキを贈ってもと、それをクレープにして。

代わりに演出だけケーキを真似たサプライズ。

それには重要な役目もあった。


「しかもこれっ……」


「ん、短いけどリクエストのラブレター」


 事前にプレゼントのリクエストを聞いた時。

「いつも私がメッセージを贈ってるのでぇ〜、一度は道哉からラブレターが欲しいですっ」

そう言われて。


 メッセージ本に見合うものを考えた結果、メッセージフラワーにその役目を託した。

花びらに刻まれたそれは……


Happy Birthday Yuika.

Your smile is my life.


「あなたの笑顔は私の、生活です?」

ニマニマ顔で俺を伺う。


「んん、そんな爽やかじゃないかな。

俺、クセのあるカツオ醤油だし?」

そう返すと、キミは吹き出して。


「おかげですっかりクセになっちゃいましたっ!

もう道哉ナシじゃいられませんよっ?

さぁ早く意味を教えて下さいっ」


 何の脈絡もない追究に、笑いを誘われながらも。


ーもう道哉ナシじゃいられませんよっ?ー

さりげなく零された言葉に胸を掴まれる。


「キミの笑顔は、俺の命です。

ってニュアンスかな」

その笑顔に見惚れるように答えを告げると。


 キミの瞳が大きく開いて、すぐにぎゅうっと閉じられた。


「〜〜〜っ、クッサーーい!

もっ、なんでそーキザなのっ?

もおっ、どんな笑顔すればいーかわかんなくなったじゃん!」

困り顔で笑うキミ。


 でも、これはキザとかじゃないよ?

出会った去年の誕生日。

キミの笑顔が、世界を鮮やかに変えて……

俺に命を吹き込んでくれたんだ。




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