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恋愛図書館  作者: よつば猫
12月
12/46

 朝、目を覚ますと……

サンタクロースの痕跡を発見した。


 ベッド脇のテーブルに置かれたプレゼントに、眠いのも吹き飛んで笑いが零れた。


 このサンタはきっと、めちゃくちゃキュートな女の子だ。


「やられたな……」

まだ渡してない結歌へのプレゼント演出に困惑しながらも。

胸がくすぐったくて、あったかい。


 こんな演出は初めてだったし、俺には無縁だと思ってたから。

冷めてた子供時代のワクワクを手に入れ気がした。


 そのワクワク感を引き連れて、プレゼントの袋を開けると。


「え、斬新」


 中身は包丁。

といってもこの筋で定評のある牛刀、名入り。


 若干驚いたものの、テンションが上がって。

巧親子に約束した、イタリアンおせちの調理が待ち遠しくなる。


 そして袋の中には、恒例のメッセージ本。

早速、サンタが表紙の小さな本を開いて、メッセージを辿った。



《聖なる日に感謝を込めて、メッセージ本を贈ります。


Merry Christmas!

道哉が居てくれる事が最高のプレゼントなので!

ステキな幸せを、ありがとう。

お返しに、包丁をプレゼントさせて下さい。

あっ、ビビりましたかっ?

心配要りません。

刃物のプレゼントは縁起がいいんです!


"人生や幸運を切り開く"

という意味があるそうです。

それにあやかって、スパスパ夢を切り開いちゃって下さい。

ついでに、そのおこぼれをご馳走して下さい!

実は私得なプレゼントだったりします(笑)


あと、刃物はお守りの役目もあるそうです。

道哉の幸せが守られますように、願いを込めて》


 お返しとか、私得とか……

俺に気を使わせないようにしてる所が、結歌らしい気遣いだと思った。


 つかビビりましたかっ?って、ビビりはそっちだろ?

思わず頬が緩む。


 何より……

"ステキな幸せを、ありがとう"


 こっちのセリフだよ。

愛しさが込み上げて来て……

朝食を準備してるキミの元に急いだ。



「おはよ」


「あ、おはよっ。

今起こしに行こーと思ってたのに、よく起きれたねっ」


「結歌こそ、ほとんど寝てないだろ」


「ヘーキです!

それより、早く朝ゴハン食べちゃって!

簡単なのにしたけっ、」


 言い終わるのを待たずに、キミを抱きしめた。


「っっ……なに?」


「何って、クリスマスプレゼント」


ーじゃあプレゼントは、その気持ちいっぱいに抱きしめて下さいっ!ー


「あと、結歌クロースに感謝を込めて」

そう言って更にぎゅっとすると。


 キミが嬉しそうな笑声を零して、抱き返して来た。


「早速おせち、俺らの分も作るよ」


「うそ、ほんとにっ?

嬉し〜い!楽しみっ」


「ん、あとさ……」

ゴソゴソとスウェットのポケットから正方形の包みを取り出して。

身体を解いた。


「俺からもお守り」

結局、気の利いた演出なんて出来ずにそれを渡した。


 目を丸くするキミに、開封を促すと……

現れた中身を映して、その表情が輝き出す。


「これ、エメラルド?

私の誕生石だよっ?」


「知ってるよ。

今、付けてくれる?」

そう訊くと。


 頷いたキミの手元から、ケースに納まってるネックレスを取り出した。


「キレイなデザイン……」


「これ、流れ星をイメージしてるらしいよ?」


「うわ、それすごくイイっ!

ありがとう道哉っ」

付け終わったネックレスに触れて、嬉しそうにはしゃぐ。


「ん、俺が側に居ない時でもさ、抱きしめてる代わりだから。

今日明日、頑張って乗り切ろうな」


「っ……

クッサ!相変わらずキザなんだからっ。

でも、すごく嬉しい……

ありがとう、大事にするねっ」


 自分でも少しキザだなとは思ったけど。

幸せを噛み締めるように微笑んだキミを……

再び抱きしめた。


「うん……

俺もありがとう。

愛してるよ、結歌」


 あの時の親父の気持ちが、今は良く解る。




 キミの事が、恋しくなって来た。


 もしかしたらクリスマスにはまた、結歌クロースがやって来るんじゃないかって。

願うような妄想を巡らせて……

バカだなって、打ち崩す。


 サンタクロースがいないように、キミももういない。


 ふと、その時のメッセージ本が頭をよぎる。

それは、サンタはいるのかというテーマの本。

答えはいるで、それを説明した内容。

サンタなんてもちろん信じてなかった俺は、心を打たれたのを覚えてる。


 なんだか無性に読みたくなってきて……

本棚に急いで、それを開くと。

1年前よりずっと、その内容に心を打ち付けられる。


 きっと本は何度も読み返すものなんだ。

その時の状況で感じ方が違ったり、新たな気付きがあったり……


 綴られた言葉達に、信じなかった心が責められる。


 キミはどんな想いでこの本を贈ったんだろう。

真意を探るように何度も読み解いてみたけど、解らなくて……


 ただ新たに。

サンタは一種の、愛の擬人化なんだと感じた。

見えなくても、愛があるなら存在してる。

そして愛はきっと、見失っても無くならない。


 なんだか勇気が湧いて来た。

キミを失っても、その愛は存在してるんじゃないかって。


 どうしよう、会いたい。

恋しくて恋しくて……

その感情を認めたら、余計抑えられなくなって来た。


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