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恋愛図書館  作者: よつば猫
1月
15/46

「おーい、またトリップかァ?」


「え……あ、ごめん」


「まったく〜、そんなだから文乃ちゃんにフラれんだよ。

しかもまさかクリスマスにフラれるとはな……

あのコめちゃくちゃ可愛いかったのに、もったいない」


「巧の好みなだけだろ。

顔なら友美の方が綺麗だったよ」


 今日までの1年、俺は3人の女と付き合った。



 最初に付き合った友美は……

私を守って下さい!と言っときながら、いつも俺の心を守ろうとしてくれてた。


 仕事もプライベートも一緒の彼女は、なるべく俺を1人ぼっちにしないように立ち回ってて。

残業を手伝ってくれたり、2人で他店への勉強会に励んだり。

元カノとの思い出の部屋に居るのは辛い筈なのに、いつも入り浸ってて……

何も聞かずに傍に居てくれた。


 そして慰めてるのか……

俺の良いところを見つけて、本日の素敵ポイントを発表してた。


 だけど、そんな彼女も限界が来て。

「もう一緒に居るのが辛い」

そう言って俺の傍から離れて行った。


 ちょうど就活が忙しくなったようで、うちの店も辞めてしまって……

それきり会ってない。



 次に付き合ったのは高校の同級生で……

彼女が幹事をつとめる結婚式二次会の、料理の打ち合わせで再会した。


 その時連絡先を聞かれて、呼び出され。

「高校の時好きだった」とカミングアウトから始まり、「フリーだったら付き合って欲しい」と告げられた。


「俺と付き合っても楽しくないよ?」と答えると。

「そんなの求めてないよ。

ありのままの飾らない早坂くんが好きだったから、むしろ癒されるかも」

そう微笑ってくれた。


 それに甘えるように……

高校時代の俺を知ってる彼女には色々話せたし、気も使わずにすんだ。

だけど。


「昔の刺々しさは抜けたけど、なんだか抜け殻みたいだね。

私にはもう支えられないよ……

だって、私じゃダメだと思うから」

そう言って俺の傍から離れて行った。



 そして最後に付き合った文乃は、情報誌の編集者で。

うちの店に取材や営業で入り浸ってて、ある日突然告白された。


 2度も告白のタイミングを見計らってる隙に、俺に彼女が出来てたらしく。

別れを知って慌てたらしい。


 今回はどれくらい持つんだろうと、同じ結末続きに先が見えた気もしたけど……

パワフルな彼女に圧倒されてOKした。


 忙しくても積極的に2人の時間を作って、グイグイ引っ張ってく彼女は……

明るくて頼もしくて、どこか結歌を思い出させた。


 忘れたいのに逆効果な気もしたけど。

だからこそ、好きになれるんじゃないかと思った。

だけどやっぱり……


「そりゃあ、好きになったのも告白したのも私だよっ?

だからって、道哉の心に私はこれっぽっちもいないよねぇ!?

なのになんで恋人ごっこを続けるのっ?

……や、ごめん。

私がムリヤリ引っ張ってたんだよねっ……

ごめん、もう解放してあげる……」

そう涙を零して、俺の傍から離れて行った。



 今まで下らない女としか関われなかったのが嘘みたいに、みんな良い子だったし。

優しくしてたつもりだし、好きになろうとしてたけど……

心の中は、いつも結歌で溢れてた。


 今度こそ忘れなきゃって。

もういい加減忘れたいって。

もがいて、俺なりに忘れる努力をしてたのに……

どうしてなんだっ!


 キミより可愛い子なんて腐る程いる。

キミみたいに良い子だって他にもいる。

積み重ねた思い出は、また1から作り直せばいい。

なのに。


 キミとの思い出は……

他愛なくても、かけがえなくて。

いつまでも心に、鮮やかな残像を残し続ける。




「道哉起きてー!

ほらっ、遅刻しちゃうよっ?」


「んん、眠い……」

し、結歌に甘えたい。


「ふとんから出たくないんでしょ〜。

もーお!はいじゃうよ〜?」


「ムリ……

寒くて頑張れない」


「でも頑張った人には、ふいにサプライズが訪れますっ。

それは明日かも知れないし〜?

今日かもしれません!

どんなサプライズがいいですかっ?」


「えっ?ええと……」


「はいっ!それを想像しながら今日の活力にして下さいっ。

起きて起きて〜」


 出た……

結歌の質問自己完結。

だけどそれも楽しくて、笑いが零れる。


「わかったよ……

よし、今日頑張ったら結歌が一緒にお風呂に入ってくれるかなっ」

そう身体を起こすと。


「えっ……

可能性は〜、いつかはあると思いますっ。

なので今日は、おはよう……

と頑張って……のキスですっ」

言いながらそれぞれを片頬ずつに落としてく。


「それ、すごい頑張れる。

毎日頼むよ」


「ん〜、ドキドキがマンネリ化しませんかっ?」


「はい。

むしろ増えてく事を誓います」

なんて、右手を顔の位置まで挙手すると。


 2人の笑い声が溢れた。




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