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恋愛図書館  作者: よつば猫
3月
21/46

 俺の意味深な態度の所為か……

お互い、言葉少なに食べ進める。



「ねぇなんか、怒ってる?」


「……怒ってないよ。

ただ……

なんか俺の話、はぐらかしてない?」


「えっ?

そんなつもりないよっ?どの部分っ?」


「……だったらいいよ。

最後、ドルチェ入る?」


「……うん、意地でも食べるっ」


 先に食べ終わった俺は、ドルチェの準備に取り掛かった。


 あくまで話す気は無いんだな……

沸き起こってくるドス黒い感情が、抑えきれなくなりそうだ。



「これっ、意外とあっさりでペロッといけちゃうねっ?

エスプレッソも美味しいし!

私の得意分野まで、あっさり道哉に持ってかれちゃったなぁ」


「まさか。

カッサータは簡単だから、結歌ならもっと美味く作れるよ」


「謙遜は逆に惨めになるので止めて下さーい。

もう全部ねっ?

味も好みだし、盛り付けもキレイだし、贅沢三昧だしっ。

料理でこんっな満たされたのは初めてですっ!

ありがとぉ、道哉。ごちそうさまです」


 すごく嬉しい言葉と、満足そうな笑顔をもらったのに……

僅かな微笑だけ返した。


「お礼に後片付けはさせて下さいっ」


「いいよ。

片付けまでがプレゼントなんだから。

風呂入って先に寝てろよ」

俺の素っ気ない口調に。


 当然反応する結歌。

「やっぱりなんか怒ってる……

ねぇ、はっきり言ってくんなきゃわかんないよっ?

ちゃんと話して?」


 こっちのセリフだよ……

ドス黒い感情が溢れ始める。


「話しても解んないよ。

俺の気持ちなんて、結歌には解らない」

冷めた目で牽制して。

片付けの邪魔だからと、その場をかわした。



 今日の為に頑張って、キミを喜ばせたかっただけなのに……

何でこうなったんだろう!

自分が情けなくて、悔しくなる。



 その日はドス黒い感情に翻弄されながら、ソファで眠った。


 その感情は……

嫉妬、独占欲、執着心。

俺は、それらをどう扱えばいいのか解らなかった。


 だって、キミと出会って初めて芽生えた感情だから。

上手く処理出来ないし、きっとその感情は強い。


 例えば……

何で俺だけじゃないんだよ!って、キミの過去の男に激しく嫉妬したり。

俺の世界に閉じ込めて独占したかったり、四六時中一緒に居たいと執着したり。


 もちろんそんな訳にはいかないから。

抱き合う時はおかしくなっても、普段は感情をセーブしてそれらを封じ込めてた。


 だけど今日の瞬との一場面や、それを隠そうとしてるような結歌の言動に……

ドス黒い感情は制御を失う。


 かといってそんなもんで結歌を縛りたくないし、それを暴露して嫌われたくもない。

結局どうする事も出来ずに持て余して、ひとり苦しむ。


 そんな俺の気持ちなんか、キミにはきっと解らない。

俺以外の男とも恋愛を重ねて来たキミに……

キミが唯一な俺の、この狂いそうな気持ちは解らない。



 そして俺は避けるように……

キミが起きる前に家を出て、仕事に向かった。


 だけど仕事中、それらの罪悪感に苛まれて……

帰ったら謝って、仲直りしようと思ってたのに。



「昨日はありがとうっ」

帰宅後、何事も無かったように笑顔で本を差し出して来た結歌。


 瞬間、昨日の瞬との場面が浮かんで。

再びドス黒い感情に支配された俺は、バシッとそれを払い退けてしまう。


 当然ビビりなキミは、ビクッと肩を跳ね上げて。

酷く驚いた表情で固まっていた。


「っ、ごめんっ」

ハッと我に返った俺は、咄嗟にその手を掴むと。


「っっ、嫌っ!!」

今度は逆に払い退けられた。


 俺が悪いから当然なんだけど……

だけど。

拒否られたショックが、心を凍りつかせて。

ゆっくりと本を拾うと、それを冷ややか目で差し戻した。


「こーゆうの、もう要らないから」


「え……

どーゆう、意味?」


「どーゆうって……

他の奴にもやってんだろ?

そんなもん要らねぇよ」


「えっ?

やってないよっ?

道哉が初めてだしっ、道哉にしか贈ってないよっ?」


 俺が何も知らないと思って嘘吐くのか……

情けなくなって冷笑が漏れた。


「もういーよ。

そんな女だとは思わなかった」


「っ、なんでっ!?

ほんとにやってないのにっ……

ね、なんで信じてくれないのっ?」


「だからもういいって!」


「よくないよっ!

お願いだから信じてよっ」


 信じて、か……

あくまで嘘を吐き通す気なんだな。


「……もういいって言ってんだろ?」

酷く冷めた視線を突き刺した。


「っっ……

もういいって、別れるって事?」


 何でそこまで話が飛躍するんだよ。

この話はもういいって意味で、俺はキミと別れる選択肢なんて考えられないのに……

キミにはその選択肢があるのかっ?


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