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かつてその森は、始祖の女神が誕生したと云われていた。
国の王は女神の森と名付け、その年で最も魔力が高いとされた魔女に森の管理を任せた。
常に真新しく漂う空気に、澄んだ青が広がる泉。余りの神聖さに時が流れるのを忘れてしまうほどだと、年老いた者たちは言う。
森の中心部にある大木の幹には、女神が生まれたとされる大人が一人入れる程の穴がぽっかりと空いており、女神の誕生祭には、毎年溢れんばかりの供花が捧げられていた。
民から、国から愛された女神の森は、王や魔女が代替わりしても大切に守られてきた。
そうして300年の時が過ぎた頃、6代目の王は言った。
あそこは、何の魔力も持たぬ、ただの森に過ぎないと。




