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恋愛図書館  作者: よつば猫
1月
16/46

「まっ、そのうち自分にピッタリな片割れが現れるよ」


「……かもな。

けど俺さ……

まだ結歌の事が好きなんだ」


 あれからずっと、景色は鮮やかなままだった。

ただ、キミの居ない時間がモノクロなだけで。


 巧は表情を落として。

「……だろうな」

溜息のあと、そう呟いた。


「あの時は悪かったな。

俺まで別れを促すよーな事言って」


「お前は何も悪くないよ。

逆の立場だったら、俺も同じ事言ってただろうし」



 中学の時、お互い変わり者だった俺達は……

自然と心を開き合って、何でも話せる親友になった。


 だから当然、俺の生い立ちなんかも知ってる訳で……

巧自身も、悩める家庭環境に置かれてた。


 俺とは逆の母子家庭で。

母親の仕事がらいつも1人の夜を過ごして、ずいぶんと寂しい思いをして来たはずだ。


 週末はよく俺ん家に泊まって。

巧の持って来た食材で飯を作って、親父と3人で食卓を囲んだりした。


 そんな巧は……

その秀逸なビジュアルから恐ろしくモテて来て、多くの面倒くさい女と関わったり。

飲み屋で働く母親の影響で、小さい頃からその世界や女の裏を見て来たから。

恋愛にはかなり冷めてた。


 だから余計、女を憎む俺の気持ちやその傷を理解してて。

自分の事のように、俺と同じ気持ちで、結歌に対して頭に来たんだと思う。

悪いどころか、それほど本気で心配してくれてただけだ。



「……つってもな。

あれからお前、ヘーキぶってたけど辛そうだったから……

自分の発言をずっと後悔してたんだ」


「だからお前の所為じゃないって。

あの時は俺自身が、結歌を許せなかった」


「けどそれでも、まだ好きなんだろっ?

これからどーするつもりなんだ?」


「どうもしないよ。

とっくに番号も変わってて……

それが結歌の答えなんだ」


 巧は小さく数回頷くと、気まずそうに切り出した。


「実はさ……

お前の気持ちを察して、結歌ちゃんと連絡取ろうとしたんだけど。

そん時に携帯が解約されてんのを知ってさ。

で、気になって聞いてみたんだ。

俺の元指名客、ほら結歌ちゃんの友達の。

そのコとか、瞬がマリちゃんの連絡先残してたからそっちにも。

他にも職場とか色々探ってみたらさ……

どーやら仕事も辞めて、みんなの前からも姿を消したらしいんだ」


 巧の話に、驚きで目を見張った。


「え、何でっ……」


 働いてたスイーツカフェは、結歌の夢に繋がる大事な仕事の筈だし。

みんなの前からも消えるなんて……


「……なんでだろーな。

必死に忘れようとしてたお前には、ずっと話せなくて悪かったけど……

今思えば、あのコもなんか抱えてたのかもな」


 明るくて眩しくて天真爛漫なキミが、いったい何を抱えてたんだろう……


「で、どーする?

お前も気になるだろーし、諦めずに探すか?」


 探すったって……

それじゃ何の手掛かりも掴めない。


「……今更だよ。

どんな理由があったって、これが結歌の選んだ道なんだ」


 だからどんなに苦しくても時間がかかっても、俺はそれを受け入れる。


 でもほんとは、たったひとつの手掛かりに気付いてた。

だけど……

また同じ事を繰り返すだけだと、再び向き合う覚悟なんて持てなかった。



 何度も聞いた始まりの歌とキミの歌声が、ずっと心に響いてるけど……

大丈夫、きっと時間が忘れさせてくれる。


 忘れようとすればするほど苦しかった。

きっと、感情に逆らうから苦しいんだ。

だから開き直る事にした。


 とにかく、時間が解決してくれるのを待って……

あとは神だのみ。

ようやく順番が来て、社殿の前で手を合わせた。


 どうか、新たな未来が始まりますように。





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