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恋愛図書館  作者: よつば猫
4月
27/46

 結歌!!

目を疑う面影が映り込む。


 心臓を弾けさせた横顔は、すぐに後ろ姿に変わって。

階段先の駐車場へと消えていく。


 とっさに走り出して、慌てて追いかけるも……

溢れた花見客に妨害される。


 苛立ちながらも、ようやくその階段に差し掛かると。

今度は急に飛び出して来た子供とぶつかりそうになって、足止めを食らう。


「っ、大丈夫っ!?」

守るように受け止めると、その子の無事を逸る思いで確認して。

再び追いかけようとした矢先。


「サナ〜!

急に飛び出したら危ないでしょう!?

お兄さんに謝りなさいっ」

保護者登場で、そんな訳には行かなくなる。


「あ、いえ!

今のは俺が悪かったんでっ」

急いで解決を図るも。


 視界に映ったその子の顔は、ものすごく不安そうで……

思わず動けなくなる。


 ふぅ、とひとまず深呼吸して……

その子の前に屈み込んだ。


「ごめんね?びっくりしたよね。

今のはお兄さんが悪かったから、気にしなくていいよ?

でも危ないから、今度からは飛び出さないようにしよっか」

そう微笑んで、頭を撫でると。


 愛着のある可愛い顔が、クシャリとほころぶ。

その笑顔に、焦る気持ちも絆されると。


「おーい、麻里子〜?準備出来たぞ〜」

お父さんらしき人が、その親子を呼び戻す。


「はーい!

じゃあ、ほんとにすみませんっ」

ペコリとして、その子の手を引くと。


 その子はもう片方の手で、俺に小さく手を振った。


 なんだかくすぐったくて、あったかい気持ちでそれを返したけど……

その子が振り続ける限り、身動きが取れなくて。

そんな状況に、もはや笑いが零れた。


 結局、見えなくなるまで付き合わされて……

そのあと向かった駐車場には、当然結歌らしき姿は見当たらなかった。


 それでも諦めきれなくて、暫くウロウロ探してみたけど……

やっぱり見つけられなかった。





「けど結歌ちゃんに間違いねんだろ?」


「まぁあれから何年も経ってるから、絶対とは言い切れないけど」

でも結歌を見間違えたりなんかしないと思ってる。


「だとしても……

もしかして結歌ちゃん、その近辺に住んでんじゃないのか?

だってそーだろ?

こっちでこんだけ探しても何の手掛かりもないワケだし」


「俺もその可能性を考えてた」

だから巧の意見も聞きたくて、今日はその家に押しかけてた。


「けど、それってどーなの?」

そこで口を挟んできたのは、巧の彼女の章乃ちゃん。

実は文乃の妹で、その繋がりで2人は出会った。


 文乃より更に洗練されたビジュアルで。

その系統が好みの巧は、最初見た目に興味を持って、すぐに中身に惹かれていった。


「お前、聞き耳立ててたのかよ」

そう突っ込む巧は……

No. 1から代表に登りつめ、その経験を積んだ後。

自分の店を立ち上げて、今じゃ経営側に回ってる。


「違いますぅ!

同じ部屋に居るんだから、聞こえるに決まってんでしょ」

ほんわかした見た目と違って、章乃ちゃんはかなりストレートで、あっけらかんとした性格だ。


「全然いいよ。

むしろ、俺が2人の邪魔しててごめん。

けどせっかくだから、章乃ちゃんの意見も聞かせてくれる?」


「うむ、よかろう」


「おっ前、偉そだなァ」


 俺と同じように女に嫌悪感を抱いて、恋愛にかなり冷めてた巧だから。

本気で誰かを好きになれたのは、自分の事みたいに嬉しかったし。

そうさせた章乃ちゃんには、俺も無条件で気を許してた。


「まずね?

道哉くんへの未練があれば、行く約束程度の場所じゃなくて、身辺とか思い出の場所をウロつくんじゃない?

そんで絶景ってゆってた事を考えると、行った事があるかもで……

つまりは!

他の男と行った思い出の場所なワケで。

その男が忘れられないワケで。

だからその辺に住んでるんじゃないっ?

痛っった!」


 巧がベシッと、章乃ちゃんの頭に突っ込みを入れた。


「お前は何でそうデリカシーがねぇんだよっ!」


「素直な感想でしょお!?

じゃあ無責任に期待持たせとけばいーのっ?」


「そーじゃなくてっ……

言い方ってもんがあンだろ!」


「巧、言い負かされてる。

実際、章乃ちゃんの意見は一理あるし。

信憑性も高いと思うよ」

そう場を収めながらも、けっこう胸が痛めつけられてた。


 確かに……

ーもうすっっごくヤバい絶景なのっー

その時の言動は、行った事があるのを物語ってて。


 なのに誰とってエピソードが一言も語られなかった事を考えると。

前の男と行った可能性が高いのを認めざるを得ない。


 うわ、キツいな……


「でもさぁ?

もう他の人を想ってるかも、とか。

既に誰かと結婚してるかも、とか。

そーゆーの考えなかった?」

そしてまた新たに痛いとこを突かれる。


「……考えたよ。

まぁその時は、入り込む余地がなければ見守るけど……

とりあえずは頑張ってみるかな」


「うわあ、純愛っ。

イケメンだから許されるけど、一歩間違えばストーカーだね」


「オ・マ・エ・わァァア!」

「ぎゃあ〜!DVっ」

首を絞めるフリする巧と、くすぐったがってハシャぐ章乃ちゃん。


 そして俺は散々な言われようだけど……

むしろ、何だか清々しい。


 それに。

真剣に考えてくれてる様子だったり、憎まれ役を買ってまで本音をぶつけてくれた誠実さに。

巧が本気になったのが解る気がした。


 そんな、相変わらず戯れ合ってる2人を眺めて……

羨ましさで若干白けながらも、微笑ましく思った。



 とりあえず俺は……

今後はG公園のある町を中心に、結歌を探そうと思った。


 そして願わくは……

キミに会えたらまず謝って、言いたい事は決まってる。


「今日までずっと、ずっと結歌の事が大好きでした」


 そしたらキミは「うっそだ〜!」って笑ってよ。

そこで俺は……


「嘘じゃないよ。

だから今度こそ、俺と人生を歩んで下さい」


 Yesが返って来るまで、何度も、何度でもプロポーズするから。





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